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サリーちゃんに傘を届けたい新田成幸

 ふぅ……絵里ちゃん先生のお手伝い(強引)で、すっかり帰りが遅くなったわ。

 帰宅部直帰エースも、所詮先生を前にしちゃ無力って訳だ。

 でも、頼られる男になれるのはいいね!うほ。


 とまぁ、現実逃避もそこそこにして……誰か!梅雨の存在意義を教えてくれ!

 ちゃんと午後から雨だってのを、天気予報で確認したのに、傘忘れちゃったの!

 置き傘も無いし、マジ最悪だわ!


 人間の世界は四季折々で、色んな顔を見せてくれる点では、良い世界だと思う。

 でも!梅雨と猛暑日だけは本気で受け入れ難い!


 正直、天使纏いで雨はどうにでもなるよ? でも、見た目がダサくなるんだよ!

 だってカッパよ、カッパ。今時小学生でもいねぇから!

 幸い校内じゃ存在感がない俺だけど、カッパ姿を見られちゃ流石に、丸一日身悶える自信がある!


 だから、いつも以上に存在感を消し去って、玄関に直行……ん?

 玄関にいるのって……絶対サリーさんだよな?

 てっきり、だいぶ前に帰ったと思ったのに、誰か待ってんのか?

 いや、俺の記憶の限り、今日サリーさんが誰かと下校するって話は、一切してなかった!


 したらなんで、いんだろう……あれ、待って。


 このままだと俺、サリーさんにカッパ姿をハッキリくっきり目撃されるよね?


 いやいや……今の俺は空気そのものだ。


 絶対にサリーさんは見てないよな……チラ。

 あ、……しっかり見られておる。


 わぁあああああああああ!


 ♢♢♢♢


 よりにもよってサリーさんに見られるなんて……はぁ……足取りが重い。


 こんな時こそ気分転換に、コンビニスイーツの爆買いに限る!


 まずは期間限定のスイーツを網羅す……あ。

 ビニール傘……。


「ありがとうございましたー」


 買う必要のないビニール傘を買ってしまった。


 あ、あのね?


 もしもサリーさんが傘無しで困ってたらと思っただけであって、これを機にちゃんとしたコミュニケーションを取りたいっていう邪な考えがあった訳じゃないし、あ、それじゃあ、ただの俺の気持ち悪い善意の押し付けになるのか。

 ずっと素っ気ないというか塩対応というべきか、あの天使サリーさんに失礼行為を働いた俺が、急にビニール傘を持って戻って来たら、意味不明過ぎて今度こそ何者でもなくなるじゃん。


 やっぱ行くのやめようかな……って、雨足強くなってるじゃん!

 急げぇぇええええい!


 ♢♢♢♢


 はぁはぁ……脇腹が痛い……走りたくなかったよぉ……うぇ。

 てか、サリーさん……玄関におらんわ。

 流石に帰ってるよな……普通に恥ずいわ!


「新田君? どうしました?」


 え。サリーさんがおる。

 幻?多分そうだ。

 もう幻でもいいから、ビニール傘を渡して帰ろう!


「……これ」

「っえ?」


 無理矢理手渡したことをお許し下さいませ!

 サリーさぁああああんん!

 しっかり猛省しますんでぇええ!

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