サリーちゃんは相合傘をしたい
梅雨、ジメジメ湿気と生温かな温度が、ひたすらに不快になる時期だ。
だが、尊い悪魔な私は悪魔纏いで、四六時中快適環境が守られてる!
つまり、どんなことがあろうとも私の尊いが途切れる事は無い!
そんな私は今日、新田成幸に巧妙な作戦を実行する!
ずばり!放課後の雨イベント!
わざと傘を忘れ、玄関で雨上がりを眺める、THEシンプルシチュエーション!
そして相合い傘の流れからの、小粋な気のある素振りトーク!これで勝てる!
誠にクソあざといが、帰宅方角が同じアイツも、流石に見過ごせまい!
♢♢♢♢
「ももももしよろしければ、私の傘をお使い下さいませ!」
「ありがとうございます♪ お気持ちだけ頂きますね?」
「ひゃ、ひゃす!」
傘献上やり取り、かれこれ20人目だぞ。
ご丁寧にいらんって言ってんのに、全員傘を置いて帰りやがってる。
風邪引いても責任は一切取らんからな?
にしても、遅いなアイツ……勝手に帰ってねぇよな?
下駄箱の靴は? まだあるな……マジ、なにしてんだ?
時間浪費魔にも限度があんだろうが。
どんな苛立ちだろうと、決して顔には出さんけどな。
尊いご尊顔は保ってなんぼだ。
スタスタ……スタ……。
階段を下りてくる、この聞き馴染んだ足音。
来たな……新田成幸ぃ……。
さぁ、期待の眼差しを送る私と、相合い傘をしや
ファサ……。
か、カッパ?!
ダッセェ?!はぁ!?
今時ガキでも着ねぇぞ!?
チラッ……スタタタタ……。
ち、チラ見だけして、そそくさと帰りやがった!
完全に待ち損じゃねぇか!
クソ!何でアイツは私の思い通りに動かないんだ!
「あ、あの……サリー様……」
あん?またモブ女子か。
もう、コイツの傘を借りて、帰るっきゃな
「おカバンの方は……」
「ふぇ? あ!」
て、手ぶらじゃねぇか!何で気付かなかったんだよ!私ぃいい!
♢♢♢♢
常にパーフェクトな私が、鞄を忘れる天然馬鹿になるなんて……これも全部、アイツが無駄に遅れたせいだ。
鞄を取りに戻った間に、雨も本格的に降りやがってる始末。
ろくな結果にならん相合い傘作戦は、金輪際封印だな……ん?
玄関で立ち尽くすあのシルエットは……新田成幸か?
クソダサいカッパ姿は、間違いなくアイツだ。
マジで奇行が多過ぎて、私の高スペック脳内も理解したがらん。
「新田君? どうしたんですか?」
「……これ」
「っえ?」
なななんだ?!急に何か押し付けて来やがった!?
……って、これ……ビニール……傘だよな?
え?
わ、わざわざ私の為に買って、戻って来た訳?
待て待て待て。
きゅ、急にそんな事されたら……わ、私……。
新田成幸の事を……いやいやいやいや!
あり得ないからぁああああ!?




