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尊木サリーは尊い悪魔

 尊い事はいい事だ。

 自分も相手も満たされ、ウィンウィンな関係を築けるからだ。


 生まれ持った尊さがあるから、人生ヌルゲーなんだ!〇ね!

 とまぁ、ごちゃごちゃと私怨じみた嫉妬を、ネットに書き込む連中は絶えずいる。

 だが、尊い(おのれ)を利用して、何が悪い?

 誰のものでもない私だけの生き様に、言葉の暴力を振り翳しても、そいつ自身の生き様は何も変わらない。

 むしろ尊さから遠ざかる、負のループに陥るだけだぞ?

 誰にもなれない自分だから、己がより尊く、素晴らしき存在だと気付ける、そんな日が来るといいな。


 と、人間連中を高みの見物で見下ろすのが、悪魔の私だ。


 今日も一日、媚び(へつら)う人間達に、溢れんばかりの尊さを振り撒き、存分にヌルゲーを楽しんでる。

 銀髪が(なび)けば目を奪われ、深紅の瞳で見つめれば心を奪い、黄金比の体を動かせば欲に駆られる。

 才色兼備、文武両道、人間の世界のことわざだと、立てば芍薬(しゃくやく)、座れば牡丹(ぼたん)、歩く姿は百合の花、を指すそうだな。


 しかしながら人間は、私の尊さを失いたくないあまり、手出ししないと勝手にルールを決め、自ら私に下る道を選ぶ。

 まさに悪魔の誘惑とも言えよう。


 さてさて、席に群がる女達が、甲高い声で話し掛けて来てるが、私に振り向いて欲しい欲求言語が大半だ。

 会話というツールを放棄し過ぎで、聞く気にもならん。


「さ、サリー様! ほ、本日の昼食! ご一緒してもよろしいでしょうか!」

「まぁ♪ お誘い頂きありがとうございます♪ 喜んでご一緒しましょう♪」

「はぁん……」


 唯一聞き取れたのが、昼食のお誘いだが、女の名前は知らん。

 飽きもせず昼食誘いに来る女達は、毎度毎度違うもんだから、名前の一つを覚えたどころで無意味。

 人間の女の名前如きに、記憶容量を埋める時間があるなら、尊さに磨きを掛けた方が何倍も有意義だ。


 そんな私にも1人だけ、必要な人間関係以外の人間で、克明に名前を記憶する人間がいる。


 新田(あらた)成幸(なりゆき)、左隣席の男の名前だ。

 素晴らしき尊さに見向きもせず、授業以外は常に顔を背け、とにかく私に無関心なクソ雑魚野郎。


 世界征服も容易な悪魔パワーを使えば、コロッと心を奪えるのに、留学中は悪魔パワー使用が制限されてる。

 もし仮に悪魔パワーの使用を人間にバレでもすれば、留学期間の延期。

 人的被害を出せば、一度人間として死ぬまで、悪魔に戻れなくなると噂されてるぐらい、悪魔パワーのルールは厳しい。


 悪魔パワー無しでも、尊過ぎる私に掛れば、人間の世界に溶け込むのは余裕だと、高を括っていたのは確かだ。

 たった1人のクソ雑魚野郎がいるだけで、私の色鮮やかなヌルゲープランが泥色に塗りたくられる屈辱は、何よりも嫌いだ。


 表沙汰に出来ない憤りもまた、尊さに磨きを掛ける材料になる以上、新田成幸が私の尊さに気付くのも時間の問題だろう。

 必ずお前を尊さに取り込み、完璧なヌルゲーで留学を終える、それが私の尊過ぎる生き方だ。

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