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俺達の冒険の始まり

「やっぱり……そうでしたか……」

イヅナは白銀のナイフを持ち、天を仰いだ。

「生まれた時から、私には何か特別な力があると思っていましたよ……」

「何言ってんだお前」

俺は悦に浸るイヅナに冷静に突っ込んだ。

イヅナはそんな俺を鼻で笑い、見下すような目線を向けてきた。

「わかりませんかぁ?はーこれだから……。いや、仕方ないことですね。これは私のような選ばれし者にしか……分からないことですよね……」

イヅナは調子に乗りに乗っていた。

俺はイヅナからナイフを取り上げ鞘に納めた。

「無駄ですよ……それは私にしか……」

「そうだな。でもこれ俺のだから」

俺はそう言うとナイフを懐に仕舞った。

「あれ?悔しいんですか?私が選ばれたからって、私が伝説を継承する者って分かって悔しいんですかぁ?!」

イヅナは緩みまくった、にやけ面でそう言った。

「お前ねぇ……」

俺はため息をついた。

そして……俺もイヅナを見た。

「忘れてもらっちゃ困るが、俺も呪いを解いた選ばれし男なんだぜ?」

俺がそう言うと、イヅナはなるほどって感じの顔をした。

「確かに、そうですねぇ……。へへへ、さすがですねぇ」

「ふっ、まぁな」

「でも、私の方がすごいですから」

「お前ねぇ……」

俺はあきれてため息をついた。



「ちょっと待ってください」

イヅナは急に冷静にそう言った。

「なんだ、急に」

「いや、お父さん。もしかして、モリー様は合格した?」

「え?ああ、そうだね。約束を守ってもらったんだ。お父さんも約束を守らなきゃいけないからね」

「じゃ!冒険に出ていいの?!」

「ああ、でも約束してくれ。モリーさんの言うことはちゃんと聞くこと。冒険に出るときはどこにいつ行くのか全部話す事。嘘やごかしはなしだ。いいね?」

「うん」

ハクビさんの言葉にイヅナは頷いた。

そして俺の方を見た。

「やった……」

「ああ、そうだな。長かったが、これで全部終わりだ」

「と、言うことは……?!」

「うん。ついに冒険の始まりだ」

俺がそう言うと、イヅナはわなわな震え始めた。

そして……。

「やったーーー!」

イヅナは大声で叫ぶと工房の中をを走り回り、俺に体全部でダイブしてきた。



「おわ!」

俺は飛んでくるイヅナを体で受け止めた。

「やったー!やった!やった!やったー!」

イヅナはダイブするだけに飽き足らず、俺の体の上でバタバタ暴れ始めた。

「お前ね!傍若無人にもほどがあるぞ!」

「許してくださいよ!かわいいんだから!」

「関係ないだろ!それに今刃物持ってるから!危ないから!」

「なんですかぁ!?私は選ばれし勇者なんですよぉ!」

「危ないのには変わらんだろ!それに調子に乗るな!」

俺は暴れるイヅナのわき腹を掴んで天井に向かって釣り上げた。

そして俺は床に寝ころびながら、プラプラするイヅナを見た。

イヅナも俺を見ていた。

しばらくの間、俺とイヅナは黙ってお互いを見ていた。


「やっとですね……」

「そうだな」

「安心してください。いざとなったら……。その時はきちんと見捨てますから」

「そうかい。それなら確かに!」

俺はそう言うと、勢いよく上体を起こした。

「安心だ」

俺はイヅナを膝に置いて、そう言った。

イヅナは満足そうに、うんうん頷いていた。


「改めて、よろしくな。リーダー」

「はい」

イヅナはそう言うと俺の首に腕を回した。

そして、俺の頬にキスをした。

「おい……いきなりなんだ?」

「昨日のお返しです!」

イヅナはそう言うと屈託なく笑った。



咳払いの音が聞こえた。

そっちの方をみるとハクビさんが俺を睨んでいた。

「イヅナ、工房で……暴れちゃいけないよ」

「あっごめんなさい!」

「す、すみません……」

俺達がそう言うと、ハクビさんはため息をついた。

「ほら、イヅナ下りなさい」

ハクビさんはそう言うと、俺の膝の上からイヅナを下ろした。

そして俺に手を差し伸べた。

「娘がすみませんね」

「いえ」

俺はハクビさんの手を取って立ち上がった。

「元気なのは良いことです」

「そうですね……。モリーさん」

「なんですか」

「信じますよ。あなたの言葉が嘘でないことを」

「決して嘘は言いません」

「そうですか……」

ハクビさんは俺の言葉を聞いて笑った。

「じゃあ……」

ハクビさんは俺の顔を見た。

「昨日、これくらいなら何本だって砥げるっておっしゃってましたよね?それでは、あそこにあるのも全部お願いします」

ハクビさんはそう言って工房の隅を指さした。

そこには、古びた剣が5、6本転がっていた。

「え……?ははははは」

俺は笑ってごまかそうとした。

「冗談ではないですよ?」

ハクビさんは笑顔のままそう言った。

顔は笑っているが……笑っているようには全然見えなかった。

「それとも……嘘をおっしゃったんですか?」

「え?いえ?!まさか!」

「そうですか。では、お願いしますね」

俺は工房の隅を見た。

目立つ錆びこそないが……刃こぼれあるし……それを何本も?

徹夜明けで……あれを、今から……?

俺はハクビさんの顔を再び見た。

ハクビさんの顔は変わらなかった。

俺は生唾を飲んだ。

「は……はい」

そして、力なく返事した。



「ねー!お父さん。あのナイフに選ばれたらどうなるの?!」

身だしなみを整えて、朝ごはんをたらふく食った、イヅナが顔をてかてかさせながらそう言った。

「実は良くは知らないんだ。それを持ち主に返すときに……聞いてみると言い」

「それって誰なの?!」

「それはね、言えないんだよ。その人とご家族の命にかかわるからね」

親子は、朝食後、あたたかい飲み物が入ったカップを片手に工房で談笑していた。

俺はそれを横目で見ながら、黙々と剣を砥いでいた。

「モリー様!絶対に届けましょうね!」

「ああ、そうだな……」

そんな感じでその日は一日中……作業を続けることになった。



温かい風呂に浸かると全身の筋肉がほぐれるのが分かった。

それと同時に、全身に張るような痛みが広がった。

完全に全身筋肉痛だ。

「あー」

俺は声にならない声を上げて湯船に深く身を沈めた。


作業は結局、夜まで続いた。

その間はほとんど飲まず食わずだった。

食ったものと言えば、昼にイヅナが満面の笑みで持ってきたこげ肉の塊だけだ。

本人曰くハンバーグだそうだが、俺にはこげ崩れた砂利の塊にしか見えなかった。

正直今日一番きつかったのはあれかもしれない。

ハクビさんが傍らに居なければ食うのを拒否したが、俺は父親の無言の圧に屈するしかなかった。

結局そんなこんなでイヅナの無茶ぶりに答えながら作業していると夜になっていた。


地獄のような一日だった。


作業が終わるとハクビさんが、晩御飯をふるまってくれることになった。

「用意しますので……その間にお風呂に入ってください」

工房から出てすぐにぼろぼろで鉄くさい俺にハクビさんはそう言った。

そうして……俺は今湯船に全身を浸からせている。


天井から一粒の水滴が俺の額に落ちてきた。

「うぁ……」

その冷たさに思わず声が出た。

そして気が付いた。

「俺……今寝てた?」

気が付けが俺は後頭部を全部湯船につけていた。

「やべぇ……」

相当疲れていたようだ、俺は体勢を戻すと、水をすくい、顔を洗った。

「ふぅ……」

俺はため息をつく。

そして大きく伸びをすると湯船から上がった。

「モリー様ー!できましたよー!」

立ち上がると同時に、風呂場の扉に人影が見えた。

「ああ、わかっ……うぇあ?!」

俺が返事するよりも早く風呂場の扉が開いた。

俺は驚いて、湯船に再び体を戻した。

「お湯加減どうですか?!」

「ああ、とてもいいよ。うん、ありがとう……。じゃなくて、お前ね!突然扉を開けるなよ」

「なんでですか?!」

「なんでって……そりゃそうだろ」

「そうですか……」

イヅナはそう言いながら風呂場に入ってきた。

「な、な、なんでこっち来るんだ?!」

「いやぁー男の人の裸っってどうなってるのかなって……気になって」

あまりにも純真な顔でイヅナがそう言った。

「いやいやいやいや、ダメダメダメダメ」

「えー?なんでですか?」

「いやいや、なんでじゃないよ!何をさも当然みたいな顔で言ってんだ!ばか!出てけ!こっちに来るなー!」

俺はそんな情けない叫び声をあげた。


風呂から上がって、脱衣所で洗い立ての服を着る。

何とも言えない不快感が肌にまとわりついてきた。

俺は傍らに置いておいた、マッチを擦り、いつも通りに火をつけた。

しばらく、立っていると服は完全に乾いていた。

「ほえー便利ですねぇ」

イヅナがそう言った。

「お前いつからいたの?」

「ちょうどパンツはいた位からいました」

「そうか、一声かけろよな」

「へへへ」

「へへへじゃないよ……」

俺は頭を抱えた。


俺は自由なイヅナと共にリビングへ向かった。

「湯加減はいかがでしたか?」

「あっはい。最高でした。ありがとうございます」

俺はハクビさんに頭を下げた。

リビングには大きな机と椅子が置いてあった。

親子二人暮らしにしては大きすぎるように見えた。

……一家で囲んでちょうどいいくらいだな。

なんて思った。

その上にはもう食事がすでに並んでいた。

そのほとんどは肉料理だった。

骨付きのスペアリブに若鶏のソテー、ジャガイモのスープに、籠にはバケットが入っていた。

「おお、すごい豪華ですね……すみません」

「いえ、お気に召したのでしたらよかったです。どうぞ」

ハクビさんはそう言うと、椅子を引いてくれた。

「あっ、ありがとうございます」

俺はお礼を言い、椅子に座った。


「それでは!」

全員が席に着くと、イヅナが立ち上がっていった。

「今日一日……お疲れさまでした!そしてこれから、よろしくお願いします!」

イヅナはそう言うとぺこりとお辞儀した。

「ああ、よろしく」

俺がそう言うとイヅナは頭を上げ、そして手を合わせた。

「では!冒険の無事を祈りまして!いただきまーす!」

イヅナは元気にそう言うと、立ったままスペアリブにかぶりついた。


「座って食え」

「もふもふう!」

「食いながらしゃべるんじゃない」

「おいしいです!」

「それはよかったな。座りなさい」

「はい」


「それ、すごいですね」

「え?」

「火ですよ」

「ああ、そう言えば燃えてましたね、俺」

「ええ。そんなに燃えているのに燃え移らないんですね」

「ああー不思議ですよね。俺もなんでか分かりませんが……そう言うものですね」

「熱くもないんですね」

「そうですね。熱はそれほど感じませんね」

「不思議ですね……」

「そんな、珍しいですかね?」

「確かに、火の魔術師は珍しくないですが……何でしょうね。何かモリーさんのは違うように感じます」

「そうですか……」


「北部魔界にはいつ頃出発ですか?」

「えーと今日は……6日ですかね?」

「ええ、そうですね」

「出発は8日です。10日に帰ってきます」

「10日……ちょうどお祭りの日ですね」

「そうなの!帰ってお祭り見に行く予定!」

「なので、もしかしたら遅くなるかもしれません」

「ああ、それでしたら大丈夫です。当日は私もガリアダンジョンにいますので」

「そうなの?!」

「うん。仕事があるからね」

「そうですか!ではそこで合流しましょう」

「ええ、中央エリアで臨時の鍛冶場を開いているので……探してください」

「ええ、はい」

「わかった!」



雑談をしながら、晩餐にあずかった。

一通り皿があくと、ハクビさんはお茶を入れにキッチンへ行った。

「おなかいっぱい」

イヅナは満足そうにおなかをさすりながら言った。

「ああ、うまかった。お前毎日こんなん食ってんの?」

「いやいや~、普段はもっとこう少ないですよぉ~」

「そうなのか……にしてもハクビさん料理上手なんだな。お前も教えてもらえよ」

俺は茶化した感じでそう言った。

イヅナはどうせ「私の料理もおいしかったでしょ!」なんて言うんだろうなって思ってた。

けど、予想外にイヅナはしおらしくしていた。

「お母さんが入院する前に、夫婦二人でずっとキッチンに立ってたんです」

寂しそうにイヅナはそう言った。

「邪魔しちゃ悪いかなって、私も教えてもらいたかったんですけどね」

イヅナはそう言って目を伏せた。

キッチンの方からポットが沸く音が聞こえた。

「そうか。なら……俺が教えようか?」

「え?」

「まぁ数少ない俺の特技だからさ。ま、よければだけど」

「是非!」

イヅナは身を乗り出した。

「教えてください!私、料理作れるようになりたいです!」

「ああ、もちろんさ。俺でよければな」

俺がそう言うと、イヅナはまた笑顔に戻った。


「料理を教えていただけるんですか?」

ハクビさんがキッチンからティーポットを持って現れた。

そしてカップに紅茶を入れた。

「ええ、まぁそうなりました。あ、ありがとうございます。頂きます」

俺はハクビさんの入れたお茶を頂いた。

「モリーさんは料理もできるんですか?」

「ええ、もちろん。冒険での飯番も補助魔術師の役割ですから」

「そうなんですね」

「ま、PTにもよりますが、そう教わりましたね」

「どんな料理を作られるんですか?」

「大方何でも。魔界では主に簡単なので炒め料理になりますが、作ろうと思えば何でもいけますね」

「そうですか……娘はそういうのはからっきしなので……苦労するかとは思いますが、よろしくお願いします」


「お父さんはすごいよね。お母さんに教わってすぐにできるようになったもんね」

「そうなんですか?」

「あーまぁ、そう言うのはすぐに覚える質なので……」

「器用なんだよねぇ……」

「イヅナは?まぁ聞かなくてもわかるか」

「器用ですよ!」

「嘘つけ」

「なんで、決めつけるんですか?!」

「だって射的全然当たらなかったじゃん」

「あれは!仕組まれていたんですよ!」

「馬にも乗れないしな」

「あれはランデルが悪いんです!」

「料理もなぁ……」

「おいしかったでしょ!」

「ふっ……」

俺達がそんなやり取りをしているとハクビさんが噴き出した。

そして、すぐに大声で笑い始めた。


爆笑するハクビさんを見て、俺達は目を丸くしていた。

「なに?どうしたの、お父さん!」

「え?ああ、ははは。すまない、ついね。懐かしくって」

「懐かしい?」

「ああ、なんだか今のやり取りが、イヅナと……お母さんとのやり取りみたいでね。それが、おかしくて」

「あー確かに!さっきのは少しお父さんとお母さんみたいだったかも」

「え?僕かい?そうかな?」

「うん、そうだよ!お父さんいつもお母さんにいじられてたもんね」

イヅナがそう言った。

「え?俺が母親の方?」

「そうですよー!お母さんすごかったんですから!お父さんが器用ならお母さんは全知全能だったんですよ!」

「全知全能って……」

俺は困惑した。

「そうだね……お母さんは本当に若い時から何でもできたからね。僕はそれに追いつこうとしただけだし。そんなに自分では器用とは思わないなぁ……」

「家事も鍛冶も全部できて、子育てもできるのに……。それ以上ですか……すごいですね」

「そうですよー!モリー様なんてノミみたいなもんですからね!」

「言うねぇ……」

「ほんと甲斐性なしなんですから!」

「それ誉め言葉じゃないからな!」

なんて言いながらお互いの頬をつねり合う俺達を見て、ハクビさんはまた大笑いした。



「じゃ、また明日な」

「はい!おやすみなさい!」

食後のお茶をした後、俺はイヅナ宅を後にすることになった。

玄関口まで見送ってもらいながら、俺は明後日の冒険に向けて、みんなで買い物に行く約束をして帰路についた。

長い一日……二日だけど……、ま、とにかく長かった。

長いと言えば……今までの道程を思い出す。

出会ってから、まだ三週間くらいなのか?

噴水広場で話しかけられて……、冒険の話して、北部魔界の作業の話して、その間にドクダミちゃんの試験もあって、本当に激動の日々だった。

信じられない……もう何年も一緒にいる気分だ。

イヅナだけでなく、レイシーもドクダミちゃんも……もう何年も前から知っているように思える。

つい、ひと月ほど前までは……街ですれ違っても気が付くことすらなかった他人だったと思うと……なんだか不思議な気分だった。

何よりも不思議なのは、そんな関係を自分が築けたことだった。

今までは……一緒に冒険したPTのみんなの趣味すらほとんど知らなかったのに。

俺は星空を見ながらここひと月の事を考えていた。

するといつの間にか俺はビーガーまで戻っていた。

ここ最近すこしばかり疑問に思っていたが、やはり間違いない……体力が向上している。

以前までは中央に歩くなんてことしたら翌日はもう動けなかったのに……。

間違いなく、パワーアップしている。

それは体力ばかりじゃない、魔力も高まりを感じる。

間違いなく今俺はこれまでの人生の、どの時よりも強い。

そういう実感がある。

「できる。絶対大丈夫だ」

俺はまだ少しある不安を振り払うようにそう言った。

「あいつらはもう大丈夫だ。じゃ、お前はどうだ?覚悟はできているか?」

俺は自問した。

「うん。大丈夫」

俺は自答する。

「ちゃんと、死にたくない」

それは正直な気持ちだった。

今まではどうだろうと考えると、死んでもいいかと思っていたような気がする。

でも、今は、死ぬ覚悟があるが、死にたくないと思ってる。

生きていたい。

もっと、あいつらの事を見ていたいなって思っている。

なにせ……。

「あいつら、面白いからなぁ」

俺は一人でそう呟くと、大声で笑った。



「何、一人でたのしそうにしてんだい。気持ち悪いね」

通りで立ち止まって笑っていたら突然そう言われた。

声の方向を見ると、見慣れた廃墟のような建物のそばにドーソンさんが立っていた。

「別にあんたが変な目で見られるのは好きにしたらいいけど。家の近くでやるんじゃないよ。ご近所迷惑だろ?」

「あ……ははは、すみません」

「それに……あんた、最近生意気だねぇ。無断外泊が増えてじゃないか」

「え?あ……ははははは」

俺は苦笑いした。

「何笑ってんだい。本当にあんたは気持ち悪いねぇ……」

「ちょっと、やめてくださいよ。気持ち悪い気持ち悪い言わないでくださいよ」

「あんたさ、ホント気を付けた方がいいよ?ただでさえ不審者面してるんだから」

「あっ……はい。気を付けます……」

俺は苦笑いを止めることができなかった。



「で、どうだったんだい?」

「ええ、おかげさまで。うまく行きました」

「そうかい。それじゃ……」

「ええ、俺達、冒険に出ます」

「やっとかい、長かったね」

「そうですね」

「ま、せいぜい頑張りな」

「はい」


「ああ、あとさ」

「ええ」

「今月分の家賃、まだもらってないんだけど?」

「え?まだいるんですか?」

「当たり前だろ!払うもんは払いな!」

「え?でも、使わないんでしょ?」

「馬鹿言ってんじゃないよ!もう、田舎に帰る気はないんだろ?」

「……ええ、もちろんです」

「なら、払いな。それで私は肉を食いに行くよ」

「え?まだお肉を食べれるんですか?」

「なめてもらっちゃ困るよ!まだそこまで老いさらばえてはいないよ!」


そんな話をしながら、俺は懐かしき我が家に帰ってきた。

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