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爆裂キラースズメ

いたずらに時間だけが過ぎる。

焦燥感が募る。

ど、どうすればいいんだろう?

だんだん呼吸が荒くなってくる。

全身に冷汗が出てきた。


このままだと……どうなるんだろう?

時間制限はないけど……でも評価がいいとは到底思えない。

私は考えた。

恐らくこの状況は私が動かない限り一生このままだ。

先生は明言していなかったけど、このまま時間が過ぎればキラースズメは餌を求めてどこかに飛び立つだろう。

そうなれば、終わりだ。


私が何か行動を起こさなければ、終わりなんだ。


私は覚悟を決めて、深呼吸し、氷の壁から身を出した。

キラースズメはそれでも気が付いていないようだ。

私はゆっくりと近づく。

キラースズメは一向に私に興味を示さない。

考えられる可能性は、二つだ。

一つは氷の壁により、私を認識できていないこと。

モリー様も言っていたけど、魔物が何で私達を認識しているのか?それはわかっていないモノが多い。

だから、もしかしたら温度とか、魔力とかで人間を認識しているなら、魔力の壁が目隠しになっている可能性がある。


魔法で作った壁は魔力を放出している。

時間が経てば自然に瓦解する。

私はまだその漏れ出す魔力の影響範囲を出ていない。

それによりまだ気づかれていないだけかもしれな。


キラースズメとの距離は5メートルくらいまで来た。

私は依然ゆっくりキラースズメに近づく。

2メートルほどまで近づいた時、キラースズメの一体がこちらを見た。

うん。やっぱりだ。

キラースズメは他人を認識できる距離があるんだ。

現に今私を認識しているのは右側の一番近い一体だけだ。

単純に私は遠すぎただけのようだ。

そして私は他の二体にも目を向けた。

召喚されたケージは一定の距離をとって置かれている。

距離は2メートルほどかな?

ということは……キラースズメ同士もお互いをまだ認識していないんだ。



私は深呼吸し、勉強したキラースズメの情報を整理した。

キラースズメはスズメの魔物。

サイズは普通のスズメよりも少し大きいくらいで、主食は虫。

地面の下のミミズや、木に住む芋虫とかを食べている。

魔性は風。

キラースズメは普段、単体で行動することが多い。

単体での危険性はあんまりない。

単体の状態での風は攻撃というよりは逃走用に使われるみたいだ。

羽ばたきで風を起こして、推進力にする。

自身に危険が迫ると、仲間を呼び、団体行動で敵を退ける。


なら……一体が危機になれば他の二体も動くはずだ。

そう思った。



キラースズメと私は、ずっと目が合っている。

だけど、動きだす気配はまだない。

キラースズメにはテリトリーがあるんだ。

そこに入ったら……。

私はつばを飲み込む。

そして意を決しゆっくり近づいた。

氷の壁との距離は結構あるけど、攻撃されたとしても走れば大丈夫……だと思う。



一歩一歩、近づいていく。

ゆっくりゆっくり進んでいく。

そして、ついに……1メートルほどの距離まで近づいた時だった。

キラースズメが羽を広げて、鳴いた。

威嚇行為だ。

その瞬間、他の二体もこちらを見た。

鳴き声!もしかして、音になら反応するのかもしれない。

地面とか、木の中にいる虫を探すために、耳がいいのかもしれない。

もしそうなら、このまま不用意に近づくのは得策じゃない。

いたずらにテリトリーを冒すよりも……それなら……。



私は一歩退いて距離を置いた。

そのままどんどん後退した。

動きは早くても近づきさえしなければ、キラースズメは反応しない。

10歩ほど離れたところで、試しに魔力をためてみたけどそれでも反応はない。

それじゃあ……

私は壁との距離を確認し、そして大きく息を吸った。

「うううううううう、わああああああああああああああああああ」

私はできる限りの大声で叫んだ。

瞬間、三体のキラースズメは同時に反応した。


予想通りだ!

「うわあああああああああ、ぎゃあああああああ!!」

私はおなかの底から思いっきり、叫んで石をキラースズメに向かって投げた。

そして、全力で氷の壁に向かって走った。


それによりキラースズメは私をはっきりと認識し、そしてついに……三体がそろった。


キラースズメは私を威嚇してきた。

でもまだ鳴いているだけだ。

だいぶと臆病というか……最後まで手は出さないようだ。

でも、それだと勝負にならないから……

こっちの都合で本当に悪いけど……!

「ええい!」

私は、走りながら再び石を拾い、思いっきり投げつけた。

石はキラースズメに届くことはなかった。

けど、今度の効果はきっちりあったようだ。

キラースズメは三体寄り、風を溜め始めた。


来る……!


私は急いで氷の壁に向かった。

壁までは1メートルもない。

これなら余裕で……。

そう思った時だった。

私の後頭部を風が通り抜けた。

「え?はや……」

そう思うと同時に私の体は宙に舞っていた。



「うああ!」

私は叫んでいた。

体の自由が利かない。

全力で走っていたからその感性もあって私の体は猛スピードで飛ばされていた。

まずい!そう思った瞬間だった。

私は背中から氷の壁にたたきつけられた。


衝撃が走ると、轟音と共に氷の壁が砕け散った。

私はそのまま見えない壁のようなものにぶつかり、地面にたたきつけられた。


痛い!いや、それよりもこんなに攻撃が速いなんて……。

強すぎる。無理だ。怖い。

わたし今何にぶつかった?氷かな?壁は無事?

いやなくても大丈夫、距離が離れたから大丈夫。

それにキラースズメはそんなに好戦的ではない。追撃はない。

ほんとに?私がたきつけたから襲ってくるんじゃ……

もう一度来たら?死ぬ?

火が欲しい。甘えるな。そうだ、体勢を立て直そう。まずは立たなきゃ。

力が入らない……、指が痛い……もしかして、折れてる?

背中がいたい。足もいたい。擦りむいてる?

ダメだダメだ。

どうしようどうしようどうしようどうしよう……。

何かしなきゃ、何かしなきゃ、何かしなきゃ……。


私の頭の中はもうぐちゃぐちゃだった。

立ち上がろうとするけど、全身に力がうまく入らない。

私は落ち着こうと深呼吸した。

それで気が付いたけど、そう言えば、呼吸をするのさえ忘れていた。

呼吸を整えると、少しずつ力が入り始めた。

どれだけの時間が経ったのか分からないけど、まだ大丈夫だ。

先生の介入はない。

私はふらふらと立ち上がって、状況を確認した。

キラースズメはさっきと同じ位置にいた。

でも、まだ警戒を解いていなかった。

氷の壁は半壊していた、見る影がない。

厚みが結構あったけどやすやす壊れちゃったのは私の込めた魔力が、薄れていたからだろう。

時間が経ってしまっていたのが逆にいい方向に働いた。

壁が壊れなかったら、距離が取れずに、キラースズメの追撃を受けていただろう。

壁は壊れたけど、でもまだ若干残っている。

屈めばまだ……なんとか身を守れるかも。

私の体は所々痛むけど、ケガはなし。

骨折とかもしてないみたいだ。

ピンチだけど、チャンスはまだある。

でも、もう余裕はない。


次で決めるしかない。



あの半分残っている氷の壁は正直あのままじゃ使えない。

魔力を注入しなおさないと……。

私は胸に手を当てた。

「水状変異」

私は詠唱した。

「杖法錬気」

私は氷の壁に向かって走った。

キラースズメはそれに反応して、再び風を集め始めた。

真正面からみて私は理解した。

両端の二人が突風の球を作りそれを真ん中のが射出しているんだ。

風をキラースズメの地点から出すんじゃなくて、ある程度飛ばしてから放出する。

だからあの速度で攻撃が来たんだ。

もしかしたら私は、あの球に直接あたっちゃったのかも。


魔力が体を駆け巡り、体に力が戻ってきた。

走っている途中、そんなこと考えられるくらいには余裕になっていた。

「氷壁再鍛!」

私は近くに落ちてた氷の破片をできるだけ吸い寄せて、半壊した壁にくっつけた。

壁は半分ほどの面積になったけど、一応再構築することができた。

よかった……、そう思った瞬間、突風が壁にぶつかってきた。


私は壁に手をついて魔力を流した。

氷の壁が震えてまるで幽霊の鳴き声みたいな音をだした。

私を飛ばしたさっきの風よりも、強力で長い!

さっきは一発でやられちゃったけど今度は向こうも本気だ。

私はなんとか目を開いて、氷の壁越しにキラースズメを見た。

キラースズメはまだ羽ばたきをやめない。

氷の壁の上部が崩壊を始めた。

私の魔力が届きにくいところから瓦解を始めた。

大丈夫だ、このペースなら攻撃が終わるまではもつはず……。

私は壁の後ろで機を伺った。


目はかすんでよく見えないし、過ぎ去る風の音しか聞こえない。

風の轟音と、氷の冷たさが相まって、耐えている間はひどく孤独な感じがした。

耳がちぎれそうだ。

指の感覚もなくなってきた。

体も痛み、倒れそうになる。

でも、立たなきゃいけない。

これが最後のチャンスで、もう逃せない。

次の攻撃は確実に耐えられない。


耐えている間は、時間がどこまでも圧縮されている感覚がした。

一秒が何時間にも感じられるような、苦痛と孤独の中に私はいた。

けど、私は立ってる。

今にもくじけそうだけど、でもなんとか立っている。

私は右手のお守りを見た。



私は一人じゃない

これはその証拠だ。

これば孤独に打ち勝てる。

「心に……火を……つけるん……だ」

私は自分を励ますようにそう言った。



地獄のような時間がどれくらいか続いたのかは分からないけど、壁に伝わってくる振動が確実に弱くなってきているのを感じた。

そろそろだ。

私は気合を入れ、魔力を溜め始めた。

詠唱は最小限で、簡単に出せる魔法で行く。

「閃光疾駆」

私は掌の魔力を電気に変換した。

風がそよぎ始めた。

完全に風が切れる前に……!

私は、タイミングを見計らって壁から飛び出した。

「ライトニング・ボルト」

私は吹き付ける風の中、倒れないように踏ん張って、手から雷を放った。

お願い。一体でいいから落ちて!

私は祈った。



必死の祈りが通じたのか、魔法は風にうまく乗り……そして、中央のキラースズメに命中した。

キラースズメはぴぃっと鳴きそして力なく墜落した。

いける!今しかない!

私は再び掌に魔力を溜め放った。

キラースズメは、魔力を放出しきったためか動きが鈍く、魔法を当てるのはすごく簡単だった。

そうやって私は、三体ともを気絶させることに成功した。

私はしばし呆然とした。


やった……?

そう思った時、気絶していた一体がぴくりと動いた。

いけない!まだ終わってない!

私は走り出した。

今しかない!せめて一体だけでもケージに戻さないといけない。

私はさっき反応した、一体拾い上げるとあわててケージに戻して、扉を閉めた。

扉を閉めると、カチンという音がし、扉は閉じられた。

私は急いで残りの二体もケージに戻す。

そして、三つのケージが全てロックされた。



今度こそ、やった……?

私は壁の上を見上げた。

ルネラン先生が私を見ていた。

校長先生もいて、拍手をしていた。

ドルビレイ先生も、ゆっくりとうなづいていた。

ああ、やったんだ……私……。


全身から力が抜けた。

疲労感が一気に体を支配した。

「お疲れ様です。ポートマルリンカーさん。お見事でしたね」

ルネラン先生が言った。

「魔物の捕獲を確認しました。それでは校長先生お願いします」

「はぁ~い!」

校長先生が再び呪文を唱えて今度はケージをどこかへ飛ばした。


終わっ……た。

私は天を仰いだ。

すごく達成感がある。

そして、やったよ……イヅナちゃん、レイシーちゃん……モリー様。

私これでやっと一歩を……。

そう思うとこみ上げるものがあった。

この結果を報告したら、みんな喜んでくれるだろうな。

私はみんなの喜ぶ顔を間歩あの裏に浮かべた。

自然と笑みがこぼれた。

同時に一粒の涙が頬を伝った。

やったんだ……。



「それでは、次の課題へ移ります」

ルネラン先生がそう言った。

「ほえ?」

私は目を開いて、ルネラン先生の方を見た。

「校長先生お願いします」

「はぁ~い!」

「え?え?ええええええ??」

状況が理解できない……もしかして、まだあるの?


「あ、あ、あの?!試験は終わりじゃないんですか?」

私はたまらず質問した。

「はい。まだあります」

ルネラン先生が答えた。

「ええええ……で、でも」

私は動揺した。

「試験開始前にお伝えしたはずですよ。すべての魔物を捕らえろと」

「あらぁ?聞いてなかったの?でも安心して、次が最後よ!あなたならやれるわ!」

校長先生がそう言った。

それを見たルネラン先生が私に問いかける。

「どうしますか?ミス・ポートマルリンカー。もし無理だとおっしゃるなら……ここで終了してもかまいませんが?」

「い、い、いいえ。やります。やらせてください」

私は即答した。

ここまで来て……引き下がれない。

「よろしい。では、試験を続行します。では、お二方、よろしくお願いいたします」

「はぁ~い!それじゃ、ポートマルリンカーさん向こうに行ってくれるかしら?」

校長先生はそう言うと私から見て右側の壁を指さした。

私は誘導に従い壁の近くまで歩いた。


壁際に行くと、私は先生たちの方を見た。

今度は校長先生だけじゃなくドルビレイ先生も前に出ていた。

私はいやな予感がしていた。

「それでは、行きますよ~」

校長先生の声と共に、二人は詠唱を始めた。

そして、試験場の中央にさっきとは比べ物にならないくらいの大きなゆがみが現れた。


耳鳴りがした。

背筋に悪寒が走った。

ここから先は全くの未知だ。

心臓が早鐘を打つ。


「落ち着け、落ち着け。何が来ても一通りは頭に入れてる。大丈夫、大丈夫」

私は自分に言い聞かせた。


そうして、まばゆい閃光と共に私の前に新たな魔物が姿を現した。

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