表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/477

試験開始・・・・・・?

「予定時刻通り、ですね。ミス・マルリンカー」


私が試験場で一人瞑想をしていると、高いところから声をかけられた。

「はい!」

私は背筋を伸ばし返事した。

壁の上を見ると、ルネラン先生が顔をのぞかせていた。

「今日は遅れませんでしたね」

「はい!」

「早すぎるような気もしますが……不問としましょう。今回は許可があったようですし……」

そういうとルネラン先生は背後を見ていた。

多分あそこにいるんだろう。

「では、定刻通りに試験を開始します。試験官は前回に続き私が勤めます」

「よろしくお願いいたします」


私は、深々とお辞儀をした。


「さて、今回の試験ですが私のほかにも……」

ルネラン先生の説明の途中で、先生の後ろから誰かが飛び出てきた。

「ポートマルリンカーさ~ん!」

校長先生が笑顔で難しそうな顔をしていたルネラン先生の横に立って手を振ってくれた。

なんだかその温度差がおかしかった。

「ファ~イト!」

校長先生はそう言って両脇をぐっと締めた。

「が……がんばりますぅ」

私は苦笑いで返した。



すぐにルネラン先生が大きな咳払いをした。

「順番が!!前後しましたがぁ、本日は試験官として特別にお二人にご足労頂いております」

ルネラン先生が続けた。

「一人は、まぁ御覧の通りですが、ハーティス校長先生です。くれぐれも失礼のないように」

「はい」

「よろしくねぇ~。ガンバってねぇ~」

校長先生はずっとにこにこしていた。

ルネラン先生は頭を抱えていた。

「ええ……もうお一方ですが……。どうぞこちらへ」

ルネラン先生の誘導で後ろからもう一人……猫背で不健康そうな顔の目つきの悪い男の人が出てきた。

あの人は以前一度だけ何かで見たことがある。

たしか……名前は、ドルビレイ先生。

この学校で唯一の男性教師である、ドルビレイ・マーマロン先生だ。

「よろしく……」

ドルビレイ先生はそう言うと小さく頭を下げた。

私は会釈を返した。



ルネラン先生は、ドルビレイ先生をにらんでいた。

ルネラン先生は、ドルビレイ先生のことをよく思っていないって噂がある。

この学校は、研究機関の一面もある。

ドルビレイ先生はそこの研究員で、普段研究棟に引きこもっている。

確か専攻は……。


「あまりなじみがないかとは思いますが、この方はドルビレイ先生です」

ルネラン先生はドルビレイ先生の方を見ることもせずに話始めた。

「ドルビレイ先生は、魔物学の先生です。普段は研究課程の生徒を教えている。教授です」

「はい。存じ上げております。よろしくお願いいたします」

私はもう一度、お辞儀した。


「よろしい。では、説明をはじめます。今から戦闘訓練として、この場に魔物を放ちます。あなたはそれを捕縛してください」

私は頷いた。

「警告ですが、ここは神聖な試験場です。罪なき命を散らすことは許可しません。それが例え魔物であろうともです」

「はい」

「いいですか、ミス・ポートマルリンカー。この試験は、あなたが魔物を倒す力を有することを証明する試験ではありません。あなたが魔物を乗り越えられるのかを見る試験なのです」

「はい」

「そのことを肝に銘じてください。それでは、今から5分ほど時間を取ります。その間に着替えを済ませてここに戻ってきてください」

「はい」



私は先生方に深々とお辞儀して更衣室に向かった。



鏡の前で、私はため息をついた。

ばっちり着替えて残り時間は2分ほどある。

私は目を閉じて胸を二回、拳で叩いた。

「大丈夫」

私は鏡の前でつぶやいた。

瞼の裏には、イヅナちゃんやレイシーちゃん、みんなの顔が浮かんでいた。

そして、自然と声が聞こえてきた。

「心に火を灯せ」

モリー様の声だ。

「はい」

私は答えた。

「それでだめでも」

「いいんだ。向かったことに価値がある。道は一つじゃない」


「それでも、私にとってはこの道が最良なんだ。絶対に、やる」


私はそう言うと、両頬をぱちんと叩いた。


そして、私は更衣室を出て、試験場に足を踏み入れた。


「お待たせしました。ポートマルリンカー戻りました」

私はそう言うと試験場の中央に立った。

「よろしい。では、試験を開始いたします」

ルネラン先生は中央正面に移動していた。

中央正面の壁の上には、椅子が一つだけありそこに校長先生が掛けていた。

ルネラン先生は最前にいたけど、校長先生が隠れないように少し横に立っていた。

ドルビレイ先生はルネラン先生の反対側に力なく立っていた。

「では、校長先生、お願いいたします」

ルネラン先生がそう言うと、校長先生が立ち上がった。

「はぁ~い。行きますよぉ~」

校長先生はそう言うと、手に魔力を集めた。

わぁっと思った瞬間、いつの間にやら、校長先生の両手に金色の輪っかが二つ引っ付いていた。

重そうな金属の輪っか。

それが校長先生の魔力によって、輝き始めた。

そして、輪っかが回転を始めると、鈴のような音があたりに響いた。


「響音、音震」

校長先生が詠唱すると、私の真下に魔法陣が現れた。

そして同時に私の目の前に、電のような光が輝き始めた。

「遠雷招来~」

校長先生はそう言うと、空を揺らすかの様に声を響かせた。

その声に呼応して私の目の前の空間が震えた。


そして空間がまばゆい光を放つと、私の目の前には真っ黒なケージが、三つ等間隔に並べられていた。



「す、すごい……」

これが校長先生の魔法!

空間転移なんて難しい魔法を!あんなに遠くから!

私は校長先生を見た。

校長先生は、いつも通りのやさしい顔で笑っていた。

そして、右目を少し開いてしっかりと私を見ていた。



校長先生は、遠隔魔法の権威だ。

人間は詠唱というトリガーを通して、魔力をタンクから引き出している。

声がトリガーになるのならば、様々な魔力は音により、声により発動できるのではないか?

そう考え、それを始めて実行したのが、校長先生だ。

詠唱にはいくつかコツがある。

私達の教科書には、明確なイメージを持って詠唱することが重要だと書いている。

で、あるならば、イメージを共有し刺激さえ与えることができれば、音の届く範囲ですべてを操れる……と。

それを実行したのが校長先生だ。



「おっほん!」

私が校長先生に見とれているとルネラン先生がわざとらしく咳払いした。

うっ……。

先生の咳払いは何度聞いても緊張する。

「ありがとうございます。校長先生。それでは今から試験を開始します。合図とともに魔物を放ちます。制限時間はありません」

ルネラン先生は、説明を始めた。

「あなたが“全ての”魔物を捕らえる事ができれば試験は合格です」

「はい」

「相手は魔物です。気を引き締めるように」

「はい!」

「よろしい。我々はここで待機しあなたの行動を見させていただきます。もしも、ケガの危険やこれ以上の試験の続行が不可能と判断した場合は、即時に我々が介入しますのでご安心を」

ルネラン先生はそう言うと、私をにらんだ。

「は、はい……」

これは私を安心させるための言葉じゃない。警告だ。

もしも介入したら、その時点で……ということだろう。


「それでは……説明はこれで終了致します。校長先生、お願いします」

ルネラン先生がそう言うと、一仕事終えてほんわかしていた校長先生が慌てて前に出てきた。


「はぁ~い。それではこれより試験を開始します!健闘を祈ります!がんばってねぇ~」

校長先生はそう言うと、輪っかをくるりと回した。

輪っかの回転と共に鈴の音のような音が鳴り……ケージが開く音がした。



私は一歩引き、呼吸を整えた。

ケージは闇のように暗く、中身は分からなかった。

三つということは……キラースズメだよね?

私はそう考え氷魔法の準備をした。

「水状変異」

詠唱と共にケージの中から、魔物が姿を現した。

見た目はかわいい姿の小さなスズメ。

それが三羽。

予想通りそれは、キラースズメだった。

三羽は状況を確認するかのように、まだ静止している。

「杖法錬気」

敵が確定した今、私がやるのはまず安置を作ること。

キラースズメが起こす魔力の風はそれ以上の魔力を含めた氷の壁で防げる……はず。

強風が来てもとりあえず壁があれば大丈夫。

「氷魔法、氷壁凍土」

キラースズメが動き出す前に、私は氷の壁を作ることに成功した。

そしてその状態でしばらくにらみ合いが始まった。



私の作戦はこうだ。

まず壁を作る。

そこから相手の攻撃を防いで、息切れしたところで雷魔法で気絶させる。

一羽だけでもいい、気絶させられたら、戦闘能力は0になる。

後は冷静に一羽一羽気絶させていく。

この作戦の懸念点は、壁を作る前に攻撃されることだったけど、それももうない。

後は、冷静に対処すればいいだけになっていた。



私は氷の壁の後ろで、構える。

いつでも、来い!って心持だった。

だけど、キラースズメはうんともすんとも言わなかった。

三羽で寄ることもなく、各々が思い思いにちゅんちゅんしている。

気まずい……すごく気まずい……。

私はそう思った。

けど、これはチャンスなのでは?

この間に一羽倒しちゃえば……私はそう考えた。

その瞬間、私はルネラン先生の視線を感じた。

そ、そうだ……これは力を示す試験じゃない。

乗り越えれるかの試験だ。

でも……なんにも起きないんじゃ……どうすれば?

私は頭を抱えた。

キラースズメはそんなの悩みもどこ吹く風って感じだった。



私は意を決した。

このまま、にらみ合っていても意味がない。

私は足元の意思を拾い上げ、キラースズメに向かって投げた。

もしかしたら、私を認識していないだけかもしれないと考えた。

石を投げて刺激を与えてることで、私を認識させようという狙いだ。

石は狙い通り右のケージの近くのスズメに当たった。

でも、スズメはちゅんと鳴いてそれで終わりだった。

私は、もう一度石を投げた。

だけども、結果は同じだった。



そうして、なんにも起こらず時間だけが経過した

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ