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ただ、意味のない平和な雑談

「なぁ、魔王ってさ、どんな奴だったと思う?」

「あなた、急になんですの?」

「いや、ほらさ、嘆きの霧っていうんだろ?世界を覆っていた毒の霧のことさ」

「ええ……まぁそうですけど」

「霧を吸った人間は苦しんで死ぬ。なのにどうだウサギは形は違えど生きているだろ?」

「そうですね」

「つまりだ、魔王ってのは動物好きだったんだよ。かわいいよな」

「かわいいって……」


「俺は結構魔王って存在が気になっててよ、いろいろ調べたけど彼女について書いてることってほとんどないんだ」

「彼女?魔王は女性だったのかい?そんなこと聞いたことがないが……」

「おっ?大将まさか気になる感じか?」

「まぁね。僕も魔王については少し調べていたことがあるからね」

「それなら分かると思うが魔王については噂話程度しか情報がない。どんな文献でも魔王ってのは“いたらしい”ってことしかわからん」

「そうだろうね。ならば何故、彼女と?」

「大方、女ってのは動物が好きなもんだろ?」


「ひどい偏見ですわね。もう少しましな根拠はありませんの?」

「そうか?嬢ちゃんも好きだろ?動物」

「私は特にそういったことはありません」

「そうなのか?」

「決めつけで物を語るのはよしてくださいね」

「いや、すまん、俺はてっきり……だってよ、ここに来る前、宿屋の猫とミャーミャー……」

「うおっほん!!!!!!!とにかくですねぇ。根拠の薄い思い込みだけのお話はやめてくださいませんか?不毛ですよ」

「まぁまぁ、聞いてくれよ。俺は俺で、こう真剣に調べて、たどり着いた仮説なんだからよ」


「嘆きの霧ってのは魔王の断末魔だ。誰がそう名づけたかも、もう誰もわからん。だろ?」

「ああ、そうだね」

「俺はそこに違和感を持ったんだよ。だってよ死ぬ間際に“嘆く”ってのはどうも変だなって思ってな」

「なるほど?」

「そこで思った。魔王は女だったんじゃないかってな。男の場合は、嘆いたりしないだろ。怒るとか怨むとかだ」

「それは……まぁ確かにそう言う面もあるかもしれないが……」

「霧を吸った人間がどうなるか知ってるか?あるものは石になり、あるものは陸上で水死したらしい」

「確か、我々の使う魔術が暴走するといったような現象が起こるらしいね」

「そうさ。だから、魔力を持ってない人間は霧の中でも生きてるんじゃないかって噂もあった」

「事実は違ったね」

「霧が明けてみたら発見したのは、このウサギだ。生きてても人の形はまずしていないだろうな」

「確かに……でも人間は今のところ魔界ではまだ見つかってはいないね。街があったはずの場所も今や跡形もない」

「変容した動物に食われたって考えるのが普通だな」

「そうだね」


「そういうと魔物の中には動物の姿とは明らかに違うモノもいるね。例えばスライムとか」

「もしかしたら変容した人間の成れの果てかもしれねぇな。水の魔術師はスライムになるみたいな感じか?」

「そう考えると、我々は別の道を行った人類とすでに遭遇している可能性があると……」

「おいおい大将それじゃ、魔物になったのが進化したみたいな言い方だ」

「事実、霧で死んだ者もいる。ならば生き残ったものは環境に適応した者ということになるだろ?それは進化ではないかな?」

「へぇ、魔物になるのが人間の進歩か。面白い考えだな」

「魔物は超常的だからね。信仰している者もいるほどだ」

「魔物信仰会だっけか?いかにもモテなさそうな連中だが、奴等魔物をそういう見方しているのか」

「いや、彼等の信仰は詳しくは知らないけど。でも例えばだが、伝説上のドラゴンとかそういうモノを神格化する気持ちは分かるだろ?」

「まぁな」

「それと一緒だと思うと、まぁ理屈は分かる。理解はできないが……」


「そこで話は戻るが、魔王の情報がないってのはどう考えても意図的としか思えないんだよな」

「魔王の信奉者がいて、情報を故意に秘匿したと言いたいのかい?」

「そう思うね」

「そしてそれをした魔王は女で魅了魔法のようなものを使っていたと」

「いやもしかしたら超絶美人だっただけかもしれねぇぜ?」

「可能性はあるね。でもそれなら男でも同じじゃないかな?」

「魔力って強ければ外に顕現するだろ?嬢ちゃんの髪がきらきらしてるのもそのせいだろ?」

「ええ、そうですわね」

「男でも光っている人はいるし、魅力的な人はいるよ」

「男が綺麗だとキモいだろ?いい奴でも敵ができるんだよ。大将みたいにな」

「え?僕?敵って?」

「街の男はみんな嫌いだぜ!優秀でいい奴なんてな!」

「そうなのか……?」

「ああ、俺は好きだぜ?でもよ男ってのは自分の女取るかもしれねー奴を敵視するもんなんだよ。だから魔王は女だった」

「短絡的ですわね。女のほうが嫉妬すると思いますが?」

「お?嬢ちゃん、もしかして実体験?」

「口を閉じてくださるかしら?」

「怖いな……睨むなよ。冗談だよ」



「まぁ魔王が、男か女かはおいといて……不自然と言えば、どうして魔王だけでなく勇者のことも情報がないんだと思う?」

「うん?そりゃまぁ……なんでだろうな?」

「魔王は全世界から自身の記録を消そうとした。これも何のために?」

「そういやそうだな」

「これはおかしいことだ。信奉者がいて国内の記録をすべて消去したとしてそれが何の意味があるのだろうか」

「うーん」

「復活する為に自信の弱点や情報を隠したと考えれるが、効率が悪すぎるし、何故勇者の記録も無いのかが不明だ」

「魔王が消したってことだろ。再び勇者が現れない為に」

「可能性はあるね。そのために信奉者を募って一切の記録を消そうとした。そして最後は自身の呪いで人類ごと消そうとした」

「ああ、それってなんかちゃぶ台返しみたいだな」

「そうだね。最後の手段だ。だけどクレッドは残った。しかし、なんの記録もない。なぜだ」

「信奉者が消した?」

「なら残党が残っているということかい?それが街にいる信仰会の彼等だと思うかい?」

「街にいるあいつらか?あいつらはモテねぇから現実逃避してるだけだろ」

「記録を丸っと一つの都市から消すことを考えたら、かなり権力を持った組織であると考えられるね」

「もしかしたらクレッドは魔王の配下の国だったのか?」

「ありえないね。それなら人類はとうに滅んでいるはずだよ」

「いくらでも機会はあったろうしな。いちいち記録消すより殺しちまった方が早いしな」

「その通りだね。いろいろ矛盾がでてくる。それか相当神経質な魔王だったかだね」

「確かにな。世界を包むほどの魔力があんのにちくちく街に信奉者送って記録消すってなぁ」

「ということはだね、僕は“魔王なんていなかった”というのが自然な流れになるんじゃないかと思う」



「魔王だけじゃない。僕は勇者なんて者も存在していなかったんじゃないかと思う」

「はぁ?どういうことだそりゃ」

「霧は自然現象って説があるって知ってたかい?」

「そうなのか」

「自然現象というのは正しい表現ではありません。超自然現象、並びに自然現象に人為的なものが介入した結果であるという推測ですわ」

「つまり、どういうことだ?」

「あくまで仮説ですが、火山噴火に巨大な魔力を注入しただとか、魔力のこもった隕石が降ってきたという説ですわね」

「ほー」

「どれも眉唾ですわ。それを実証するものは現在、何も発見されておりません」


「王国クレッドの誰かがその現象を解読し、それを退ける聖剣を作ったんだとしたらどうだろう」

「そんなことできるのか?」

「できたんだ。でも、それを秘匿した。隠したのは魔王や勇者じゃなく、その事実と技術だったんだよ」

「聖剣は誰かが作った物だったのか?」

「もちろん形状は剣ということではないとは思うけどね。聖剣の機能を有した何かということになるだろうね」

「剣はないってことか」

「王国城の地下に眠っていると言われているが、実物を見た者はいないだろ?」

「確かにな。でもよ、大将。それじゃ勇者クレッドはいなくて、クレッド国は世界を見捨てたってことになるのか?」

「そこが聖剣の謎だよ。どうしてクレッドは他の国を救わなかったのか」

「嫌いだったからか?それとも世界の王になりたかったとか?」

「クレッド国の史実をたどると分かるが、当時は深刻な食糧問題があった。それこそ本当の意味で人類絶滅の危機だった」

「ああ、漁師のじいさんからそんな話聞いたことあるな。確かその時に漁業が盛んになって今の形になったとかなんとか」

「現在クレッドにある7つの港、そのほとんどはその時代近辺にできている」

「海に囲まれた国じゃ、民草を守るために魚を取るしかなかったってことか」

「その通り。でもそれが逆に世界を見捨てた訳ではないという証拠でもあると思う」

「どういうことだ?」

「全滅のリスクがあるとわかっていたら、対策するだろ?最低限のライフラインは維持できる用意をするはずだ」

「じゃあ事前に世界が滅びるって予想はできなかったってことか」

「そうなるね。事実が判明したのは意外に急だったんじゃないかな」

「準備する暇がなかった。か……」

「歴史を調べていてそう思った。クレッド建国以前はほとんど資料が見つからないが建国後はかなり詳細に資料が残ってる」

「そうなのか」

「勇者や魔王については、ウーティが言った通り噂程度だ。だが国内で起こった動きは詳細に残っているよ」

「ほー流石アカデミー卒は違うね」

「大したことじゃないよ。興味を持って勉強すればすぐにわかることさ」


「でもよ、そんな急に滅亡したってのに、安全装置は作れたのか?」

「そこさ。僕が思うにクレッドが無事なのは偶然なんじゃないかなと思う」

「はぁ?どういうことだよ、大将」

「どうもこうもないよ。ただの偶然だ。聖剣なんてないんだ。霧から守る装置なんて物も無い。理由はわからないけど霧に覆われなかった唯一の地域。それがクレッドだ」

「偶然?それじゃどうして本当の事を言わないんだ?わざわざ魔王や勇者なんて面倒な話作る必要がある?」

「確信はないが、安心させるため……じゃないかな。恐らく」

「騙したってことか」

「団結するという目的もあったと思う。突然世界は滅んだんだ。相当こたえたと思う。それでも我々は生きよう。となるためには希望が必要だ」

「そこで英雄譚が一活躍ってことか」

「そうさ、英雄が魔王を倒した。これはその呪いで、これ以上最悪はない。協力して未来に繋ごう!ってね」

「……」

「先行きの見えない絶望の中でもがくより騙し騙しでも進んだ方がいいこともあるってことだね」

「まぁな。実際俺たちは生きてるし、おいしいおまんまも食えてるんだ。ありがたいことだよ」

「事実はどうあれ、人類は生きている。先人の努力には頭が下がるよ」

「ああ、忘れねぇようにしねぇとな」



「ご歓談中悪いが、そろそろ時間だ」

俺は皿に食器を置いてそう言った。


「ああそうだな、もういい時間だ。皆、明日に備えて休む準備をしよう」

アルの号令で再び皆が動き出す。

「おっとやべぇ!おまんま下げられちまうぜ」

「ははは、ゆっくりでいいさ。まだ夜は長い」

アルが焚火に薪を焚べる。ばちっという音がキャンプに響いた。


「悠長なことおっしゃっていますが、我々まだやることがあるのではないですか?」

ステラがため息をつく。

「うん。ああ、そうだな。じゃ一気に行ってくれるかい?」

「おうよ」

ウーティが皿に残った料理を胃に流し込んだ。


「俺は風呂を作ってくるよ。洗い物はまとめておいてくれ」

俺はそう言って立ち上がり、川に向かった。

「ああ、頼む」


背中からアルの声が聞こえた。


俺は小さく手を挙げて暗がりに向かっていった。


長すぎましたスイマセン。意味はないです

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