駄メイドとスクロール
イヅナと俺でレイシーをこってり絞った。
正直問題はこいつだけじゃないが……。
まぁ俺も人のことは言える身分じゃないがな。
こいつの行動原理が少し見えたのだが、ドクダミちゃんを守るということに関しては真剣のようだ。
メイドだからなのか、何かほかにあるのかは分からないが、固執しているようだ。
そのドクダミちゃんをノックアウトしたんだ。
今回は流石にレイシーも反省しているようだった。
今のうちに言っておこう。
俺達は、いろいろと足りてない。
それは自覚しないとな。
「さて、じゃお前の成果を聞かせてもらおうか?」
俺はうなだれているレイシーにそういった。
「うい!」
レイシーは元気に顔を上げて立ち上がった。
「報告です!家じゅう探しましたが、使えるものはなーんもありませんでしたぁ!!」
レイシーはそう言うと丁寧にお辞儀した。
「以上です!ご清聴ありがとうござ……」
言い終わる前に俺は頭をつかんだ。
「お・・・・いぃぃぃ?」
レイシーの頭をぐりぐりする。
「いたたたたたた!暴力反対暴力反対」
「お前の場合冗談かどうか判然としないんだよ。それって本当のことだろうな?」
「はいぃぃぃ、すんません」
そう言ってレイシーはへへへと笑った。
「いや、探したんですよ?いろいろ。キャンプ道具とかね?ハイキング用品とかね?探したんですよ」
レイシーは手をもみもみすり合わせながら話す。
「でも、ほらなーんもないんですよね~。奥様がね?いろいろあって居らんようになって、そこから物あっても維持できないってんで減らしたんですよね」
「そうか、あーなんか事情があるんだな?」
「そうなんですよ!そんでね?まぁ使えそうなもんはなかったんですけどね。なんも収穫がないわけじゃないんですよ?」
「うん?なんかあったのか?」
「ええ、へへへ。そんな大したもんやないんですけどね?」
そういってレイシーは背負ってきていたカバンをごそごそし始めた。
「これなんですけどね~」
レイシーはそう言って、重そうな麻袋を取り出し、机に置いた。
……大量のコインがすれる音がした。
「これって?」
俺は一応聞いたが、中身は大体予想がついていた。
「実はね。倉庫をごそごそやってたらお姉ちゃんに見つかりましてね~」
そう言って、レイシーは袋を開けた。
中からは金貨が50枚ほど出てきた。
「おっおいおい!なんだこれ!?」
中身を予想していたが、予想以上だった。
「おねぃちゃんに全部話しちゃいましたけどね。まさかのまさかで応援してくれることになりましてね」
「え?それでこれを?」
金貨50枚ってだって……俺の何年分だ?って話だぞ。
「なんかね。貯めてたらしいんですよ。でもなんか、使えって言われてね」
「え?これシルアさんのポケットマネーなのか?」
「らしいですけどね~」
嘘だろ……家政婦ってこんなに儲かるのか?
住み込みだからか?なんにせよ……そういう境遇だからこそ貯められたものじゃないのか?
「いいのか?ありがたいが、でも、本当に大丈夫なのか?」
「うーんまぁ?でもまだまだあるみたいやしええんちゃいますかね~?」
「そんな軽い気持ちで頂いていい金額じゃないぞ?」
「そうですかね~まぁ全部使わんでもね一部だけでもええんちゃいますかね?なんにしても命にはかえられないですからね」
「まぁ……そうだが、な」
俺はそう言うと袋を戻した。
「とりあえず、だ。これはありがたく使わせてもらおう。だが、今日みたいに持ち歩くのはもうよせ」
「はい!」
「これから買い出しとかもあるだろうが、基本は2,3枚あれば足りるからそれだけ持ってきてくれ」
「はい!」
「それから、これは頂くんじゃなくて、借りるってことにするからな。もし運よくレアドロップを手に入れて儲かったら返そう。いいな?」
「おお、ええですね~それ!そうしましょ!」
「だね!私も少し悪いと思ってたし……」
「ま、なんにせよこれで、また一つできたな」
「え?」
「なにがですか?」
「うん?ほら冒険を成功させる理由さ。あと、絶対生きて帰る理由がな」
「うん!そうですね!」
「さて、最後は俺だな」
俺はそう言うと立ち上がった。
二人は姿勢を正し椅子に座りなおした。
「俺はこの数日ずっと情報収集をしていた。得た情報はほとんどない。逆に言えば、情報がないってことはチャンスでもあるってことだ」
「なるほど」
「それが分かった。あとはな、酒場以外にもバウンティと冒険者掲示板に張り付いていた。そこで、副産物的に、とある情報が手に入った」
「情報……ですか?」
「ああ、実はな北部魔界の一部が解放されたんだ。境界までの道までだがな」
「え?!本当ですか?」
「ああ、それで、だ。これを手に入れた」
俺はそう言って荷物を漁った。
そして一枚のスクロール紙を取り出した。
「それは、なんですか?」
「依頼書だ」
「依頼書?」
「そうだ。北部魔界への冒険の依頼書だ!」
俺がそう言うと二人は顔を突き合わせた。
そしてこっちを振り返り……。
「冒険に行けるんですか?!」
二人は嬉しそうにそういった。
「そういうことになるな。と、いっても境界まで続く道にセーフゾーンを作るって仕事だ。ただの下働きだな。もちろん賃金も出るが、儲けは少ないし、ついでに人気もない」
俺はそう言いながらスクロールを広げて机の上に置いた。
冒険者ギルドの蝋印付きの正式の依頼スクロールだ。
そこには仕事の内容や参加の条件や報酬が書かれていた。
「概要を説明すると、だな。北部魔界の調査の話が本格化してな。とりあえずその道の安全性及び拠点ガリアの安全性を高めたいということらしい」
「ほうほう!」
「それでなとりあえずセーフゾーンをいくつか新設してみて、維持できるか?効果があるか?を試したいらしく、その第一号隊の募集がこれだ」
「え?!じゃ先遣隊ってことですか?!」
「そうだな」
「かっこいい!マンダリアンみたいですね!」
俺は、はははっと笑った。
「そうだな」
二人は目を輝かせながらスクロールを眺めていた。
俺は懐かしい目で二人を見ていた。
俺も、あんな時があったな。
こんなの全然なんにもない依頼書なんだがな。
気持ちはわかるよ。もう、完全に忘れちまってたけどな。
「さて、お前ら喜んでもいられないぞ。これまだ決定じゃないからな?」
「え?そうなんですか?!」
「そうだよ。これはまだ参加券だ。受けるためには十日後の試験に合格するが必要になってくる」
「試験があるのですか?!」
「そうだ。といっても簡単なものだろうとは思うけどな。しかし最低条件はもちろんある」
「そ、それは?」
「まず、蛍灯の鈴に十分な魔力を入れれること。最低限の戦闘能力を有すること。性格人格などに問題ないこと。業務には真摯に当たること。そして今回の仕事の守秘義務だ」
「守秘義務もあるのですか?」
「まぁな実験だって言ったろ?失敗したとき用の保険だろうな。あと、もちろん冒険者ライセンスを有することも必要だ」
「それじゃあ……」
「ああ、ドクダミちゃんには頑張ってもらわないとな」
そう言うと俺たちはドクダミちゃんを見た。
ドクダミちゃんはうんうんうなされていた。
まぁ暑いもんな……。
「ドクダミちゃん!」
イヅナはそう言うとドクダミちゃんに近寄り、ぱたぱたあおぎ始めた。
「頑張ってね!ドクダミちゃんがカギだよ!」
レイシーもそれに続いた。
そしてスクロールでパタパタあおぎはじめた。
「おい!馬鹿!それで扇ぐな!」
俺はそう言うとレイシーはてへへっと笑った。
俺はレイシーからスクロールを取り上げると、無言で頭を小突いた。
「う、う、ううううん。おおおおおううううん」
応援が通じたのか、しばらくするとドクダミちゃんが目を覚ました。
「おはようドクダミちゃん。体調はどうだ?」
「え?あ、あ、あれ?私は一体?!」
「ドクダミちゃん……暑さにやられて倒れてもうたんやで……」
レイシーがしれっとそういった。
「え?え?そんなぁ!すみません……それは大変なご迷惑を……」
ドクダミちゃんは申し訳なさそうに頭を下げた。
レイシーはその横でうんうんええよええよと相槌を打っていた。
「いやいや、ドクダミちゃん。違うぞ。悪いのはそいつだぞ」
「うん。そうだよ。レイシーちゃんに絞められてぶっ倒れたんだよ。悪いのはレイシーちゃんだよ」
俺とイヅナは冷徹にそう言った。
突然の裏切りにレイシーは目を泳がせた。
「な、な、何言うてはりますの?!え?急に~!え?うん」
「いや、うんじゃなくてさ」
「ごまかさずに、素直に謝りな」
俺たちは完全に突き放した。
「……う、う~。ご、ごめんなさい~」
しばらくはうごうごやっていたレイシーだったが最後はきちんと謝った。
それを聞いて、ドクダミちゃんはうなだれるレイシーの頭を撫でた。
「いいんだよ」
ドクダミちゃんがそう言うとレイシーは顔を上げてドクダミちゃんに飛びついた。
「あ、ありがとう~!ごめんね!愛してるでぇ~ドクダミちゃーん!」
レイシーはドクダミちゃんを力いっぱい抱きしめて頬をこすり付け、おんおん泣いた。
「う、う、うううううぐうううう」
「おい!力入れすぎだ」
「締まってる!また締まってるよ!レイシーちゃん!」
「う、うえええええん!」
「むぅぅぅううぐうううう!!」
俺とイヅナは泣きじゃくるレイシーを力づくでひきはがし、ドクダミちゃんを救出した。
そしてこの、反省しない駄メイドを二人でこってり搾り上げた。
【謝辞】
読んで頂き、ありがとうございます。
私事ではありますが、先日、目下の目標でありました評価ポイント、100ポイントを達成しました。
これもひとえにブックマークに入れていただいた方々、評価ポイントを入れていただいた方々、また気まぐれでもいいので目を通してくださった皆様のおかげです。
本当にありがとうございます。感謝しきれません。
本当は常に感謝の言葉を置いておきたいんですが、私自身大変こういうのが苦手でございまして、それに作者がべらべら何か言うというのもあまり好きではないので、避けているところではあります。
本当に不愛想で申し訳ないです。
しかし、今回ばかりは感謝の言葉を書かないのはいかがなものかと思い、あとがきを入れさせていただきました。
始めて書く小説で、勢いよく書いているので誤字脱字の多い大変拙い作品ではありますが、これからもほどほどに続けていきますので、どうぞ、よろしくお願いいたします。




