水と毒、そしてパワー!
「戦闘はできるのか?」
俺のその問いに三人は顔を見合わせていた。
「そうですね……実は私たちもそこが分からなくて」
イヅナがそう切り出した。
「私も本格的な戦闘はしたことがなくて……だけど剣については今も訓練を欠かしていません!」
「うん。そうか」
「でも、たぶん一番強いのはレイシーちゃんだと思います」
「そうなのか?」
「え~私ぃ?そんないうてですよ~」
「確かバニラボーンなんだよな」
「まぁそうですけどね」
俺が見たことのあるバニラボーンは自分の身長くらいある斧とかハンマーを振り回していた。
総じて毛の濃い大男だったが……。
「なにか、武器とか使えるのか?」
「え~そんなんなんにも使えませんよ~。私は普通のか弱い女の子なんで~」
「か弱くはないよ……」
「う、うん、か弱くはない……かな」
イヅナとドクダミちゃんがレイシーにつっこむ。
「私は何度も見たよ!ドクダミちゃんを守るためにどこからともなく颯爽と登場して、みんな蹂躙してドクダミちゃんを抱えて走り去るレイシーちゃんを!」
「そ、そんな大げさな!適当にタックルして逃げてるだけやって~」
「いやいやすごいんですよ!レイシーちゃんのフィジカルは本当にすごいんです!」
「うん。あーわかった。でも武器とか武術とかはなにもないってことだな?」
「そうですね~まぁ若干護身術使えるくらいですね~」
「そうか分かった」
「ドクダミちゃんは、いろんな属性使えるのか?」
「は、はい」
「主属性は何なんだ?」
「み、水です……」
「水かぁ……」
俺は少し考えた。
水……というか属性には相性が若干だがある。
俺の火と水はもろに反属性だ。
本当にわずかな差だが、俺の火の効力が落ちる傾向にある。
それに水は、結構厄介な特性もある。
特にこの子は……クセは強そうだ。
「水って……もちろん普通の奴じゃないよな?」
俺は決めつけでそういった。
水の副属性は性質・形状変化だ。
単純に水を操れるだけじゃなく、形状や性質を変化させて操れる。
形状の面で言えば、鞭状であったり鎌状であったり水を集めて形を変えて使う。
この形状はコントロールできる者もいるがどちらかというとその人の自然な成り立ちというかそういうものに左右される。
性質の面で言えば、氷だったり霧だったりだ。
要は水を、液体か固体か気体かに変えて操れるのだ。
水は一番奥が深く、そして業が深い属性でもある。
正直言うと、パーティを組むときに水属性を入れるときは、水の奴を中心に方針を決めることがほとんどだ。
それほど、クセが強いので、適当にパーティに入れてもそいつの個性を殺すか、そいつの独走になるからだ。
うまくいかせれば……そうとう味のあるパーティになる。
水にはそういう魅力もあった。
「は、はい。あ、あの、そ、そのぉぉぉ」
ドクダミちゃんは急に口ごもった。
二人も黙ってしまっている。
な、なんだ?嫌な予感がする。
というか、こいつらといると嫌な予感しかしない。
「うぅうううううう……」
ドクダミちゃんはずっと唸って下を向いてしまっていた。
「どうした?」
俺が少し冷たくそういった。
お前変わるんじゃないのか?そういう気持ちも入ってはいた。
ドクダミちゃんはそのあとうごうご何かを言おうと頑張ったが……ついに涙を流し始めた。
レイシーがすぐにドクダミちゃんを抱きしめてた。
「大丈夫よ。よう頑張ってるよ」
レイシーはそう言って、優しく頭を撫でていた。
「すいません。モリー様。お気持ちはわかりますが、ここは理解してあげてください」
レイシーが俺のほうを向いてそういった。
その目には気のせいか、敵意のようなものがあった。
「モリー様はご存じないかとは思うのですが……」
イヅナがレイシーを見た後に、そう話し始めた。
レイシーはなんだか気まずそうにドクダミちゃんをよしよしした。
なんだか雰囲気が急に悪くなった気がした。
俺、またなんかやっちゃったかな。
「傷つけるつもりはなかったんだ。すまない」
俺はそう言った。
「何か事情があるんだな?言いたくないなら無理には……」
「だだだびびょううぶで、ぶでぶぅぅ~~」
ドクダミちゃんがまったく聞き取れない言語で何か答えた。
「ああ、だ、大丈夫なのか?」
「軽く説明させてください」
イヅナが手を上げる。
「いや、ここは私が先に」
レイシーが手を上げる。
「いや、私が言うよ」
イヅナが言う。
「いやいや、私のほうがよう知ってるんで、私が」
レイシーが返す。
「私が」
「私が」
延々言い合っている。
「なぁどっちでも……」
そう言いかけたとき。
「わだじがずるぅ~」
ドクダミちゃんが声を上げた。
「どうぞ!」
イヅナが元気に言う。
「どうぞ、どうぞ!」
レイシーがそう返す。
「うお~!がんばるぅ~」
ドクダミちゃんが顔を上げた。
ほんとに元気だなこいつらは。
「私は、性質変化も形状変化も両方の特性を持ってます」
ドクダミちゃんは語り始めた。
「それで、えっと、あの名前の通りというか……私は毒を使います」
「ど、毒?」
そんなケースは聞いたことがなかった。
「はい。主に霧状か水なら鞭……というか触手みたいにして操れるます」
ドクダミちゃんはそう言うと手に水を集め始めた。
「え?何もないとこから集めれるのか?」
「は、はい。勉強しました」
まじかよ。それって……ステラレベルだ。
シャリオン魔法学校を主席卒業したってそのレベルだ。
「すごいじゃないか」
「で、でも……」
ドクダミちゃんそういうと手の中の水がどんどん色を変えていった。
気が付けば気味の悪い深紫色の水球がドクダミちゃんの掌に乗っていた。
「そ、それは……」
「こうなっちゃうんです。理由はわかりません」
「ど、毒なのか?効力はどれくらいなんだ?」
「致死量です。今持っているこの量でほとんどの人間の……」
「まじかよ」
ドクダミちゃんの掌の水は、一口で飲み切れるほどだった。
ドクダミちゃんは少しの間その水を見つめると、口を開けて一気に飲み込んだ。
「お、おい!」
「大丈夫です。私耐性があるんです。というかこうしないと、危ないから……」
「危ないって?」
「もとに戻せないんです。だから集めちゃったらほかの術師のように大気中に霧散することができないんです」
「だからって……」
「昔、それで、い、い、い、いろいろあ、あって」
そういうとドクダミちゃんがまた目に涙をため始めた。
だが、今度はぐっと我慢していた。
「そうか。よくわかったよ。悪かった。それで、ほかの属性も扱えるんだよな?」
「は、はい!まず氷なら普通のものが使えます。火も使えます。風もそこそこ使えます。雷も放電くらいなら……」
「すごいな。威力はどれくらい出る?」
「あ、あんまり試したことはないです……」
「いや、すごいですよ!去年のキャンプの時も私が気合を入れすぎましてね~」
レイシーが話始めると、ドクダミちゃんがあわあわし始めた。
「そ、そ、そのは、ぬぅぁあ」
ドクダミちゃんはレイシーを止めようとしたが、セリフの途中で口を押えられていた。
「去年ね~東部にキャンプに行ったんですよぉ~その時どうしてもキャンプファイヤーがしたい言うてね~」
レイシーがニヤニヤしながら話始める。
「あっ、あれは私じゃなくレイ……ぐぅんむぅああ」
ドクダミちゃんがまた何か言おうとしていたが、すぐさまレイシーに止められた。
今度は脇からいってヘッドロックのような形で口を押えた。
「ほんでね~そうしても言うもんやからおねぇちゃんと協力して薪をね、組んだんですよ。気合入りすぎて、そら高う、つんでしまいましてね~」
「あ、ああ」
「まぁでも?ほらキャンプファイヤーといえばやっぱ燃え盛る炎やないですか。それでねドクダミちゃんに着火お願いしたんですよ」
押さえつけられているドクダミちゃんがばたばたしている。
止めようとしているのか、苦しんでいるのか判然としない。
そして、少ししたらおとなしくなった。
だ、大丈夫か……?
「ほんならですね~ドクダミちゃんも気合が入ってたのか、いきなりフル火力で行きましてね!全焼ですわ!」
レイシーはけたけた笑い始めた。
何がそんなに愉快なんだ……。
「壮観でしたね~。でもねきれいやなー思うのも数秒でね。すぐに薪がばきばき言い始めましてね、これやばいんちゃう?ってなりましてね」
そりゃそうだろう……。
「ほんなら案の定大丈夫じゃなくてですね~、爆ぜた薪が近くの気に燃え移ってもうてですね~そっからてんやわんやですよ!」
「お、おい?」
「旦那様も水を使わはるから、ドクダミちゃんが集めた水を毒化する前に旦那さんが飛ばして!私とおねぃちゃんは近くの川からとにかく水をですね~」
「レイシー?あのさ」
「周囲の人も手伝ってくれてね~。でも、ドクダミちゃんがそれで緊張してもうて、旦那さんもそれに気が付かずにね!毒化した水を散布してもうて!ほんなら周りのみんながばったばったそりゃ面白いくらい次々と~」
「おい!レイシーさすがにヤバイ!」
俺は声を上げた。
レイシーに押さえつけられていたドクダミちゃんは顔面が青くなっていて、ほぼ白目をむいてプルプル震えだしていた。
レイシーが腕の力を緩めると、ドクダミちゃんは力なく倒れた。
俺とイヅナで倒れゆくドクダミちゃんを支えて、そのままベッドに運んだ。
ドクダミちゃんは気を失ってはいたが安静にしていると大丈夫そうだった。
間一髪って感じだったが何とかなったな。
「ドクダミちゃん!どうして?!何があったんや!ドクダミちゃんにこんなことするなんて!ウチ許されへん!!」
レイシーは力なく横たわるドクダミちゃんに駆け寄り、わざとらしくそういった。
「お前ね……」
俺はため息をついた。
「てへ!すいません!」
レイシーは舌を出して、自分の頭をこつんと叩いた。
「レイシーちゃん……!!」
イヅナは怒気を込めてレイシー読睨んだ。
「へへへ、すんませんよってに~」
そこから、俺たちは二人でレイシーを叱った。




