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僕の仲間

大きな荷物を背負った、大男が背中を向けて店を出て行った。

どうやら彼を怒らせてしまったようだ。

そんなつもりはなかったのだがな。

僕は、机に積まれた金に目をやった。

確かにこれは少し嫌味だったかもしれないな。

金をやるから納得しろっていうのも、すごく下品のように思える。


そんなことを考えていると自然と口からため息が出た。


だめだな。

僕がため息をつくなんて、そういうのは良くない。


「よし、じゃあ乾杯し直すか。邪魔者もいなくなったわけだしな」

僕の右隣に座っている男がそう言った。

「邪魔者って……」

「そうじゃないのか?」

「そんな風に聞こえたかな?」

「まぁな」

「あなた自覚がなかったのですね」

「そうか、それで君も怒っているのかい?」

「そうだよ」

「まぁ仕方がないですね。私も正直いい気分ではありません」


「で、そろそろ聞かせてくれないか?」

「え?」

「とぼけるなよ。旦那のことだ。なんで急にクビにした?」

「それは、さっき言った通りだよ」

「契約に無期限雇用って書いてないからか?それにしたってそれは正当性の話であって理由じゃないだろ」

「まぁそうだね」

「旦那はそりゃちょーとばかし気が利かないし、抜けてたとこもあったかもしれないけどよ。突然クビはあんまりだと思うぜ」

「少し?どこがですか。あの人はホントにデリカシーに欠けていましたよ」

「そうかもなぁ。でも、俺達のこれまでの冒険の功績、正直旦那のした仕事はでかいだろ?」

「そうだね。あの量のドロップの運搬はモリーにしかできなかっただろうね」

「だろ?ということは、だ。これからの冒険にも必要なんじゃねぇの?冒険者ランクについては話がなかったけど、俺達降格の可能性もあるんだろ?」

「そうだね」

「おいおいさっきからそうだねしか言わねーじゃねーかよ」

「そうだね……」

「誤魔化すのか?そういうことなら俺も降りる」

「それは……困るね。君は僕らには必要だから」

「俺は必要で旦那は必要なしか。理由も言わないのにな。なぁ大将あんたのことは尊敬してるし、信頼もしてるけど、俺も納得がしたいんだよ。子供のいじめみてーなことはやめようぜ」

「理由は言った通りだよ。契約云々じゃない。僕らの可能性を追求したいんだ」

「どういうことだよ」

「この間の冒険で分かったことがある。それはこのままなら僕らの目的は達成できないってことさ」

「そんなことないだろ」

「いや、あるね。結果あのスライムに僕たちは対処できなかった」

「それは旦那のせいじゃないだろ」

「そうだね。でも同じ状況なら、100回やっても同じ結果になる。だろ?」

「だから、それは旦那のせいじゃない。俺達のせいでもあるだろ」

「そうさそれが二つ目の理由だ」

「よくわかんねーよ。んで、理由って何個あるんだよ」

「主に5つだ」

「そんなにあんのかよ」

「重要なのは三つだけだ。なぜなら後の二つは僕の個人的理由だからね」

「ふーん。一つ目の理由は対応力がないってことか?で、二つ目ってのなんだよ。詳しく教えてくれ」

「そうだね。全部説明するよ。少し長くなるかもだけど、聞いてほしい」

僕は呼吸を整え、椅子に浅く腰掛け、姿勢を正した。


「二つ目の理由は……」


そうして長い話が始まった。

思えば、僕は今までこんな話を他人としたことがなかった。

今まで友達と呼べる者はいたが、うまく付き合っているにとどめた。

心の底を、正直な気持ちを話せる、仲間と言えるのは彼等が初めてだ。

彼等は真剣に僕と向き合ってくれている。

言葉通り、命を懸けてくれてるんだ。

言葉で言うのは簡単だが、行動に起こせる人間は少ない。

彼等はそういう稀有な人材で。僕の財産だ。

だから本心で向き合おうと思った。


「彼も仲間であったことは間違いがない。僕の未熟さにより、今回の結果になってしまったのは不徳の致すところだが、僕らは止まるわけにはいかない。そうだろ」

「まぁな」

「そのために必要なことをやるだけだ」


その後に言葉はなかった。



「にしても、言い方ってもんがあったと思うぜ」

「そんなにまずかったかな」

「そりゃ怒るよなって思うくらいにはな」

「そうか。悪いことをしたな」

「おかしいことは言って無いと思いますよ。しかし、急でしたからね。動揺するのも分かります」

「そりゃな怒るよな」

「と、いってもあの方の態度もいかがなものかとは思いますがね」

「まぁな。少し嫌味っぽかったよな」

「ええ、いくらなんでも、もう少し言い方があったと思います。本当にあんな人だとは思いませんでした」


「嬢ちゃんも旦那のことは手紙で聞かされただけ?」

「ええ、そうですね。手紙にはモリーさんを外そうと思うとだけ書いていましたね」

「それ見てどう思った?」

「ああ、そうですか。と思いました」

「そんだけかよ!そんなに嫌いだったのかよ」

「いえ、そういうことではありませんが、でもそう言うこともあるかな、と思いました」

「俺さ、正直この手紙にもちょっとイラついてたよ」

「そうなのか?」

「ああ、何せ大将を信じて俺達はついてってんのによ。俺達に拒否権や、投票権がないって言ってきたんだからよ」

「それは、すまない。しかし、モリーと君達では立場が違うだろ?」

「一緒だろ?」

「いや彼は公募した。君たちは僕が声をかけた」

「でも、仲間じゃないのかよ」

「それはそうだ。しかし、公募した理由は色々試せるからと言う理由もあるからね」

「もともとそのつもりだったってのは大きいんだな」

「そうだね。それについては、さっき話した通りだよ」

「なるほどね」

「わかってくれたかい」

「まぁもう口から出しちまったもんは引っ込めれないしな」

「それよりも、私が気になることがありますが……。あなた、もちろん次のことは考えているのですよね?」

「うん。正直言うと、全く未定だね」

「ああ?ノープランかよ!!それじゃもう少し旦那にいてもらってよかったじゃねぇか!」

「いやーまぁそうなんだけどね。でもなんとなくだけど、近くいい出会いがある。と、そういう気がするんだよね」

「気がするだけかよ!」

「信じてくれ。なんだかいい風が吹いてきているんだよ」

「この前そう言った時はまったく真逆の方向を指さしてましたけどね」

「ははは、まぁそういうこともあったね。だけどもう、二度とあの時のようなことや、今日のようなことは金輪際ないようにするよ」


「どうか、僕を信じてくれ」

僕は仲間達にそう誓った。


全て話し終えた後、正直言うと、僕は後悔の念に駆られていた。

でも今はこの気持ちは心にしまおう。


この気持ちは、またいつか、きっと……彼と。

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