星の導き
なだらかな山道を登っていく。
ここはまだ魔界の入り口。
冒険者たちが境界と呼ぶ地帯。
俺は4人分の荷物を背負い、この山道を登っている。
強化魔術により負担は全くないが、仲間が重い荷物を持って歩いているのだから少しは心配してくれてもよいと思うのだけどな。
そんな気も知らずステラは進んで行く。
一顧だにしない。
「冷たいもんだな……」そんな小言も、もう彼女には届かない。
しばらく行くとかすかに鈴の鳴る音がしてきた。
本日の目的地が近いということだ。
魔界の表層、境界と言われているこの地にはセーフポイントがいくつかある。
この地を歩いた冒険者たちが発見した駐留地だ。
比較的、魔物に遭遇することが少なく、水、食物が豊富な場所のことを言う。
俺たちのいる北部境界は比較的こういった場所が散見される。
新たなポイントも年に数か所発見されている。
政府の認可が下りれば、発見者には報奨金が支払われるシステムだ。
北部地域が人気の理由の一つだ
冒険者たちは魔界に入る際には、一旦ここに駐留し、その後のルートを決める。
セーフポイントの入り口には、それとわかるように小さい鈴がいくつか近くの木の枝や茂みなどに括りつけられている。
これは「蛍灯の鈴」と呼ばれるている物で、魔力が込められたアイテムだ。
この鈴の音には魔獣除けの効果があり、セーフポイントの保持と安全を担っている。
夕闇の中にあれば仄かに灯り冒険者の道しるべにもなっている。
一寸先の闇の中、生還できるかどうかの極限状態にさらされた時、冒険者はこの光を探す。
この光がどこかにあるということが、冒険者たちに勇気を与える。
微かに灯るこの光は、数多くの冒険者を救い、全ての冒険者の希望として愛されている。
なだらかの坂の途中、かすかに鈴の音が聞こてくる。
音の方向を見ると茂みの中に光が見えた。
「この先か」
茂みを分けて、中に入るとすぐにひらけた場所に出た。
周りを茂みに囲まれてはいるが、テントを張るに十分な広さがあった。
広場の真ん中には焚火ができるスペースがあり、それを囲むように長椅子にこしらえられた切り株が置いてあった。
焚火スペースには燃えカスが残っており、他のPTが最近使用していたのであろうことが伺えた。
しかしどうやら出立した後の様で、PTメンバーである4人しかいないようだった。
それを見て、助かったと思った。
セーフポイントの少ない地域に行けば3、4PTで共有することもざららしい。
それはそれで交流や物資交換などで良い面もあるが、困難地域特有の盗難等の問題もあるそうだ。
一番の問題は、風呂が混むことだ。
俺はゆっくりつかりたい派だから人混みは好まない。
「待たせた。すまない」
先に待つメンバーに声をかけた。すると椅子から一人立ち上がりこちらに歩いてきた。
「やあモリー遅かったな。大丈夫か?」
にこやかに、男が話しかけてくる。
彼が俺の所属する冒険者PT「リカオン」のリーダーで剣士のアルガートンだ。
「ああ、大丈夫だ」
「そうかならいいが……無理はするなよ」
そう言って、アルガートンが肩を軽くたたいてくる。笑顔が自然でさわやかだ。
「リカオン」リーダー、アルガートン・コンカー。
年齢は20歳位だったか。
リーダーの中じゃかなり若い方だ。
整えられた黒髪と、青い目が特徴的な男だ。
整った顔立ちをしており、確かな剣の技量を持っている。
18ではじめて魔界にわたり、その後独立し「リカオン」を作ったと聞いた。
何かしらの目的があるらしいが、よくは知らない。
俺たちの出会いは、たまたま見かけた「リカオン」のPTメンバー募集を目にしたことがきっかけだ。
もちろん、彼の眉目の良さと相場より、いい賃金での募集であったため結構な倍率ではあったが、
正直俺の補助魔法はスタートアップにはもってこいの能力なので勝算はあった。
目算の通り俺は受かり、なんやかんやで今回で三回目の冒険となる。
「すぐに用意する」
俺は周囲を見渡し、目星を付ける。
基本的な俺の仕事は、荷物運びとテント設営。
まぁ要は小間使いだ。
戦闘時は補助魔法もかけるが、それはほぼおまけだ。
と言っても正直かなり役には立っていると自負はしている。
俺は荷物を下ろし、テント道具を準備する。
「すまないな、そっちは頼んだ」
アルガートンが言う。
「ああ」
俺は軽くうなずき、仕事を始めた。
週1くらいで上げます。




