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二つ目のポイント

森を抜けて、再び平原を進む。

冒険者がいないからか、周囲はすごく静かだった。

そこにしゃんしゃん、ぷっぷーと元気な歌声が響いていて、なんだか平和だった。

俺は意気揚々と行進する三人を見て、なんだかキンダーの子供をひきつれる引率の先生の気分だった。

行進はずんずん続き、気が付けば次の目的地、本日の野営地付近まで来ていた。

「ここらへんだ」

俺がそう言うと三人は返事を返した。

「どこですか?!」

イヅナは周囲をきょろきょろと見た。

「わかりにくいが……どこかに目印があるはずだ」

俺は地図と照らし合わせて周囲を確認した。

俺達は平原を向けて、また森の中に入っていた。

今度のポイントはうっそうとした山道って感じの場所で、さっきみたいな開けた場所ではなかった。

プントウールーに近いこともあって、ここはもうほとんど山道だった。

「たぶんここら辺の茂みのどっかに入り口があるはずだ」

俺はそう言って脇道の茂みを覗いた。

何か所かごそごそしながら移動していると、

「おっ、あった!」

俺は茂みの中に輝く光を見つけた。

蛍灯の鈴だ。

俺は茂みの中に体をねじ込んで中に入った。

「え?!そこですか?!」

外でイヅナの声がした。

「おうここだ。入ってこい」

俺は手だけを茂みから出して手招きした。

外の三人はどうやら、躊躇しているようだったが、その内イヅナが茂みから飛び出して来た。



腕を顔の前でクロスして、体を丸めてイヅナが入ってきた。

イヅナは見事に地面に転がり、受け身を取った。

「うおっ?!確かに!中は普通ですね!?」

イヅナが俺を見て言った。

「お前ね。普通に入ってきなさいよ」

「えーだって……どうなってるかわかんなかったですしぃ……。こういう時は勢いかなって……」

イヅナはそう言うと、へへへと笑った。

うーん。

俺は頭を掻いた。

そろそろ慣れないと、同じこと何回でも言うことになりそうだと思った。

「どりゃー!」

その瞬間俺の背中に向けてレイシーが飛び込んできた。

「ごうっ!」

俺はレイシーのボディタックルを喰らって地面に倒れた。

「あっ!モリー様?!なんでそんなとこに立ってるんですか?!危ないですよ!」

レイシーは俺の上でそう言った。

「なんでお前も飛び込んでくるんだよ……」

「えー、だってイヅナちゃんがそうしたんで……そう言うもんかなって思て」

「俺は普通に入っただろう……」

文句を言おうとした時、俺はいやな予感がした。

二度あることは……。

はっとした瞬間だった。

「キエエエエエエエ!」

閑静な空間に奇声が響いた。

と、同時にドクダミちゃんが飛び込んできた。

「危ない!」

レイシーは咄嗟に振り返り、その身を投げ出すドクダミちゃんを受け止めた。

レイシーはその勢いそのままに、俺に倒れかかってきた。

そして、レイシーは俺の後頭部に思いっきり後頭部をぶつけてきた。

「いてぇ!」

ハンマーで頭をかち割られたような衝撃があった。

レイシーの頭がい骨は鋼鉄か何かでできてるんじゃないかと思うくらいの石頭だった。

「ごっ……おっおお……」

俺はあまりの衝撃に悶えた。

「うっ、あっ、い……生きてる……」

ドクダミちゃんがしみじみそう言った。

一体どんな覚悟で飛び込んだんだよ……。

「こ、怖かったぁ……」

「よぉ頑張ったなぁ、えらいでドクダミちゃん」

俺の上で二人がいちゃつき始めた。

人が頭痛で苦しんでるってのに、こいつらは……。

「仲がいいのは良いけど、そろそろ降りてくれる?」

「え?あっすんません」

「あっ!ごめんなさい……モリー様」

レイシーとドクダミちゃんはやっと俺に気が付いたようで、俺から飛び降りた。

俺はまだぐわんぐわんする頭を抱えながら立ち上がった。

「おーいてぇ。レイシーは大丈夫か?」

俺の頭を破壊するレベルの頭突きだったんだ。

きっと無事じゃないんじゃないかと思った。

「え?いえ、大丈夫ですよ!」

レイシーはあっけらかんとそう言った。

ホントにノーダメージって感じだった。

恐るべき頑丈さだ。

俺はまだこいつらのポテンシャルを完全に把握しきれていないことを実感する。

それは非常に頼もしいが……逆に恐ろしくもあった。

「なぁ、一つ約束してくれ」

俺は真剣な顔で言った。

「闇雲に突撃するのはもうやめよう?な?」

俺がそう言うと、三人は片手をあげて元気に返事した。

こいつらいつも本当に返事だけは良いんだよな。

俺は何度目とも分からないため息をついた。



「さて、それじゃ作業するぞ」

俺は気を取り直して言った。

そして、その場所に設置されている箱を開けると中から備品と指示書を取り出した。

俺達が今回作業するこの場所は駅から一番遠いスポットだ。

周りは茂みに囲まれていて、周囲からは中の様子は見えない。

目印として入り口付近に鈴が設置されていた。

入って正面に茂みを抜ける道があり、その先は川になっていた。

どうやらここは、上流から流れてきた川が左右に枝分かれするスポットのようだ。

俺達のいる地点は左側。

恐らくホークアイの面々がいる方向は右側に分かれた支流の開始地点だと思われた。

「ここは川に挟まれた三角地帯ってことですね?」

「そうなるな」


セーフゾーンの中は綺麗だった。

すでに焚火スペースも、木でできた椅子も設置されていた。

テントスペースもできているし、掃除も終わっていた。

見た目だけで言うと、何の問題もないように見えた。

茂みの中をよく見ると、そこには蛍灯の鈴の姿も見えた。

しかし、その光は失われていたので、機能はしていないものと思われた。

「さて、今の状況の整理だが、まずはお前たち茂みには近寄るな」

「え?なんでですか?!」

「ああ、ここはさっきよりも整備されているように見えるが、茂みに囲まれていて視界がない」

「確かにそうですね!」

「さっきのところも木々に囲まれていたが、隙間が多かった」

「つ、つまり……か、隠れられるところが……なかったってことですね」

「その通りだ。でも今は……」

俺はそう言って周囲を見た。

三人もそれにつられて周囲を見た。

「これは……」

「き、危険ですね……」

「言われてみれば、どこになにがおるかわからへんなぁ」

「ああ、そうだ。キレイだからって安心しちゃいけない」

「はい」

「こういう時はまずは周囲の安全から確認する。あとはついでに周りの地形の把握だな」

「地形の把握ですか?」

「そうだ。例えば……この先が崖だった場合と森だった場合で危険度は変わるだろ?」

「ですね!森だったら魔物がいるかも!」

「それだけじゃないぞ。崖だって知らない場合はだ。例えばトイレの時に茂みの奥でしようとしたとするだろ?」

「あっ!崖だって知らなきゃ!」

「そうだ、落ちるかもしれない。そう言うとこを確認するんだ」

「なるほど~」

俺がそう言うと三人は首を縦に振った。


「なので今から俺は茂みの奥をチェックする。お前たちは何かあったら対応できるようにしといてくれ」

「はい!」

三人の返事を聞いて、俺は周囲の確認を始めた。

まずは入って右側の茂みを見る。

茂みはそこまで、深くはなく、少しかき分けたらその先の本流の姿がうっすらと見えた。

俺は今度は反対側の左側の茂みを見る。

こっちはどうやら川に沿って茂みが続いているらしく、だいぶと深いようだった。

俺達は川に行って見ることにした。

川の向こう側は森になっていた。

が、川幅が結構あるので森は遠くに見えた。

「これなら……魔物が来ることもなさそうだな」

「魔物って泳げないんですか?」

「泳げる奴もいるかな?でも基本は水を飲みに来るくらいじゃないかな?」

「それなら水場って危険じゃないですか?!」

「そうだな。結構危険だ」

「じゃ、ここは……危険ってことですね?!」

「うん、普通に考えればそうなんだが、ここは安全だ。魔物とはいえ基本は野生動物が変容したものだからな。好き好んで人間を襲いにこないよ」

「そうなんですか?!」

「ああ、基本はテリトリーに入った奴を攻撃する習性にあるからな。だが、深く魔力に浸食された奴は明らかに人間に敵意を向けて来る」

「つまり、そういう奴はここら辺にいないってことですか?」

「そうだな。ここいらにはそんな危険な奴はいない」

「なるほどー」


「よし、現場は把握できたな。作業に移ろう」

俺達はセーフゾーンの中に戻った。

「うん。ここは全員で作業しよう。まずは、鈴の準備だ」

「ここは鈴からなんですね!?」

「そうだな。っていうかそれ以外はほとんどやることがない」

俺は指示書を確認した。

その内容は明らかにさっきよりも少なかった。

「ここは単純に閉鎖期間中に鈴の効果が切れた場所っぽいな」

「なるほど~。それでここが野営地にされたんですね」

「それもあるが、川幅があるからな。もとより結構安全な場所だったんじゃないかな」

俺がそう言うと三人は頷いていた。

こいつらなりに何かを学んでいるのだろうか。

「じゃ、作業開始ですね!」

「ああ、そうだな。じゃ、ドクダミちゃん頼む」

「は、はい!」

俺は箱から鈴を取り出すとドクダミちゃんに渡した。



「じゃ、魔力込める間に野営の準備するか」

俺はそう言うと荷物を下ろした。

「はい!準備って何するんですか?!」

「テントを立てる準備をする」

「だけですか?!」

「あとは飯の用意だな」

「ごはん!」

「重要だろ?」

「はい!」

俺は荷物に括り付けているテントの部品を下ろした。

「あっそれがテントだったんですね」

「そうだ。折り畳み式の特別製。結構高いんだ」

前の冒険で一番ショックが大きかったのはこれがやられたことだろう。

無事、買いなおせてよかった。

と言っても……完全に同じものとはいかなかったが……。


俺は周囲を確認する。

「先に言っとくけど……テントは二つだ。大きさは変わらない。三人じゃ少し狭いかもだけど覚悟してくれ」

今回買ったのは、前回ステラが一人で寝ていたテントとほぼ同型だ。

若干広くはなってるが……俺一人で、ギリギリだろう。

三人だとぶっちゃけ狭いと思うが……仕方ない。

「せめて、広いスペースに設置するから納得してくれ」

俺はそう言うと入り口から向かって左側に、三人用のテントの部品を置いた。

「え?!こっちですか?!私達女の子ですよぉ?」

イヅナがそう言った。

「うん?何か問題があるか?」

「え?!だってそっちは茂みが深い方ですよ!危ないじゃないですか!」

イヅナは当然って感じにそう言った。

……言われてみればそうか。

そこで、俺は気が付いた。

あっ……ここって……。

俺は周囲を見渡した。


やっぱり……ここって、あの時と同じ立地だ。

あいつらと最後に野営したあのセーフゾーンと……ほとんど同じ……。

「どうしたんですか?」

急に黙って呆然とする俺にイヅナが心配そうに声をかけた。

「うん。ああ、いや別に……なんでもない」

俺はそう言うとため息をついた。

あのときステラが嫌そうな顔してたのはこういう事だったか。

こんなところで、あの時のステラやアルの苦笑いの理由が……分かるなんてな。

こんな簡単な事も、俺は気が付かなかったのか。

「そりゃ、嫌にもなるか」

俺は今更ながら、すごく恥ずかしくなってきた。

気が付かないうちに俺はどれほどの迷惑をかけていたのか……。

きっと今、昔の行いを見せられたら、見るに堪えないと思う。

できるなら昔の俺をぶん殴ってやりたい。

そう思えた。

「全然ですよ!」

イヅナがそう言って俺のわき腹をつついた。

「え?何がだ?」

「いやになんてなりませんよ!」

「え……?ああ、いや違うお前たちの事じゃないよ」

「じゃあ……誰の事ですか?」

「うん?ああ、そうだな。ま、誰かさ」

「えー教えてくださいよ!」

「あーまぁ、いつかな。お前が大人になったらその時に話してやるよ」

俺はそう言うとイヅナの頭を撫でた。

「それじゃ、お前らはこっちな。少し狭くなるけど耐えてくれ」

「安全には変えられませんからね!いいですとも!」

「はっ、お心遣い頂き感謝いたします」

俺は胸を張るイヅナに向かって、頭を深々と下げてみせた。


「で、できました!」

野営の準備を進めていると、ドクダミちゃんが手を上げた。

「おっ早いな。それじゃ……みんなで取り付けよう」

「はい!」

「それじゃ、まずは入り口付近からだ」

そうして俺達は要領よく鈴の設置を始めた。



「終わりですね!」

「終わったなぁ」

「お、終わったねぇ……」

「終わったな……」

俺達はついてすぐに作業を終わらせた。

時刻は昼過ぎ、予定よりもだいぶ早く終わった。

「おなか減った」

イヅナが言った。

「飯抜きで働いた」

レイシーが言った。

「おにゃかぁ……」

「ああ、すまん。すぐ作る」

俺はすぐに料理の準備を始めた。


「あっそれ!」

「でたな、マンナランタージン!」

「マァオンラァな。これやっぱ便利なんだよな」

俺はそう言うと妙な形の鍋の中に食材をポンポン入れた。

「その変な袋なんですか?!」

「ああ、保冷の魔術袋。見たことない?冒険の必需品」

「ほえ~、凍らせとけるんですか?食材を?」

「凍らせるんじゃなくて冷やすんだな」

「ほえ~すごい!」


「食材はもう切ってるんですか?」

「ああ、昨日切っておいた。ちょうど保存庫もあったしそこに入れていた」

「ほえーじゃ、すぐに食べれるんですか?!」

「いや蒸さなきゃ無理だ。まずは火をつける。イヅナ、そこら辺の枝切ってくれ。適当でいい」

「はい!」

「レイシーもついて行ってやってくれ。何かあればすぐに笛を吹け」

「あいよ!」

そういうと二人はセーフゾーンから抜けて行った。

「ドクダミちゃんは料理手伝ってくれる?」

「はい!」

そうして、俺はイヅナ達が戻るまで、ドクダミちゃんと料理の準備を進めた。



「おっ!蓋がことことしてきましたよ!」

マァオンラァタジンを火にかけ、十数分後イヅナが歓喜の声を上げた。

「ごっついええ匂いしますねぇ」

「お、おなか減った……」

「ああ、そうだな意外に早いな」

俺は煙の出る蓋を開けてみた。

そこには、野菜と鶏肉がいい感じに蒸された料理ができていた。

「おお。結構うまくできたな」

「うわー!おいしそう!」

「うおー!100kgでも食べれそうや!」

「おっおー!いい匂い……」

「うん。スパイスがいい感じだな」

俺はそう言うと皿を用意した。

振り返ってみるとすでに三人はフォークを手にして待っていた。

速いな……。

俺はそのスピード感に感心しながら、それぞれの皿に料理を盛り始めた。



「おいしい」

「おいしい」

「おいしい」

「うん。うまくできたな」

「おかわり」

「もうない」

「えー!少ない!」

「鍋自体がそんなに大きくないからな。ほら」

俺はそう言うと荷物の中からパンを取り出して放り投げた。

丸くて小さなロールパン。

個数入れれるから、重宝している旅のお供だ。

「あっこれソースにつけたらおいしいです」

イヅナはもぐもぐパンをかじりながらそう言った。

「私も欲しいです」

「わたしもぉ~」

「ほらよ。ま、パンはいっぱいある」

俺はパンを一つ取り、残りは袋ごとレイシーに渡した。

レイシーは満足げにパンをほおばると言った。

「いや~こんなけ、食べれるんなら冒険も余裕ですね~」

「そうだね!街にいるよりもおいしいかもしれない!」

「う、うん。疲れてるからひとしおだね!」

三人は満足げだった。

「まぁ、満足げなところ悪いけどな……」

俺はパンをかじりながら言った。

「こんだけ飯が食えるのは、拠点に食料があったことと今回が一泊だけだからだ」

俺がそう言うと三人の顔色がすこし曇った。

「もうわかってると思うけど、南部魔界に行く時はポテトと干し肉になると思うから覚悟しとけよ」

「ええ?!まじですか?!」

「まじもまじだ。ちなみに量も減るからな」

「そんな殺生な!」

「食えんよりかはマシだろ。あとは運だな」

「う、運ですか?」

「そうだ。食える魔物が捕れることを祈ろう」

俺がそう言うと三人の顔が一気に暗くなった。

「ま、まぁでも、ほら魔物っておいしいですもんね?」

イヅナが空気を変えようとそう言った。

「南部魔界の魔物はまずい。南部魔界が人気のない理由の一つだ」

「……で、でも、いっぱいいますよね?」

「全くいない。それも人気のない理由の一つ」

三人は絶望していた。

「ま、だから……これから日が暮れるまではデスウサギを探そう。少ない機会を確実にモノにしないとマジで死ぬからな。今の内に練習するぞ」

俺がそう言うと三人は顔を見合わせた。

「はい!絶対にとりましょう!」

そして固い意志を持って返事をした。

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