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奇妙な木

「よし、じゃ……作業に戻ろう」

ひと騒動あったが、俺は仕切りなおしてそう言った。

「はい!」

「それじゃ、まずはだな……倒した木を処理しよう。指示書にはある程度丸太状にして置いておいてくれって書いてる」

「加工するんですか?!」

イヅナが驚いていた。

「いや流石に無理だから、輪切りにするくらいでいいんじゃないか?できれば、枝とかも除去できればいいかもな」

「それならできそうです!任せてください!」

イヅナはそう言うとさっき切り落としたずんずん木に向かっていった。

「ドクダミちゃんはさっきの続きを頼む」

「は、はい」

「それじゃ俺はイヅナを手伝うからレイシーは、草むしり頼む。ゴミ袋は箱の中にあったから使ってくれ」

「了解~」

そうして俺達は着々と作業をこなした。

作業中の三人はそれぞれまじめに黙々と作業をこなしていた。

ここに来るまではどうなることかと思っていたが……杞憂だったな。

作業は順調に進み、木はほぼすべて、輪切りになり、うっそうとしていた敷地内もきれいになり、鈴も魔力で輝いていた。

「よし、じゃ仕上げだな」

俺はそう言うと、鉄の棒を指示書通りの範囲を確保するように四本置いた。

そして四隅の間、その合間にも鉄の棒を1本置いた。

一か所だけは出入り口用に空けて、棒を設置すると次にロープを棒の上下に二本ずつ巻いて行った。

「よし、終わりだ。あとは鈴をこのロープに吊るそう」

俺がそう言うと、三人は各々ドクダミちゃんが魔力を込めた鈴をロープに吊るし始めた。

「あー!これならあれだね!もっと若い色のひも持ってくればよかったね!」

「イヅナちゃん!それいいアイディアだよ!」

「おっ流石、ドクダミちゃん!分かる?!」

「そうやなぁ~。そうやって特色持たせれば誰がやったかもわかりやすいしなぁ~」

「それって、どういう意味?!」

「うん。ほら、ここからはあれやん?ランク上げなあかんのやろ?それならいい仕事したらわかりやすくしといたほうがええかなって思てね」

「レイシーちゃん……天才?!」

「すごい!それはいい発想だよ!」

レイシーがそう言うと、二人は感心していた。

「ああ、実はそう言うのもあるな」

俺は後片付けしながら言った。

「イヅナが言ったようにひもに色付けたり、自分たちのロゴのついたバンダナとかをくくりつけたり、ま、他の冒険者もいろいろやってるな」

「そうなんですね!」

「ああ、そこに気が付くってのはかなりいいセンスしてるな」

「でしょお?私こう見えて頭脳派なんでねぇ!」

「まぁそういうことにしとくか」

俺達は雑談しながらもきびきび働いた。

「次来る時は、ロゴも考えたいねぇ」

レイシーがそう言った。

「あっそうだ!そのロゴって……もしかして、あの地図に書いてたマークのことですか?」

「地図……?ああ、今回の作業のやつ?マークってのはホークアイのやつか?」

「そうです!」

「ああ、そうだPTのマークというか、そう言うのは決めることができる。ま、正式に認定とかされるわけじゃないから自称ってことになるが……申請さえすれば今回みたいに機会があれば使われるし、使ってもいいことになってる」

「使ってもええってことは……。許可ないとダメな感じですかね?」

「そうだな、ま、名前を騙られると厄介だからな。申請があった場合のみ、成果とかにも考慮されるみたいな感じだな」

「じゃ、申請しとかないと目立っても意味ないんですね……」

「形式上はな。どう見てもそのPTの仕業だってわかってたら……ま、向こうも人間だからな。分かってはくれてると思うけどね」

「私達はそう言うのがないからあんなダサいマークが書かれてたんですね?!」

「ああ、ま、申請がなければ基本はそうなる」

「じゃ……考えないとだね……」

「そうだね。これは一大事だよ。帰ったらマストで仕上げよう」

「やな。作戦会議の必要があるねぇ……」

「かわいいのにしよう。それだけじゃなく、私達の名前が何世代も語られ、憧れるような奴がいい!」

「そうやね。気合入れんとね。おねぇちゃん絵うまいから協力要請しとこう」

「だ……だね。私、PTロゴがまとめられてる本探すよ。かぶったりしたら大変だし……」

「決まったね」

「そうやね」

「うん……やれるね」

三人は静かにだが確かに燃えていた。

「モリー様」

「え?うん、何?」

「モリー様。デザインが決まり次第、私達買い物に行きますので……」

「ああ、わかった。PTの事だからな……。財布と荷物は任せろ」

「はい!よろしくお願いします」

「ああ、でも無駄遣いは……ダメだぞ?」

「はい!」



鈴を吊るして、後片付けも終えた。

指示書の最後に書いてあった、チェックシートの項目も全部埋まった。

「うん。これで終わりだな」

「おっ!終わりですか?!」

「ああ、思ったよりも早く終わったな」

「そうですねぇ。ま、これくらい余裕ですね!」

「そうだな。意外にレイシーの手際が良くて助かったよ」

「へへへ、そんな、褒められたら……へへへ」

「ドクダミちゃんは?大丈夫か?」

「は、はい!大丈夫です」

「そうか、なれない作業だから疲れるかと思ったが……魔力切れは結構しんどいだろうから気は使わずに、つらいならそう言うんだぞ」

「は、はい!辛かったら言います!」

「そうだ。遠慮はしないでくれ。頼りにしてるぞ」

ちょうどその時、どこかから笛の音が聞こえた。

「あっ!今の!ホイッスルの音!」

「どうやら、向こうさんも終わったみたいだな」

「ですね!」

「ああ、じゃあ返事頼むぞ、リーダー」

「はい!」

イヅナは嬉しそうに返事をすると、若い駅員からもらったホイッスルを思いっきり吹いた。

しばらく、するとまた遠くの方から笛の音が返ってきた。

「どうやら、出発したみたいだな」

「ですね」

「それじゃあ俺らも次に行くか。そこで飯だな」

「ご飯!」

「待ってました!」

「お、おなか空きました……」

「お前らね。朝あんだけ食っただろ……」



「それじゃ!次の目的地に向かってしゅっぱーつ!」

イヅナの号令と共に、二人が楽器を構えた。

それ、今回もやるのかよ……。

なんて思ってるうちにイヅナが高らかに歌い出した。

今度は二人のコーラス付きだった。

ま、元気なのは……喜ばしいことかな。

俺はため息をついて、荷物を背負った。


そして……何の気も無しに後ろを振り返った。


忘れ物なかったかな?って程度の気持ちだった。

振り返ると、そこには忘れ物とかそういうものは何もなかった。

うん、やはり杞憂だったな。

そう思って、イヅナ達の後ろについて歩き始めた。

の、だが……。

「あれ?」

俺は立ち止まり、再びふり返る。

まぁ、これといって変なところは何もない……。

ただ、何か違和感がある。

俺は目を凝らしてみると……俺の目線の先に、大きく曲がった妙な木があるのに気が付いた。



その木は、体は細いが、地面から大きく曲がって、長く斜めに生えていた。

そうかと思うと、急に地面に対し平行に、まっすぐな箇所があって……そしてまた天に向かってその体を大きく曲げていた。

ジグザグに曲がった、すごく妙な木だった。

「あんなの……あったかな?」

あんな妙な木があればまず気が付くと思うが……。

俺は首を傾げた。

まぁでも……作業に集中してたし、それよりも目立つ木があったからな……。

まぁ気が付かないこともあるか。

なんてことを考えていたら、イヅナが叫んだ。

「モリー様!魔物です!」

その声を聞いて悪寒が走った。

俺はその時……、あの時の事が脳裏に浮かんでいた。

赤いスライムがステラを襲った、あの時だ。

あの時もこういう感じでぼーっとしていて……それで……。

あんなことはもう二度としない……。

そう誓ったはずなのに、俺はまた!この馬鹿が!

俺は全身に神経を通して、イヅナの元に駆け寄った。


イヅナ達は草陰に屈んで隠れていた。

「すまん!大丈夫か?!」

「あっモリー様……あれ見てください!」

俺が合流すると、イヅナはひそひそ声でそう言い、森の出口付近を指さした。

指の先には……紫色をしたでかいウサギがいた。

「おっ、あーデスウサギだ……」

「あれがデスウサギですか?!」

イヅナは驚いているようだった。

「きもっ!」

レイシーが眉をひそめた。

「あ、あんな色なんだぁ……かわいい……」

ドクダミちゃんは目を丸くしていた。

「かわいい?!」

「ドクダミちゃん!さすがに趣味悪いで!」

「そうだよ!確かに目は丸くて出っ歯で何も考えてなさそうな顔だけど……せめてキモカワだよ!」

「そ……そうかなぁ……」

俺はそのやり取りを聞いて安心した。

危険な魔物じゃなくてよかった。

そして、安堵のため息をつくと……深呼吸した。

たるんでるぞモリー、気合を入れなおせ。

命を預かっているんだぞ。

俺は自分の胸に言い聞かせる。

大丈夫だ。

もう惑わない。

俺は自分の心に火が入るのを感じた。

「あいつどうします?危険はないんですよね?」

レイシーが確認してきた。

「ああ、そうだな。筋肉はすごいが逃げることしかしない。雑食だが主食は草だしな」

「で、おいしいと……」

「まぁな、でもデスウサギはとってすぐに捌かないと臭くなるからな」

「それじゃ、あきらめますか?」

「それか、捕ってから戻るいうのはどうです?ここでお昼ご飯でもええでしょ?」

レイシーがそう言った。

いつもなら、俺は賛成するところだ。

デスウサギは魔界に広く分布している。

サンドデスウサギって言うのが南部魔界にもいるほどだ。

ここで捕り方を覚えておくのは良いことだ。

そう、思うのだが……。

戻る?

俺はその単語を聞いて……背後を振り返った。

そこには、先ほどまでいたセーフゾーンが見えた。

そして……もちろんあの木も見えた。

「……いや、念のため先に野営地点に行こう。寝床の安全は早めに確保しておきたい」

「それじゃ……ここは撤退ですね?」

「だな、ま、デスウサギなら探せばすぐに見つかる。チャンスはいくらでもあるさ」

俺がそう言うと、三人は頷いた。

「よし、じゃ……びっくりさせないように行こう」

俺がそう言うと三人は静かに進み始めた。

俺は、その後をついて行った。


もう、後ろを振り返るようなことはしなかっ

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