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モルドの煙草

「それでは、明日、よろしくお願いします」

しこたま食って飲んで、いい時間になったので俺達は拠点まで戻った。

「風邪ひかないようにね~」

「寝坊すんなよ」

「それでは、おやすみなさい」

俺達の部屋の前で、ホークアイの面々と別れの挨拶をし、俺達は部屋に入った。



「おなかいっぱい!」

「も……限界……」

「もう動かれへん!」

三人は部屋に上がるなり、身を放りだし大の字になった。

俺は無防備に寝転がる三人を見てため息をついた。

モルドの言った通りだ。

こいつら観光気分だな?

ここらで一回締めなおさないといけない。

「おい、お前ら。遊びに来たんじゃないんだぞ」

俺がそう言うと、三人はだるそうに体を起こした。

「いいか。明日はもう本番なんだぞ。魔物の出る地に俺達だけで行くんだ。まさかだけどもう忘れたわけじゃないだろうな?奴らの恐ろしさ」

俺がそう言うと三人の顔が少しこわばった。

「うん。たらふく食うのは結構。じゃ次はさっさと寝て明日は全力で行くぞ」

「はい!」

俺がそう言うと三人は元気にそう返した。

ま、大丈夫そうだな。

「わかったなら、ほら、先にシャワー浴びてこい」

「え?そ……そんなぁ……」

俺の言葉を聞いたレイシーがくねくねし始めた。

俺は冷ややかな目でレイシーを見た。

「そりゃあね?私もこの部屋見た時に少しは覚悟しましたけどぉ……。でも、そんな帰るや否やそんなことぉ……」

「何、言ってんだよ」

「え?何って!わかるでしょ?ほら~こんなかわいい女の子と屈強な男が同じ部屋で一晩……ですよ?!そりゃ~ま~少しはそう言うことも……」

「あほなこと言ってないで、さっさとシャワー浴びろ。俺は外でコーヒーでも飲んでるから、上がったら声かけてくれ」

俺はレイシーの妄言をスルーして、部屋から出た。


俺は階段を下りて、職員の使うカフェスペースに来た。

ここにはお茶用の器具があったり、作り置きの紅茶などが保管庫に入ってたりする。

保管庫は、魔力を使い中の物を冷やす構造になっている。

まぁ庶民では、拝む機会もまずないくらいの貴重品だ。

俺は保管庫を開ける。

中にはポット3つ入っていた。

ポット中身を確認すると、紅茶とミルク、そしてコーヒーのようだった。

「運がいいな」

俺は残り一杯分くらいしかないコーヒーを備え付けられている紙コップに注いだ。

俺はコップを持ったまま、上の階に戻った。



俺達の部屋の前の廊下を進むと、外に出られる。

外壁沿いに外を展望できる見張りスペースだ。

結構な高さがあるので、景色がいい。

上から魔界を見れる珍しいスポットでもある。

「どうも。そっちも追い出されましたか」

展望スペースに出ると声をかけられた。

そこにはさっき別れたばかりの、ホークアイの三人がいた。

「ま、ウチは女の子が多いんでね。男の俺は肩身が狭いですよ」

「ははは、僕たちもです。モフルさんには頭が上がりませんから」

俺達は追い出され組で、夜景でも見ながら世間話としゃれこんだ。

と言っても、俺が質問攻めを受けただけだった。


「なんで、あの三人と?」

「アルガートンPTってどうでした?」

「北部魔界で何があったんですか?」

「赤いスライムとの遭遇ってどんな感じだった?」

「その時は何か、今までと違ったことがあったか?」

本当にいろいろ聞かれた。

俺は言える事言えないこときちんと分けて、返答した。

ホークアイの三人はそこそこ納得しているようだった。

「大変でしたね。本当に……」

「に、してもやっぱりあの噂本当なのかな?」

モルドがそう言うと俺達はモルドをみた。

「あの噂って?」

俺はモルドに尋ねた。

「ゲッコーウルフの復活は魔王の復活だって噂だよ」

「なんだそりゃ?」

「そういう奴もいるぜ?話聞いたが結構信ぴょう性があった」

「どんな話なんだ?」

「え?あー、内容は覚えてねぇよ。でもその時はそういうこともあるかって思った。そういう内容だ」

「なるほど。まぁあり得なくはないかもな」

「馬鹿にしてんのかぁ?」

「いやいや、俺はさ、最近いろんなことがありすぎてさ……ここに来るまでにも苦労したんだ」

俺がそう言って黄昏ていると、モルドが懐から煙草を取り出した。

俺はそれを受け取ると、モルドと自分のに火をつけた。

「そんでさ。いろんな人にいろんな話されて思った。この世界ってのは分からんことが多すぎるし、知らないことも多すぎる」

俺は煙草をふかしながら言った。

「だから、案外そういう一見荒唐無稽な話でも真実かもしれない。そう思って可能性を自分の中に持っておくのが重要なんだって思ってさ」

「なるほど……確かに一理ありますね。我々人類は……この世界に対して無知すぎる」

「まだ霧が晴れて100年くらいだっけか?覚えてないけど、それってきっと世界を解明するにはまだまだ足りない」

「そうですね。やっと安定生存の基盤ができた。私から見ても人類はまだそのレベルです。魔界の解明までは程遠い」

「そうさ。生き残るのに必死だったからな」

「と、言うことは……」

クリス君が遠くの方を見ながら言った。

「もしかしたら、今起こっている変化が何かの予兆かもしれません。もしかしたら僕たちは今転換期を迎えているのかも……」

「転換期……」

「今まで、魔物の活性化は何度かありましたが、閉鎖の騒ぎまで行ったのは今回が初めてです。何か……異質な気がします」

「そうだな。ま、十分気を付けよう。人間界でも何があるか分からないんだからな」

俺は透明なキラースズメの事を思い出していた。

自分で言っといてなんだが、俺も実際観光気分だったと思う。

あいつらとここまで来て、うれしかいし……今日の出来事はいい思い出だ、くらいに思える。

今まで魔界に来てこんなに緩んだ気持ちの事はなかった。

あの、アルガートン達といた時でさえ……冒険の前の夜はさすがに緊張していた。

リラックスしている、と、いいかえればよいようにも聞こえるが……。

しかし、今、眼下に広がる真っ暗な魔界を見ていると……、心がざわつき始めた。

何か……ある。

そう思った。



「お互い気を付けよう」

俺は短くそう言った。

「ええ」

ホークが夜空を見上げて言った。

「おう」

モルドは、天井を見ながら。

「はい」

クリス君は廊下に見ながら返事した。

それぞれがそれぞれ別々の方向を見ていたが、みんな同じ予感がしていたに違いない。

そして俺の煙草の灰が暗闇に落ちると、背後から俺を呼ぶ声が聞こえた。

「モリー様~上がりましたよぉ~」

そこにはバスタオル一枚で肌を真っ赤にしたレイシーがいた。

「お前、なんて恰好してんだ!」

「いやぁ~思たよりシャワーが熱くてですね~。涼みに来たというかぁ~」

「恥じらいはないのか」

「あるに決まってるでしょ!乙女ですよ!てっきりモリー様だけやと思ってて……まさか皆さんもご一緒だとは!」

俺はそう言って堂々と立つレイシーを見てあきれていた。

「お前恥ずかしくないだろ」

「恥ずかしいですけど、私は自分の体に自信があるので」

レイシーが意味不明な事を言って胸を張った。

「わかった。うん、戻ろうか」

俺はそう言うとコップに煙草を入れた。

「ちょっと待ってください!もうちょっと涼みたいです!」

レイシーはそう言うと、恥ずかしそうに眼を背けていたクリス君の隣に座った。

「いやぁ、涼しいなぁ!クリス君!」

「そ、そ、そ、そ、そ、そうですね……」

「クリス君も熱いん?!顔真っ赤やで?」

そう言ってにやつきながらレイシーはクリス君の顔を覗いた。

「か、か、か、か、風邪ひきますよ。そ、そ、そ、その戻ったほうが……」

「えー?ええやんもうちょっとだけぇ~」

「クリス君を困らせるんじゃないよ。戻るぞ。それにお前ね。裸で座るんじゃないよ。シャワー浴びたばっかだろ」

俺はそう言うと、レイシーの手を引っ張った。

「ええ~、もう!お堅いんやから!ほんならまた明日ね~」

レイシーは手を振ると俺に引っ張られながら、部屋に戻った。



重厚な鉄製のドアから力強いノックの音が聞こえる。

「おはようございまーす!朝食の用意ができましたよ~!」

扉の向こうから、昨日案内してくれた若い駅員の声が聞こえた。

俺は重い体を起こし、扉に向かった。

「ああ、おはよう」

俺は重い扉を開けて若い駅員に挨拶した。

「あっ!おはようございます。よく眠れましたか?!」

「ああ、おかげさまでな」

「そうですか!それは何よりです!では本日はよろしくお願いいたしますね!」

若い駅員は朝からはつらつとしていた。

俺はというとその勢いに押され気味だった。

俺ってやっぱり中ね……。

嫌な言葉が頭をよぎった。

俺は首を横に振り自分に言い聞かせる。

いやまだ、片足だけだ。まだ若いまだ若い。

そんな俺の姿を見て若い駅員は不思議そうな顔をしていた。

「あの~何かございましたらいつでもお声がけくださいね!あっ、あとお食事の準備はできておりますので!」

「ああ、わかった。ありがとう。すぐに行くよ」

俺がそう言うと、若い駅員はお待ちしておりますと言ってお辞儀し、去っていった。

俺は部屋に戻るとまだ寝ている三馬鹿を起こすことにした。



三馬鹿は寝ていた。

ドクダミちゃんを真ん中に三人寄り添って仲良く眠っていた。

二人に囲まれて、ドクダミちゃんは胸の上で手を組み、安らかな表情をしていた。

「……生きてるよな?」

俺は若干心配になった。

さっきのノックは結構大きかったと思うが、こいつらは全く意に介していない。

まるで何もなかったかのようにぐうすか寝ていた。

俺は恐る恐る三人に近づいてみた。

顔を覗き込んでも寝息が聞こえない。

マジで死んでんじゃねぇか?

俺は意を決して三人をゆすって見た。

「おい、朝だぞ。起きろ」

しかし、三人はびくともしなかった。

「あ、さ、だ!起、き、ろ!」

少し乱暴に揺さぶる、しかし、三人が起きる気配なかった。

「起きろ!遅れるぞ!おーきーろーーー!」

俺は大声を出して、手を馬鹿みたいに叩いた。

しかし努力空しく、しばらく猿みたいに騒いでみたが、まったく起きる気配がなかった。

俺は肩で息をしながら、全身にじんわり滲む汗を感じていた。

それと同時にものすごい無力感に襲われた。


「我、荒波の中にあっても、心は凪のごとく。それすなわち水鏡の境地なり」

昔、田舎に来ていた修行僧がそんなこと言っていた。

当時の俺は何のことやら全く分からなかったが、きっと今のこいつらの事なんだろうなと思った。

「こいつらマジで図太いな」

俺は感心していた。

俺にはもう打つ手がない。

無念だが……ここまできたらもう自然と起きるのを待つしかない。

自然と俺の口から諦めのため息が出た。

いかんな……後ろ向きになるな。

俺は自分に言い聞かせた。

今日は勝負の日じゃないか。

前向きに、建設的に行こう。

こうなったのは仕方ない。

なら次だ。

俺は、これからは、常にできることをするべきだ。

今できる最善を……。

俺は心に言い聞かせた。

「うん。しょうがない……なら、先に朝飯食って、準備でも……」

「ごはん?!」

俺が決意を口にした時、イヅナが目を覚ました。

「うっ、飯!」

それにつられてレイシーが目を覚ました。

「ショウエッセン!」

ドクダミちゃんがわけわからないこと言いながら目を覚ました。

目を覚ましてすぐに、三人はまだねむそうな目を俺の方に向けた。

「ああ、飯だ。起きろ」

俺が呆れながら言うと、三人はむくりと起き上がった。

「おなか減ったー!」

三人は元気に声をそろえてそう言った。



朝食はシンプルにパンとハムエッグだった。

三人は、おいしいおいしい言いながらもりもり食べていた。

元気なのは何よりだ。

ホークアイの面々も隣で食べていたがなんだかずっと笑われている気がした。

朝食を食い終わると、部屋に戻……ろうとしたが締め出しをくらった。

「身支度しますんで!終わるまで侵入禁止です!」

今まで一緒にいて今更何を……と思ったが、ま、そう言う事ならそう言うことで納得することにした。

「布団は畳んでおいてくれ。そうしたら回収してくれるらしいから。頼んだぜ」

俺はそう言うと、カフェエリアに戻り、コーヒーを持って展望エリアに行った。

そこには、やはりホークアイの三人がいた。

「おはようございます。やはりお宅もですか」

「ええ、俺もです。みんな今日はよろしく」

俺は挨拶をすると、この後の作業ルートなどについて軽くミーティングをした。



「準備できました!」

レイシーに呼ばれたので俺は部屋に戻った。

部屋には臨戦態勢のイヅナと、まだボーとしているドクダミちゃんがいた。

「イヅナお前……その服」

「はい!勝負服です!」

そう言ったイヅナはあの日、デートの時の赤と黒のドレスを着ていた。

「お前ね。それ動きにくくないの?っていうか、汚れるぞせっかくなんだから別のにしとけよ」

「大丈夫です!動きやすいように作ってもらってるので!それに……着たいんです。今回だけでも。ダメですか?」

俺はこめかみを掻いて思案した。

「ま、動けるならいいさ。汚れたり破けても……泣くなよ」

「はい!」

イヅナは嬉しそうに返事した。

「それじゃ、先に下に行っといてくれ。俺も着替えたらすぐに行く」

俺がそう言うと、三人は「はい」と返事して部屋を後にした。

俺は顔を洗って冒険用の服に着替えると、マッチを擦った。

「さて……いよいよだ」

俺は掌の上の火を見ながら、深呼吸した。

「行くぞ、モリー」

俺は大きく息を吸い込むと、一息に火を飲み込んだ。



相棒である大荷物を背負う。

ま、今回は一泊二日だから、俺にとっては大荷物って程でもないが……。

でも、なんだか……それにしては重いように思えた。

その差重分は俺の心配分なのか、意気込み分なのか……。

なんにしても、この重みで俺はさらに気持ちが入った。

道具は正直だ。

人間みたいに整理できない気持ちも何もない。

仕事をするならその道具の状態は自分以上に自分を表す時があると思う。

俺はその重みを感じながら、冷たい扉を開けた。



拠点から出ると、馬車が用意されていた。

「今日は荷物が多いですね!」

昨日と同様に若い駅員が馬に乗って言った。

見ると荷台にはもうホークアイの面々含め全員が搭乗を済ませていた。

「おっ待たせたかな?申し訳ない」

俺は頭を下げて荷台に飛び乗った。

「今来たところですよ」

ホークが俺を見てそう言った。

「おっさん、遅いよ待ちくたびれたぜ」

モルドが肘をつきながら言った。

「おい!」

「なんだよホーク。おっさんに気使ってなんになんだよ!実際迷惑だしよ」

「そう言うことじゃなくてだな……それぞれ事情ってもんがだなぁ……」

「あーうっせーうっせー!まーじめ君はこれだからよー!」

ホークとモルドがいちゃいちゃするのを見て、みんな笑っていた。

「何笑ってんだよ!」

「いや、すまない。仲がいいんだなってさ」

「よくなんてねーよ!こんな奴!」

モルドはそう言うとそっぽを向いた。

「またまた~、恥ずかしがらなくていいんだよぉ~」

モフルさんがにこやかにそう言った。

「けっ!こんな奴、ぐちぐちぐちぐちうるせーだけだよ」

「そんなこといってぇ~、小さい時からホークホークって言ってたじゃない」

「言ってねぇよ」

「大好きな癖にぃ~」

「好きなわけあるか!こんな堅物!」

そのやり取りを見ていると、こつらもたいがい仲がいいなって思った。

「みなさーん!仲睦まじいのは良いのですが……そろそろ出発しますよ!」

若い駅員は少し困ったような感じでそう言った。

「ああ、すまない。出発してくれ」

「了解です!」

若い駅員は敬礼し、馬に鞭を入れた。

ごとごとと馬車が動き出した。


「そういや、今日も送迎してくれるのか?親切だな」

「ええ、まぁ途中までですけど。配布した地図の地点まではお送りします」

若い駅員は声を張ってそう言った。

「悪いな!」

「いいえ、仕事ですから!」

若い駅員は青空に向かって笑って言った。

俺はその横顔を見て、何だかさみしい気持ちにもなった。

あのまぶしさ……もう俺には無い……。

うらやましい、そう思う気持ちもあるが……。

俺はモフルさんと楽しくおしゃべりする三人を見た。

あの三人にもやはり若さゆえの輝きがあった。

うらやましい……が、失った今だからできることもある。

俺は、ただそれをするだけだ。

「固いな、おっさん」

俺がまじめな顔をしているとモルドがそう言った。

「何?緊張してんの?こんなのどかなんだ、何も出ねぇよ」

モルドはそう言うと懐から煙草を一本取り出した。

俺はそれを見て、反射的にマッチを擦った。

「おっ気が利くね」

モルドは俺から火を受け取ると、懐からもう一本煙草を取り出し俺に差し出した。

「すまないな。に、しても煙草なんて高級品よく持ってるな」

「うん?ああ、家は煙草も作ってるからな。今の時代、椅子作ってても儲かんねーからな」

「そうなのか?道理でなんか独特な味がすると思ったよ」

「なに?おっさんよく吸うの?」

「下宿の大家さんが好きでね。よく付き合わされるんだ」

「ほー金持ちだねぇ。いいとこ住んでるんだ」

「いや、ただのボロアパートだよ」

「ふーん。その大家何者だ?」

「うん?そうだな……。そういや、よくは知らないな」

「なんだよ、よく話すんじゃねぇのかよ」

モルドは魔の抜けた俺の返事に失笑した。

「そうだな。俺って抜けてるよなぁ……」

「しっかりしてくれよおっさん。言っとくけど、あんたが死にかけても俺は助けねーぞ」

「はは、気を付けるよ。お前も気を付けろよ」

「俺は最強だから大丈夫だよ。もし助けられることがあるんなら、これやるよ」

モルドはそう言うと懐から高級そうな小さなシガーケースを出した。

「特別製か?」

俺がそう言うとモルドは悪い顔しながら耳打ちしてきた。

「一本、金貨一枚分だ」

「まじかよ。何が入ってんだ?」

「違法なもんじゃねぇけどよ。ま、グレーな奴さ」

モルドはそう言うと、悪い顔で笑った。

「ま、頑張ったら帰りにでも一緒に吸うか?おっさん、味わかりそうだし。こいつみたいな堅物で味音痴と吸っても面白味ねーからな」

「おい。聞こえてるぞ」

「聞かせたんだよ。まじめ君」

モルドはそう言うとホークに向かって歯を見せた。

「お前はもう少し、まじめになるべきだ」

「お前はもう少し、力抜くべきなんだよ」

「お前は抜きすぎだ!」

「お前は固すぎなんだよ。ま、そのまじめは死んでも治らねーだろうけどな」

モルドはそう言うと、機嫌がよさそうに笑った。


「いやぁ、にしても……いい天気だな」

モルドは晴れ渡った青空を見上げて言った。

「正直、しょっぱい仕事で気分乗らなかったけど、ま、来てみたら案外よかったかもな」

「ああ、そうだな」

ホークも空を見てそう言った。

「だねぇ」

「ええ、いい天気ですね」

ホークアイの面々は空を見上げた。

俺もそれにつられて青空を見ながら、煙草をふかした。

「いいことありそうですね!」

「ああ、そうだな」

「風……気持ちいいですねぇ……」

「そうだなぁ」

「煙草……いい匂い……」

「あっすまない、煙……」

「いいえ、大丈夫です。私好きです。お父さんがよく吸うので」

「そうか」

俺達は青空を見ながら、何だか気が抜けた感じのやり取りをした。


それほど、今日の魔界の空は、吸い込まれそうなくらい青かった。

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