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万の異名を持つ英雄~追放され、見捨てられた冒険者は、世界を救う剣士になる~  作者: 陽山純樹
第二章

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少数精鋭

 俺達が――というのは、それこそ一騎当千の力を持つ人間であるため、目をつけたというわけか。


「先手を打つにしても、即座に動ける部隊は少数だろ?」


 ギルジアはそう問い掛けると、騎士エルマは首肯した。


「はい、全体の一割ほどです」

「ふむ……」


 ここでギルジアは口元に手を当て考え込む。何か考えがあるのだろうか?

 ちなみに俺については一切ない。というより、軍略という点については二千年の修行を経てもほとんどわからないからな。俺はあくまで自分の体を動かして戦う、兵士みたいな存在だ。


 よって、俺から言えることは一つしかない。


「……エルディアト王国に脅威が迫っている以上、俺はどんな形でも戦う」


 その言葉にエルマは俺へ視線を向ける。


「国のことを信頼しているから、どんな命令でも従うつもりだ」

「ありがとうございます」

「どんな、とまできたか」


 ギルジアが言うと、俺は小さく肩をすくめた。


「それくらいしか、俺にできることはないからな」

「謙遜だな。それで十分すぎるだろうに」


 苦笑しつつギルジアは言うと、俺へ向き直り改めて口を開いた。


「なあ、一つ聞きたいんだが」

「ああ、構わないけど……」

「純粋に、尋ねたい。仮に単独で北にいる魔族や魔物を相手にしろと言ったら、やるか?」

「ちょ、ちょっと!?」


 あまりの言動にセレンが抗議の声を上げようとする。だが俺はそれを手で制し、


「……やれと言われれば。でも、果たせるかどうかはわからないぞ」

「まあそうだよな……騎士エルマ、敵の戦力についてはどの程度がわかっているのか? 魔物や魔族の詳細は?」

「現在、急ピッチで調べています。気取られないように遠見の魔法を用いており、魔族ブルーの協力によりある程度は解析していますが……」

「その情報が何より重要だな」

「でも、ブルーが知っていたとしても、強くなっている可能性はあるんじゃないか?」


 俺の問いにギルジアは神妙に頷き、


「それはそうだな……遠見の魔法でその辺り、観測は難しいか?」

「これも魔族ブルーの提供技術により、概算ではありますが」

「なるほど……これはいよいよ、やるべきかもしれないな」

「俺が単独で?」

「さすがにそちらに全てを任せるつもりはない……俺も付き合うぞ」

「話を聞く限り、俺とギルジアだけ?」

「魔王との戦いに対し、エルディアト王国の戦力については温存しておくべきだとは思うしなあ」

「正直、俺達だけで勝てるほど甘くないと思うんだが」


 と、その発言に対しギルジアは笑みを浮かべた。


「それはどうかな?」

「え?」

「敵の戦力次第だが、もし俺が想定しているくらいの規模であれば、勝算は十分あると思うぞ。とはいえ、だ。ここで最大の問題は魔物や魔族を取り逃がすことだ。それを封じるためにどうにか試行錯誤する必要性はある」

「……敵の動きを縫い止めるため、結界魔法を行使することはできます」


 と、エルマから口添えがあった。


「元々、王都周辺については魔力の集積点……つまり霊脈ですね。その位置についてもおおよそ把握しています。遠隔操作により、霊脈を用いて相手を隔離することは不可能ではありません」

「さすがエルディアト王国だな……ただ、長時間拘束しておけるわけではなさそうだな?」

「仰るとおりです。結界で逃げ道を塞ぐことは可能ですが、内側から破壊はできます。いくら霊脈を利用した結界でも、魔族が魔法を撃ち込み続ければ破壊されてしまいます」

「つまり逆を言えば、結界を壊されないよう立ち回ればいいわけだ」

「……本当に、俺達だけでやるのか?」


 こちらの疑問にギルジアはなおも笑みを見せる。


「さすがに二人で、というわけではない。そうだな……選りすぐりの騎士とか勇者とかを引き連れて行こう。そもそも大部隊で動けば敵に気づかれる。この戦いは基本的に少数精鋭でなければ成立しない」

「それはそうかもしれないが……」


 危険なのは間違いない。ただ、魔王との決戦に際し、可能な限りエルディアト王国の負担を減らすには、そうした方法しかない。


「相手に気づかれないよう、密かに山へ近づく。騎士エルマ、結界魔法はこの王都からでも使えるのか?」

「可能です。霊脈の真下にいますから、結界についてもある程度の強度は確保できるかと」

「向こうとしては、その魔力を利用して魔物とかを作っているのかもしれんが、墓穴を掘った形だな」

「作戦とは、こう?」


 ここでセレンが小さく手を挙げる。


「少数精鋭で敵部隊に近づいて、遠方へ連絡できる魔法か何かで合図を送る。そして結界で敵の退路を塞ぎ、私達が敵を倒す」

「そんなところだ」

「……本当に、できると?」

「どのみち、王都の喉元まで接近されてしまったんだ。こちらが何かしらアクションを起こした時点で、敵は動き方を変えるだろう。気取られていないと考えている今しか、効率よく倒せる方法はない……そしてその手法が、可能だと俺は考えている」


 ギルジアとしては、何か確信めいた考えらしいが……俺やセレン、騎士エルマもまた半信半疑といった態度ではあったのだが、ギルジアは構わず告げた。


「ともあれ、戦力については少数にしても、最大限集めるべきだな……騎士エルマ、人選についてはどうする?」

「人数の多寡にもよりますが……敵に見つからないように、かつ素早く動けることも必須条件ですね。人数としては――」


 そこからエルマとギルジアが話を行う。作戦内容について俺が口を挟むことはなく……やがて方針が決まる。

 ひとまず魔族ブルーの分析結果待ちということにはなかったが、場合によってはギルジアの作戦を行うと。俺はそれで構わないと思ったし、セレンも驚いてはいたが作戦を実行するのであれば全力を尽くすというスタンスだ。


 もちろん作戦を提案したギルジアもまたやる気であり……ひとまず、作戦をやるかどうかわからないにしろ人選だけは行うということで、騎士エルマは同意した。

 ……これはある意味、前哨戦であり俺達が魔王へ挑む資格があるのかを確かめることができそうだ。やり方は無茶苦茶だが……俺としては、このくらい乗り越えれないと魔王と戦えないような気さえしてくる。


 果たしてこの戦い、どう転ぶのか……なおも話し合いが続く中、俺はただ激論を交わすギルジア達を眺め続けるのだった。


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