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再びダンジョンへ

 町へ戻り、冒険者ギルドに寄って俺を追い込んだパーティーのリーダーを探したのだが……どうやらダンジョンから出た後、町を後にしたようだった。ギルドにいた人の話によると、とある場所へ行ったらしい。

 追いかけて文句を言ってもいいんだけど……どうやら彼らはダンジョン探索以外に目的があるようで、その内容的にとりあえず放置しても新たな被害者は出なさそうだったので、彼らのことはひとまず横に置くことにした。


 というわけで宿へ戻り、体を休めることに。眠る前、今後の行動方針を決める。色々とやりたいことはある。その中には俺を利用したリーダーに色々もの申すことも一つだが……それよりも先に、やっておこうと思うことが。


「ま、ひとまずこれを優先でいいかな」


 と、結論付けて寝ることに。力を手に入れて……少なからずワクワクしている自分がいた。






 翌朝、店が開き始めた段階で俺は荷物の整理を行った。リュックのような大掛かりな装備の必要性もなくなったので、いらないものをガンガン処分する。所持していた書物なども全て古本屋に売り払った。どれもこれも二束三文にしかならなかったけど。

 そして持っていたお金でウエストポーチを購入する。ここに自分用の携帯食料とか、薬とかを入れておく。ダンジョンに長時間入っても問題ないようにはしておく……昨日、帰還する時魔物を瞬殺できたことを考えれば、必要性はあまりないかもしれないけど、念のためだ。


 で、何をするかというと……もう一度ダンジョンへ潜る。自分の実力を再確認する意味合いもあったし、何よりお宝にも興味があるためだ。

 そしてダンジョン奥の悪魔を倒す……あそこには次元の悪魔以外にも悪魔がいる。ただしそれら全てはダンジョン最奥の悪魔の眷属だと調査により判明している。その場合、主となる個体を倒せば、眷属達は消滅する形になる。


 あのダンジョンの中には次元の悪魔と同等に厄介な個体がいるため、俺みたいな犠牲者を減らすには総大将を倒した方が早いというわけだ……もし次元を操る個体が他にいたならさらに修行を、と言えなくもないけど、調査によると次元の悪魔はあれ一体だけ……本当にそうかは不明だけど、俺は運が良かっただけだし、被害を抑えるためにはさっさと倒すに限る。

 というわけで、目的を携えダンジョンへ向かう……到着したのは昼頃。正直探索に入るにしては遅いくらいなのだが、俺は構わず洞窟の中へ侵入した。


 周囲の気配を探りながら、俺は突き進んでいく……その道中で、魔物の死体を発見した。


「先客がいるのか」


 魔物には二種類いる。魔力の影響を受けて動物などが魔物化するパターンと、魔王を始めとした魔族が生み出した魔物。俺が遭遇した次元の悪魔は眷属なので後者である。大きな違いは、前者は殺しても肉体が残る。後者の場合は塵となる。

 で、このダンジョンには――というか、魔族がいるダンジョンには両方の魔物が存在する。魔族が防衛するために魔物を生み出すのはもちろん、魔族の魔力に吸い寄せられて外から魔物がやってくるのだ。そういう個体を誰かが倒したことになる。


 たぶん朝方に入り込んで、探索している……鉢合わせになる可能性もゼロではないな。それならそれで構わないけど。

 俺は魔物の死体を横目に見ながら先へ進むことにする。生み出した明かりは洞窟のほんのわずかしか照らすことはなく、おどろおどろしい雰囲気も垣間見られるのだが……以前の俺なら尻込みしていただろう。でも今は違う。


 ただいきなり魔物が現れたらビックリするかもしれない……などと考えつつ進んでいた時、俺は立ち止まった。


「……音?」


 一瞬だが、甲高い音が聞こえた。それは非常に遠く、一瞬気のせいかと思ったのだが……キィン、キィンと音が聞こえてきた。間違いない。これは――


「魔物を倒した人間か」


 先へ進んだところで、交戦しているらしい。加勢に向かうかどうかだけど……様子だけでも見てみることにするか。

 俺は音のする方向へと足を向ける。ひょっとすると進む間に決着がついてしまう可能性もあるけれど……やがてズシン、と音が響いた。戦っている相手は、どうやら巨体らしい。


 強化した足を活かして俺は急ぎ現場へ向かうと……そこに、大きなゴーレムと戦う女性剣士の姿があった。

 まず注目したのはゴーレム。俺の身長を倍する体格を持ち、なおかつ放たれた拳の動きも鋭い。たぶんこの洞窟を守るガーディアン……俺達は偶然遭遇しなかったが、彼女は運が悪いことに鉢合わせになったのだろう。色は茶褐色で、頭部には赤い一つ目が存在する。それは女性剣士を捕捉し、決して視線から離そうとしない。


 対する女性剣士は……顔はよく見えないが髪型が少し特徴的。金髪を顔の左右に束ねて肩に触れるくらいの長さで垂らしている。冒険者家業をやっていてあまり見ない髪型だな。

 装備は……簡素な布製のマントで羽織っており、たなびくと革製の鎧が見えた。さらに言えば腰に二本の剣を差している。ただ今は右手に一本持っているだけなので、二刀流ではなさそう。予備とかそういう意味合いかな?


 うーん、剣を除けばこのダンジョンへ入り込むにしてはあまりに軽装だと思うんだが……ここにいる悪魔は、非常にやっかいだ。魔族が生んだ存在とはいえ、その実力は高位の魔族にも劣らない……らしい。その情報はギルドで少し調べればすぐにわかることだし……腕に覚えがあって、ここに踏み込んだ? にしても、仲間くらいは連れていてもおかしくないと思うんだが……俺も人のことは言えないが。


 そして戦況だが、まずゴーレムに刃が通っていない。女性が所持する剣は単なる鉄製らしく、斬撃を受けてもゴーレムはほとんどダメージを負っていない。かといって接近できるほど相手はのろくない。

 だが女性剣士は俊敏で敵の攻撃をかわし続けている。そればかりか、疲労などないといった感じで動きが衰えることもない。


 うーん、攻めあぐねているというより、ゴーレムの実力を推し量っているような雰囲気だな。たぶん勢いよく踏み込んで倒せるだけの力量はあるんだろう。でもそれをしないのは、ゴーレムを怪我なく倒すために注意を払っているということか?

 そんな推測を行いもう少し近づこうかと思った時、俺は地面に転がっていた小石を足で蹴っ飛ばしてしまった。それによりコロコロと洞窟内に音がする。


 それにより、女性剣士が一瞬こちらを見た。暗がりで見えにくかったが、新手を警戒しているというより興味本位で確認するような視線だった。

 人間が現れたことで、彼女の目に驚くのような色合いが宿る――ただそれは明確な隙となった。ゴーレムが間隙を縫うように狙いを定め、拳を振りかざし女性剣士へと放った。


 彼女もそれはどうやら感じていたし、回避はできそうな雰囲気だったが……俺は体が勝手に動き出した。まず腰から剣を抜き放つ。

 そしてゴーレムの拳が女性剣士へ当たりそうになる――直前、俺の剣が一閃された。剣が空を切った瞬間、魔力が形となって三日月のような形の刃となる。


 直接攻撃ではなく、遠距離攻撃。名をつけるとすれば『飛剣一閃』かな。それが真っ直ぐゴーレムの腕に直撃し、肘から先を両断した。

 ゴーレムの動きが止まる。突然腕が切り飛ばされ対応を決めあぐねたのだ。たぶんコイツは主人から命令を受諾し、その通りに動くタイプ。敵に近づいて攻撃しろとか、遠距離から攻撃してきた人間に対しては、こう応じろとか――そういう命令である。で、俺が腕を飛ばしたことで命令外の対応に迫られた。フリーズしたというわけだ。


 ならば、その隙を逃すことなく……! 再び魔力の刃を放つ。狙いは頭部。そこに命令などを司る魔力源があり――直撃、粉砕した。


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― 新着の感想 ―
[一言] 追放物に珍しいザマァ回が無いのね。
2021/02/11 13:07 退会済み
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