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万の異名を持つ英雄~追放され、見捨てられた冒険者は、世界を救う剣士になる~  作者: 陽山純樹
第三章

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決戦の時

 魔王がいる場所へ通じる道に魔物はおらず、どこからか出現するということもなかったため、俺達はあっさりと扉の前まで到達。

 俺は剣に力を込めて扉へ一閃。するとあっさりと斬ることができて……人が通れるくらいの空洞ができた。

 そして俺とセレンは部屋へと入る――そこは玉座のある広間。魔法の明かりによって昼間のように照らされたその場所に、俺達が目指していた存在がいた。


「……まさしく、電光石火の奇襲だな」


 魔王――時を巻き戻す前、姿を確認した魔王が同じ姿で立っていた。

 玉座から離れ、禍々しい闇の剣を手にした臨戦態勢となって俺達と対峙する……こちらは目を凝らし、魔王を観察。魔力は……やはり魔王の島で遭遇した時と比べ明らかに少ない。


 とはいえ、同胞である魔族を取り込んでいるのは間違いなく、底冷えするような魔力を抱えている……そんな魔王は、俺達の奇襲について論評を始める。


「おそらく、こちらが用意した奇襲部隊から得た情報をたぐり寄せて、ここに辿り着いた……こちらの本拠地が知れ渡っていた以上、ロクに調べもしないはずだと高をくくっていたが、見事ここへ到達したか」

「お前が、魔王でいいんだな?」


 俺は問い掛ける。さすがに見覚えがあって普通に会話をするのは怪しまれる可能性があるため、そう口を開いた。


「ああ、そうだ」


 そして魔王の返答は明瞭なものだった。


「自己紹介などは必要なさそうだな」

「ずいぶんと冷静だな」

「そう見えるか? 正直なところ、身の内に湧いた激情を抑えているくらいだが」

「……目論見が外れただけではなくここまで肉薄されたんだ。怒らない方がおかしいだろうな」


 俺は剣を構える。背後にいるセレンは動かないが……もし俺が苦境に立たされたら援護に入るかもしれない。

 あるいは、背後から魔物が来るかもしれないのでその警戒をするか……魔王が一歩俺達へ歩み寄る。それに対しこちらもまた一歩前進する。


「ここで、全てを終わらせる」


 俺の言葉に、魔王は「いいだろう」と応じ、


「この世界がどちらのものなのか――それを、今ここで決めよう」


 ――魔王が、動く。それに対し俺は魔力を高め、真正面から迎え撃った。


 そして剣が同時に放たれ、中間地点で激突する――その衝撃は全身を震撼させるほどであり、それと共に耐えることができたため……いける、と内心で呟く。


「ほう、ここまで来た以上は相応の使い手であるとわかっていたが」


 刃が触れ合い、拮抗する状況で魔王は告げる。


「それほどの力、こちらに悟られぬようここまで隠していたか……いや、装備や見た目の特徴から考えると、決闘で派手に勝利した人間か」


 やはり、情報は漏れている……が、核心部分については秘匿されている。情報戦においても不利になってはいない。


「あの時見せた力も全力ではなかったと」

「なら、味わってみるか?」


 俺は魔力を高める。これまでの修行で……可能な限り得た魔王に対する情報を基に構築した技。魔王に対し有効な剣――これが通用しなければ、魔王と戦えるだけで勝利することはできない。

 だが、今の俺ならば――剣を切り返す。魔王は一度距離を置き、対する俺は足を前に出した。


「あくまで攻めるか」


 魔王は受ける構えを示した。そこで俺はさらに魔力を高める……だが、まだ全力ではない。ギリギリまで隠し通す……そして俺は剣戟を放つが、それを魔王はあっさりと弾き飛ばす。


「魔王という存在に挑むだけの力はあるかもしれん……が、それはあくまで挑めるだけだ。よもや倒せるなどと――」

「そこは修行していて不安だったが」


 魔王の言葉を遮るように、俺は返答する。


「やれるだけのことはやった……あとは、俺なら討てると信じるだけだ」

「面白い、やってみろ」


 魔王は告げながらさらに放たれた俺の剣を防ぐ。守勢に回っているが、その気になれば主導権を取り返すことはできるはずだ。

 俺はここで今しかないと考える。魔王は警戒しているがあくまでこちらを見定めるような雰囲気だ。ならば一撃決められる可能性はある。場合によっては傷を負わせたのを突破口にして決着をつけられるかもしれない――


「はああっ!」


 なおも放たれる斬撃。だが魔王はそれを平然と返しながら……反撃の機を窺っている様子。

 力を出せば一気に状況は変化するが……いや、おそらく本気を出す必要などない、と考えているのかもしれない。力の差を思い知らせ、絶望的な状況を作り出して……俺だけでなく、この島を訪れた者達に思い知らせようとしているのかもしれない。


 その程度の力では――到底魔王には勝てないぞ、と。


 だが、これならどうか……さらに放った剣が弾かれる。だが、魔王の動き方は理解できた。ここで、一気に仕掛ける。

 さらに魔王へ肉薄する。強引過ぎるやり方だが、魔王はどうやらそれを「攻撃が通用しない故の、無茶」と考えたらしい。これまで防御に重きを置いていた剣の動きが変わった。こちらの攻撃をいなして反撃しようとしている。


 ここだ――俺は確信し、魔力を解放。膨大な力を目の当たりにした魔王は……その動きが、一瞬鈍った。


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