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万の異名を持つ英雄~追放され、見捨てられた冒険者は、世界を救う剣士になる~  作者: 陽山純樹
第三章

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目指す場所

 城の前にいる魔物達は、人間の姿を見て容赦なく襲い掛かってくる……が、俺達はそれを一蹴しながら城へと突き進む。

 ただ、ここで一つ変化が。城の入口が開け放たれると、さらなる魔物が出現した。


「数だけは多いな……!」

「アシル!」


 そこでセレンが叫んだ。こちらが首を向けると彼女は、


「ここは私達が」


 ……それは、セレンやギルジアといった面々で対処するという意味合いだった。


「まだアシルは力を隠していた方がいい」

「切り札はまだ見せない、というわけか」

「俺も同意だ」


 と、ギルジアが俺より前に出ると発言した。


「多数の魔物……こちらを寄せ付けないという意味合い以外に、威力偵察の意味もあるんだろ」

「こちらの戦力分析をするってことか……」

「その通り。よって、ここは俺達がなんとかする。城の入口までは、運んでみせるぞ」


 言うと、ギルジアは魔力を発した。シェノンの助力を受けつつ、彼は剣を振り魔物を吹き飛ばした。

 斬撃の余波ですら、魔物に傷を付けるだけの威力があった。その彼が先頭に立ってさらに突き進む。一振り一振りによって敵が確実に消えていく。するとそれに呼応するように、


「そっちだけに美味しいところはやれないな!」


 と、声を上げながら前に出たのはヴィオンだった。続けざまにカイムもまた前に出ると、それぞれの剣が炸裂し、魔物を駆逐していく。


 その勢いによってギルジアもまた呼応。相乗効果をもたらし、魔物の数が目に見えて減っていく……その間に俺は前進する。自分の周囲にいる敵は最低限の力によって応戦。セレンが補助する形で戦い、城へ近づいていく。

 そうこうする内に、さらなる魔物が出現し俺達へ襲い掛かってくるが……ギルジア達が文字通り奮戦した。迫る敵をなぎ倒しながら、さらに前へと進んでいく。その勢いは確実に魔物が出現するよりも上であり、


「もうすぐだ!」


 俺は声を張り上げる。直後、ギルジア達の撃破ペースが一層増した。追随するヴィオン達も同様であり……そして俺達は、とうとう城の前へと辿り着いた。

 とはいえ魔物は相変わらず出現し続けている。なおかつ、倒しきれなかった魔物達も道に残っている。


「さて、それじゃあ俺達はここで退路の確保だな」


 と、ヴィオンが俺へ告げた。


「カイム、そっちも手伝え」

「はい」

「……というわけで、残っている魔物はなんとかする」

「大丈夫なのか?」


 俺が問い掛けるとヴィオンもカイムも、小さく笑みを浮かべた。


「心配しなくていいさ……魔王と戦うよりもずっと楽だ。後は任せたぞ!」


 ヴィオンが言った直後、俺は城の中へ入る。残る面々は俺とセレン、そしてギルジアとシェノンの四人。

 エントランスは魔法の明かりによって視界の確保はできている。そして、真正面にある扉……その奥から、明らかに異質な気配があった。


「魔王がいるのはあの扉の奥だな」

「馬鹿正直に開いてくれるとは思えないけど」


 扉は閉め切られている。と、ここでエントランスに魔物が集まってくる。


「ここで立ち往生していたらまずいな」

「……俺が扉を破壊して」

「いや、まだ駄目だ」


 と、ギルジアが言った直後、魔物達が一斉に襲い掛かってきた。


「その力はまだ見せないでくれ……ここは俺一人で十分だ!」


 剣が一際輝き、ギルジアの体躯に魔力がまとわりついた――次の瞬間、彼の剣戟によって一度に大量の魔物が、一刀の下に切り伏せられた。

 彼が握りしめる剣が一瞬だけ光によって延長され、文字通り光の刃で魔物を両断した……しかしなおもやってくる魔物。だが、迫るより前にギルジアは動いた。


「そらっ……!」


 声と共に彼は剣を掲げ振り下ろす……その直後、光が一瞬で伸びて扉に光の刃が直撃した。魔法などが掛かっていればギルジアの剣でも……といったところだが、扉はあっけなく刃によって破壊される。ド派手な音を立てて斬られた部分が床へと倒れた。


「やっぱりな……防備の準備はできていない」

「……どういうことだ?」


 ギルジアは何か確信を持って……扉が破壊できると悟って攻撃したみたいだが、


「何、単純な話だ。この場所は絶対に見つからない……魔王はそういう自信を持っていたはずだ。なおかつ、ここへ移動してきたのもそれほど前じゃないだろう。城は形だけはちゃんとしているが、魔法などによって防備まで完璧にする余裕がなかった、というわけだ」

「ああ、そういうことか……」

「というわけで、俺はここまでだな。後は君次第だ」


 ギルジアが言う。扉が破壊された奥の通路は、魔物がいない。少し先にまたも扉があって、その先から魔力が漂ってくる。あの奥が、間違いなく本命だ。


「俺みたいに無茶をせず、必要最小限の力で扉を破壊して魔王へ挑め。最後の最後まで情報は秘匿しろ」


 その言葉に俺は頷き……セレンへ目を向ける。


「セレン、どうする? 俺と共に行くか?」

「……私は」


 恐怖はあるはず……だが、彼女は力強い瞳を見せた。


「アシルと共に、進むよ」

「わかった……進もう」

「うん」


 俺とセレンは走り出す。その間にも魔物が押し寄せ……ギルジアがそれを一蹴する。

 そして破壊された扉を踏み越えて魔王のいる場所へ……決戦の時は、すぐそこだった。



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