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万の異名を持つ英雄~追放され、見捨てられた冒険者は、世界を救う剣士になる~  作者: 陽山純樹
第三章

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魔王の下へ

 俺達が乗る馬車は――レドとジャックのいた山岳地帯に近づいていく。転移には、魔族が拠点としていた場所へ赴くらしい。

 これについてはシェノンから説明があった。魔王の痕跡が残っている場所……その縁によって転移を確実にする、という意味合いがあるとのこと。


 やがて俺達は山へ入り、魔族が潜んでいた場所へ到達した。そこには既に複数の魔法使いと、天幕が張られていた……たぶん、ここで色々と準備をしていたのだろう。


「さて、野営できる状況ではあるから休むことはできるが」


 と、ギルジアが発言しつつ俺へ視線を移す。


「その必要はさすがにないか」

「そうだな……早速、魔王の潜伏する場所へ移動しよう」

「転移したら時間との勝負だ。さすがに魔王がいる居城の中、とかは無理だがそれに近い場所へ転移するようになっている。周囲に気配がない場所を狙って転移する仕掛けにしたみたいだが、敵の拠点である以上はリスクをゼロにはできない。


「ああ、わかってる……先陣は俺が切る。みんなはついてくる形で頼む」


 俺の言葉にセレンやカイム達……そればかりではなく、ギルジアやエルマでさえ頷いた。全員が、俺の指示の下に動く……それは俺から提案したわけではなく、俺が魔王を倒せる存在であるため、自然にそうなった。


「よし、それじゃあ――」


 俺は視線を転移魔法陣へ向ける。天幕は円を囲むように張られているのだが、その中央に魔法陣が用意されていた。


「中央に歩んで頂ければ、転移できるようになっています」


 準備をしていた魔法使いが告げる。俺はそれに頷きつつ……まずは剣を静かに抜いた。

 それと共に目をつむる。これまで起こったこと……エルディアト王国での騒動を思い返し、さらに魔王の島での出来事を蘇らせ……ここで勝たなければという決意を新たにする。


 目を開けて、一度振り返る。すぐ後方にいたのはセレンであり、彼女は俺へ向け小さく頷いた。

 それで俺は向き直る。次いで足を踏み出し――転移を開始した。光に飲まれ、視界が白く染まったのは一瞬のこと。次に見えたのは、うっそうと茂る森の中。


 俺は即座に周囲の気配を確認する。魔物の気配はない……が、遠方には明らかに異様な気配が存在している。そしてそれは、俺が感じたことのある――


「魔王……」


 対峙したことはないが、魔王の島で感じ取った暴虐な魔力……それよりもずっと弱いものではあったが、明確に同じだと確信させられる気配があった。

 直後、後方からセレンを始めとした突入メンバーが転移してくる。俺はそこですかさず、


「魔王のいる場所……そこへ向かう。いいな?」

「頼むぜ」


 ギルジアが返答し、俺は頷き――走り出した。さらに後続が転移してくる中、俺は真正面から気配を感じ取った。


「魔物が来る……!」


 こちらが転移してきたことを即座に察した。森の中であるため視界は効きにくく剣を振るうにも大変なくらいだが、とにかく突破しなければならない……!

 しかし攻撃は真正面からだけではない。どうやら側面からも気配が生まれ始めており、魔王は迎撃態勢を整えた。


「どうする!?」

「退路の確保は騎士が行います!」


 と、ここで騎士エルマが発言した。


「魔物の能力を把握しました! こちらで十分対処できるレベルです!」

「わかった。なら俺は前進する!」


 直後、魔物が姿を現した。全身を漆黒の鎧によって固めた騎士……とはいえ、中身がないのは気配でわかった。森の中で遭遇するのに似つかわしくない相手ではあるが……漆黒騎士は、恐ろしいほどの俊敏性で俺達へ肉薄する。

 だが俺は相手の動きを先読みして剣を振った。向こうが剣を薙ごうとする段階で剣を持つ右肩に剣が入る。そして振り抜き――肩を切り飛ばした。


 それによって魔物は動きが止まる。俺は好機だと悟り間合いを詰めて剣を縦に一閃した。結果、魔物は綺麗に両断する。強い個体であるのは間違いない……が、今の俺なら問答無用で瞬殺できる。


「いけるぞ!」


 そこでギルジアの声が聞こえた。見れば、左右から来た同様の魔物を彼やセレン、さらには帯同した騎士達も相手取り倒していた。


「強いが、十分対抗はできそうだ!」

「なら、俺は先へ行く!」


 宣言し、なおも前進。やがて森の出口と思しき光を見つけ、そこへ目がけ突っ走る。道中で幾度も魔物と遭遇したが……その全てを俺は一蹴した。

 懸念は魔族がどう動くかなのだが……俺は問題ないと確信した。理由は明白で、魔王の気配以外に魔族と思しき魔力を感じ取ることができないためだ。


 つまり、配下は全て力を取り込んでおり滅んでいる……そうした推察をした時、俺達は森を抜けた。

 前方にあったのは、断崖絶壁に囲まれた漆黒の城……正門へ到達するには上り坂を進む必要がある上、魔物もかなり存在していた。


 だが、


「……いけそうか?」

「もちろん」


 セレンが応じた。それに対し俺は「わかった」と答え……城の入口を目指し、走り始めた。


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