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万の異名を持つ英雄~追放され、見捨てられた冒険者は、世界を救う剣士になる~  作者: 陽山純樹
第三章

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黒い魔力

 魔王と決戦を行う面々は、それぞれが強力な武具を得ることとなり、その修行に励むこととなった。一方で俺だけは今までと変わらず鍛錬を繰り返すが……ここに来て、一つの成果が見えてきた。


「ふっ!」


 訓練場で剣を素振りしていると、今までとは違う性質の魔力が刀身へ流れているのを感じ取った。それはまさしく、魔王の力を肌で感じることで辿り着いた領域だった。


「ひとまず完成……だけど、あくまで形だけだ。中身が伴わなければ意味はないけど、さすがにその完成を悠長に待つ暇はないだろうな」


 ぶっつけ本番で魔王へ通用するかどうか試すことになりそうだ……と思っていると、ギルジアから招集が掛かった。


「攻撃する日取りが決まった」


 ――その日は、時を巻き戻す前とまったく同じ日だった。時を巻き戻す前、俺達は意気揚々と転移をしたわけだが、今回は少数精鋭で別の場所へ踏み込むことになる。

 騎士エルマについても同様で、選抜した騎士も随伴する形。果たして奇襲は成功するのかどうか――


「そっちは、修行をやり遂げたって顔をしているな」

「ああ、まあな……あとは魔王にこの剣が通用するかどうか」

「ま、そこは実際に挑んでみなければわからないからな。とはいえ、もし通用しなければ……」


 そこから先は言わなかった。俺もそれには答えることなく、別の話題を口にする。


「俺達が転移する場所については拠点もないだろ? その辺りはどうするんだ?」

「当該の場所もまた島ではあるが、相当小島でなおかつ本来向かう予定だった島のように結界が構築されているわけでもないため、あっさり侵入ができる。これは外部から怪しまれないようにする処置なんだろうが……転移魔法でかなり近くまで行くことができるらしい」

「ということは、転移してそのまま魔王へ挑む……ということか」

「ああ、短期決戦に持ち込むわけだな」


 それなら、少なくとも魔王へ挑むことはできそうだな。


「懸念もあるにはあるが、解決するため現在奮闘しているところらしい」

「……何も手伝えないのが申し訳ないけど」

「その分魔王との決戦で暴れてくれればいいってことだろ」


 そう語った後、ギルジアは小さく肩をすくめた。


「何にせよ、本当の決着は近い」

「……多くの勇者なんかは魔王へ挑むことすらないわけだけど、納得してくれるかな?」

「エルディアト王国側としては色々と理屈はつけるらしい。ま、彼らがちゃんと動いてくれないと魔王へ奇襲することもできないからな。申し訳ないが、作戦としておとなしく動いてもらおう」


 ……カーナやオムトといった面々も信用はできると思うのだが、さすがにそれを説明してもじゃあなぜ信用できるのか、という根拠が必要となってくる。その場合時を巻き戻した結果、と言わなければならないので、結局俺は言及することはなかった。

 カーナなんかは城内で見かけると相当やる気になっているのがわかるので、なんだか申し訳ないように感じるのだが……と、ここで兵士の一人が俺を呼び掛けた。


「ブルー様がお呼びです」


 そう告げられ、俺はギルジアと別れて魔族ブルーの所へ赴く。部屋に入ると彼は何か資料を精査していたのだが、こちらが近づくと顔を上げた。


「すまない、呼び出して」

「別に構わないけど……何かあったか?」

「魔王に関する情報で、一つ」

「観測できた情報があるのか?」

「といっても、こちらが調査していることをバレないように密かに、というレベルではあるからな……断定したことは言えないが、魔王が現在所持している力について……外部からではあるが、推定してみた」


 そう言った後、ブルーはとある机の上を指さした。そこに、漆黒の塊がわだかまっている。


「あれはその力について再現し、水晶球へ封じ込めたものだ……量はともかくとして、質についてはある程度解析してみたんだが、かなり特殊な性質を持っている」

「というと?」

「単純に魔力量が多くても質が伴っていないとダメージを与えるのが難しい、という点だ」


 ……大規模な魔法を当て続ければ勝てる、という相手ではないわけか。


「そちらは魔力を調整しながら鍛練を重ねていたはずだな? であれば、もし水晶に宿った力を消し飛ばすことができれば……」

「俺の力が通用する、というわけだな」


 参考程度にすべきだが、明確な指標が生まれたのも事実。これはありがたい。


「早速、試してもいいか?」

「ああ、持ち出せないのでここで斬れるかどうか検証してくれ。置いてある机ごと真っ二つにしてしまって構わない」


 彼の言葉に俺は「わかった」と答えつつ……黒い水晶へ近づく。なんだか球体の周囲に黒いもやのようなものが生まれており、不気味極まりない。

 これは魔王が本来持っている力とは異なるものだろう……現段階で魔王は魔族を取り込んでいる。その結果、手にした力。さらに人間の力を取り込み続ければ、俺が時を巻き戻す前に遭遇した、あの魔王に変貌を遂げるというわけだ。


 俺は剣を抜き放つ。魔族ブルーが見守る中で……まずは一閃、黒い水晶へと斬撃を叩き込んだ。


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