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万の異名を持つ英雄~追放され、見捨てられた冒険者は、世界を救う剣士になる~  作者: 陽山純樹
第三章

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情報取得

 まず、俺は魔族ブルーへ向け確認する。


「魔王がいる場所についてだが……」

「ああ」

「なんとなく引っかかりを覚えたんで、こうして質問するんだが……その、魔王は本当に本拠地にいるのか?」

「……どういうことだ?」

「俺なりに色々と魔王について調べたんだが、そもそも目的についてはイマイチ明確になっていない。だからこそ、どんな策を用いてきてもおかしくない……俺達を本拠に誘い出して実際は別の場所にいる、なんて可能性も捨てきれないと考えただけだ」


 やや苦しい物言い。ブルーは「そんなことはない」と一蹴する可能性だってあったが、


「ふむ、確かにあの魔王がこちらに動向を捉えられている……というのも、なんだか奇妙な話だな」

「そう思うくらいに、策略に長けているってことか」

「ああ……もし魔王がどこかに潜伏しているとなったら、おそらく自分の気配については極限まで消すだろう」

「だとしたら、見つけることは困難なのか?」

「少なくとも索敵を行って発見するのは極めて難しい」


 ……なら、と俺はエルディアト王国内に潜伏している魔族達のことを思い出す。


 魔王が相当用心深い性格なのだとしたら、この国にいるレドやジャックが情報を持っている可能性は微妙だけど……。


「……例えばの話だが」

「ああ」

「魔王の側近もしくは魔王から力を得た存在がいれば、観測できるか?」

「……正直、難しいな」

「そっか」

「とはいえ、魔王から指示を受けている存在である以上は、何かしらヒントとなるものがあるかもしれない」

「というと?」

「魔王は命令を行う場合、魔法などで指示を出すだろう。つまり連絡を取り合っているのは間違いなく、その痕跡を発見することができれば、魔王の居所をつかめる可能性はある」

「痕跡、というと……魔法を使って、痕跡が残るのか?」

「大地から力を借り受けた、などであれば確実だが、魔族が使用した魔法であっても、記憶から引っ張り出すことで把握できる可能性はある」


 なるほど、記憶か……。


「……なら、魔王と関わりのある魔族を捕まえるなどすればいいのか?」

「別に捕まえなくてもいい。例えば魔族相手に記憶を読み取る魔法を行使し、情報を得ることもできる。記憶というのは概念の一種であり、その情報は魔力に刻まれる。その刻まれたものを魔力ごと引っこ抜けば、閲覧できる」


 ずいぶんと乱暴な魔法にも聞こえるけど……そういうことなら、


「だったら、魔族と交戦する場合……情報を手に入れることができるかもしれないわけだ」

「そうだが、そもそも肝心の魔族がいないだろう」

「いや、いる」


 俺の言葉に魔族ブルーは眉をひそめる。


「なぜそう言い切れる?」

「今から報告に行くところだ。エルディアト王国内に魔族がいる……数日以内に討伐隊を編成して対処することになると思う。その戦闘の中で、情報を読み取ることができれば……あるいは、魔王に関する情報を得ることができるかもしれない――」






 ――時を巻き戻す前、国内に存在した魔族へ攻撃を仕掛けた際、相手から情報を得るという行為をしなかった。奇襲を行う必要性からそうした魔術師が帯同しなかったのもあるけど、そもそも魔王の居所については島にいるとわかっていたのだ。情報を取ろうとは思わない。


 とはいえ、今回はそれを利用させてもらう……本当に望む情報が手に入るのかは不明だし、もし何も得られなかったら他に対策を考える必要がある。

 とにかく、魔王の島へ辿り着く前にどうにかして……そう考える間に討伐隊が編成されていく。時を巻き戻す前にやっていた時期と比べても早い段階で俺達は動く。ただ、敵の布陣などは変わっていないだろうし、前回の結果を考えれば十分討伐は可能だ。


 俺は城内にある窓から中庭で準備をしている騎士達を眺める。メンバーとしては前回と同じ面々になるだろう。立ち回り方などが同じになるかどうかまではわからないけど……ま、その辺りは臨機応変に動けばどうにでもなる。


「しかし、いつの間に発見したんだ?」


 ふいに横から声がした。それはギルジアからのものであり、俺に近寄ってきて窓から中庭を見下ろした。


「エルディアト王国も注意はしているが、今回のケースは見逃していた」

「……俺が気付かなくとも、王国側は気付いていたと思うよ」


 そう返答しつつ、俺はギルジアを見据える。


「今回、魔族から記憶を読み取る魔法が使える人を帯同させる。魔王に関する情報……それを得られたら万々歳だ」

「島にいるのは確定なのに、ずいぶんと律儀だな」

「そこだよ。俺としては今になってだけど……疑うようになってきた」

「そこにいると見せかけて、というわけか……あり得ない話ではないが」


 ギルジアとしても、さすがに考えすぎだろうという見解らしい。国が威信を懸けて魔王討伐に乗り出そうとしているし、その情報からギルジアとしても間違いないと太鼓判を押している。

 実際はハズレであり、むしろあの場所へ入ることすらタブーなのだが……まあ、実際に踏み込まなければわからないよな。


「とにかく、得られるのであれば情報は収集した方がいい」

「ああ、そこは同意する。特に今回の敵……結構強いみたいだし、魔王に関する情報を保有している可能性は高い。なら、気合いを入れないといけないな」


 そのギルジアの言葉に俺は首肯しつつ……俺達は準備を待つことになった。


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