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万の異名を持つ英雄~追放され、見捨てられた冒険者は、世界を救う剣士になる~  作者: 陽山純樹
第三章

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最後の四人

 魔王グラーギウスとの会話後、俺を含めた最後まで残った四人……エルマ、オムト、そしてセレンと俺は食堂へ赴き話し合いを行う。


「状況を鑑みても、元に戻ることは不可能ですね」


 と、エルマが最初に口を開いた。


「魔王の魔力……この檻に広がる魔力そのものに、私達は影響を受けている。空間そのものを隔離して影響を妨げるといった案もありましたが、結局意味はありませんでしたし」

「ここに残った四人は、何かしら意味があるのかな?」


 疑問はセレンからのもの。それに対し答えたのは、オムトだ。


「騎士エルマについては、おそらく使命感が強い故じゃろう」

「使命感?」

「エルディアト王国の騎士にして、魔王を討つ存在として筆頭にあげられていた人物。だからこそ、その使命感と責任感が魔王の魔力に抵抗している……無論、他の騎士だってそれは同じのはずじゃったが、最後まで抵抗していた騎士エルマは、他と比べても一際強い気持ちを持っていた……いや、持っているというわけじゃな」

「……逆を言えば、騎士エルマくらいの使命感がないと耐えられないというわけか」


 俺の指摘にオムトは小さく頷いた。


「そして儂については、おそらく年齢的なものが関係している。魔王の魔力は、人の感情を揺さぶる効果があるようじゃが、それは儂くらいの年齢だと効果が薄いのじゃろう」

「感情が抑えられているからとか、そういう理由?」

「かもしれん」


 こちらの質問に淡々と頷くオムト。まあ確かに、彼は感情を表に出さず常日頃冷静に努めているように見える。


「そして英雄アシルについては、その能力の大きさから」

「……俺の話を誰かから聞いたのか?」

「うむ、その力によって魔王の魔力に抵抗できている。もしかすると魔王との決戦で切り札となるのはお主かもしれん」

「だとしても、援護がなければどうしようもないだろ」

「そうじゃろうな……残る騎士セレンについては、英雄アシルの魔力を身近で受けていたことにより、抵抗できていると言うべきじゃな」

「……うん、そう思う」


 セレンは同意。とはいえ、エルマやオムトと比べるとかなり危ない状況ではある。


「さて、残る四人でどうすべきか……じゃが、正直結界を解析するという手法は厳しくなった。シェノン……彼女がいなければ先へは進めん」

「もう脱出する術はないと?」


 さらなる俺の質問に、オムトは難しい顔をした。


「とはいえ、諦めるわけにはいかん。儂は明日以降も検証は続けるが、あまり期待はしないでくれ」

「なら俺は、剣で破壊できないか……どうせなら一緒にやるか」

「うむ、英雄アシルの能力でどういった反応があるのか……それを見定めるのも良いかもしれんな」

「それで、騎士エルマやセレンは――」

「もし魔王の魔力に抵抗できなくなる可能性があるとしたら、二人じゃろう。どうすれば良いのか……じゃが、魔王の魔力に抵抗できないか、その検証をしても良いじゃろう」

「味方を引き入れる活動ではなく、自分達がどうにか活動できるための手法を探すってことか?」

「うむ。とはいえ、学者でもない二人にそれを任せるのは……と思うところじゃが――」

「やってみます」


 と、エルマはあっさりと同意した。


「魔法技術がなければ難しいように思えますが、例えば身体強化の一環で魔力に抵抗できる手段を構築できるかもしれません」

「そうじゃな……強化魔法まで開発できれば、島で好き放題している面々に付与すれば、それで一時的にでも正気に戻れるかもしれん」


 と、ここでオムトは小さく息をついた。


「その辺りの手法についても、実を言うとシェノンなどと話し合ってはいたが……結界破壊を優先した結果、結局検証することがなかった」

「もし早期に手を打っていたら……対処できただろうか?」

「わからん。そもそも、抵抗できる手段を構築できるにしても、それをこの島に来た騎士達にも使えるよう調整する必要性がある。やはり相応の時間を要していたのは事実で、結界の解析と同時並行は無理じゃった」

「……なんにせよ、まだ四人は残っている。ギリギリ踏みとどまっていると考えよう」


 そう俺は言った後、オムトへ続ける。


「俺の方も抵抗できる魔法とか技法を、結界へ剣を入れながら考えてみるよ」

「器用なこともできるんじゃな」

「そのくらいの修行はしてきたから」

「なら、そちらでも検証を」


 エルマが言う。俺はそれに頷き……話し合いは終了した。






 翌朝、俺はオムトと一緒に島の外周部へ。そこでいつものように剣を振っているとオムトから色々と質問が飛んでくる。


「少しずつ魔力量を調整して斬っているのじゃな」

「ああ。それでも成果はゼロ……まったく手応えがない」

「物理的な攻撃で破壊は厳しいのかもしれんが……」

「でも『次元の悪魔』が構築した異空間は破壊できた」


 俺の言葉にオムトは一時沈黙する。


「魔力を応用して、だけど……結界が強固でも、破壊できる可能性は十分あるだろ?」

「可能性がゼロとは言わんが、厳しいじゃろうな……ただ、まだまだ結界についてわからないことは多い。もしかすると、弱点となる魔力が存在するかもしれん」


 彼と会話をする間にも俺は剣を振り続ける。それと共に魔王の魔力に抵抗できないか、色々と身の内で魔力を練り上げて確認していく。

 会話と剣と身の内の検証……同時に三つのことをやっているわけだが、問題はない。


「……もし、結界を破壊できた場合」


 と、俺はオムトへ尋ねる。


「その後のことはどう考えている?」

「結界を破壊したからといって島に存在する魔王の魔力は消えないじゃろう。なおかつ、魔力の影響を受けた人間がすぐさま剣を握るかどうかも怪しい」

「魔力を受け続けたことで影響が残り続けるということか」

「そうじゃ。むしろ結界を破壊してからの方が大変かもしれん」

「仲間を連れ戻すのは大変そうだな……」


 呟きながら、俺はいなくなってしまったヴィオンやカイムのことを思い出す。

 島に外敵はいないので無事ではあると思う。でも、彼らを連れ戻そうとした場合……相当骨が折れるだろうな、と俺は思った。


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