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万の異名を持つ英雄~追放され、見捨てられた冒険者は、世界を救う剣士になる~  作者: 陽山純樹
第三章

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見つかる仲間

 数分ほど掛けて思考した後、俺は再び走り出した。


 まず、俺がやるべきことはこれまで見てきた場所において、見落としがないか。それを確認しつつ、ひとまず戻る……先へ進めば騎士や仲間がいる可能性はあったし、タイムロスになるのは事実だったが、とにかく拠点を盤石にしなければまずいという判断だった。


 よって、俺は来た道を戻り始めたのだが……すぐに俺は発見した。先ほど、仕掛けに気付かなかった俺が見落としていたもの。それは、野営した痕跡だ。

 たき火を確認する。まだ少しばかり熱を持っていたため、遠くには行っていないと判断する。


「見つけないと……!」


 俺は感覚を研ぎ澄ませ、移動する。魔力を探って見つけるのは至難の業だが……それでも俺は、細い糸をたぐるようにして気配を見つけ出した。どうやら複数人――移動をしている。

 そちらへ足を進める。魔物だと判断されて攻撃される可能性も否定できなかったが、この機会を失うわけにはいかないと、最短距離で突っ走る。気配を辿る行為であるため、気付けば道が逸れるといった変化もない。


 そうして俺は、明確に気配を感じ取れるくらい距離を詰めることに成功したが……そこで音が聞こえた。金属音と、バチバチという破裂音。戦っている……!

 俺はさらに速度を引き上げ、とうとうその現場に到達した。複数体の魔物と交戦する騎士の一団。人数は十名ほどだが、その中に見覚えのある人物を発見した。


「――ヴィオン!?」


 仲間の勇者であるヴィオンもまたそこにいた。名を告げると彼も気付いたようで驚き、


「合流できたか……! とはいえ――」

「ああ、まずは魔物を倒さないと!」


 俺は彼と連携して魔物を斬る。同行する騎士はどうやら支援を行うタイプの人員らしく、戦力になれるのは一人くらいしかいなかった。その彼には他の騎士を守るように言い渡し、俺とヴィオンの二人で魔物を撃滅。三分ほどで、敵を全て倒すことができた。


「いや、助かった。さすがに一人だと限界があったからな」

「……ヴィオンは転移した時、一人だったのか?」

「ああ。どうにかこれだけ集めて一夜を過ごした」


 騎士達は明らかに疲労している。少人数で夜を明かせば、さすがにキツいか。


「そっちは単独でどうしたんだ?」

「実は――」


 今まで得た情報を全て伝える。ヴィオンはそれを聞いて「なるほど」と呟いた。


「バラバラに転移しただけではなく、他にも色々仕込まれているというわけか」

「現段階で気付いていないこともありそうだから、とにかく安全に休める場所を確保しないとまずい」

「それで人員を、というわけだな……問題は、その集結している場所だな。そちらの案内があればどうにでもなりそうだが……」

「どちらにせよ、情報交換のために戻るつもりではあった。一緒に戻ろう」


 ヴィオンや騎士は承諾して、俺達は進み始める。ただ道中で見逃したと思しき場所については調べていく。


「確認だけど、ヴィオン達と出会う前に野営地を見つけた……それはヴィオン達のものでいいんだよな?」


 方角まで伝えると、ヴィオンは首肯した。


「ああ、俺達のもので間違いない」

「同様に見逃したケースはありそうだな……けど、日の出から時間が経過していることを踏まえると、野営地を見つけても周辺にいない可能性が高そうだ」

「気配も上手く探れないから厄介だな」

「ああ、そうだ……ただ、少し慣れてきたか知覚できる範囲は上がっている。この調子で――」


 そう述べた時、俺は新たな気配を見つけた。ヴィオンや騎士に伝え一緒に向かうと決めて……少しすると戦闘の音が聞こえた。

 ヴィオン達と同じ状況……というわけで駆けつけると、そこにはまたも複数の騎士と、


「あれは……!?」


 俺はその姿を見て驚きつつ、援護に入った。魔物に相対していた人物は――ギルジアのパートナーであるシェノンだった。

 しかしギルジアがいない。どうやら離ればなれになっている……事情を聞きたいのをぐっと堪えて俺とヴィオンは連携して魔物を撃滅する。騎士達の人数は十数名となり、再会を喜ぶのを見ながら、俺はシェノンへ尋ねた。


「一人か?」


 シェノンは小さく頷くと、最初からギルジアと離れてしまっていると説明が入った。


「これは、まずいか……?」


 ギルジアの能力はシェノンがいるからこそ真価を発揮できる。独力でも十分強いし、魔物の強さから考えれば夜を越えられていると思うけど――


 とりあえず俺はシェノンへ向け状況を説明する。今は拠点へ戻るところだと言ったところで、彼女は口を開いた。


「安全圏の確保……それに助力できるかもしれません」

「え、どういうことだ?」

「この島に存在する魔力についてはある程度解析できました。それを除去し、魔物の侵入を抑えられる結界は、おそらく構築できます」


 ――俺は彼女の能力を知っているから、ある程度納得はできた。しかしそれでも、ここは魔王の本拠地だ。一夜でそれを解析できたというのは驚愕である。

 そしてこれは値千金の情報だ。安全圏を確立さえすれば、物資面の問題はあるにしても体力的にも精神的にも楽になる。もちろん魔王だって反撃はしてくるとは思うが、こちらに有利な陣地を形成できる可能性があるのは、まさしく希望の光だ。


「なら、早速その場所へ向かおう」


 シェノンは頷く。本当ならギルジアを探したいところだろうけど……彼女は首を左右に振った。


「心配ですけど、今は自分にできることをやらなければ」


 それだけだった。よって俺はギルジアのことをそれ以上言及せず、足早に拠点へと進み始める。

 道中で幾度となく魔物と遭遇するが、ヴィオンやシェノンでも対処でき、難なく倒すことができた。魔物のレベルがこのままなら、合流もさほど時間が掛からず……と言いたいところだが、さすがにそうもいかないだろう。


 何にせよ、今の段階で安全圏の確保ができるのはありがたい。場合によっては外と連絡がとれないかと考えるが……さすがにそれは厳しいだろうか。

 やがて俺達は拠点へ戻ってくる。とりあえず俺が話を通した一団はここに来ている様子。なおかつ一足先にカーナも戻っていた。よって俺は、すぐさま情報交換をすることにした。


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