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万の異名を持つ英雄~追放され、見捨てられた冒険者は、世界を救う剣士になる~  作者: 陽山純樹
第三章

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転移先

 転移の光が、一時俺を包む……浮遊感を抱いた直後、俺は体に力を入れ……数秒後、地面に着地した。


「ひとまず問題なく着いた――」


 そう言いかけた時、俺はすぐ異変に気付いた。転移先は草原だったはずだ。魔族ブルーの地図を見ればそれで間違いない。

 だが、転移した足下は瓦礫……そればかりではない。周囲は廃墟になった建物が存在する……。


「転移魔法が妨害されて……というわけか」


 俺はすぐに状況を把握し――なおかつ、セレンがいないことに気付いた。どうやら孤立しているらしい。

 状況は、よろしくない……というより、何が起こったのかわからないと言うべきか。


「早速、精神訓練が役に立ちそうだな……」


 どこかで休める場所を探した方がいいだろうか……と、遠くから爆音が聞こえてくる。誰かが戦っていると考えるところではあるが……いや、これが罠である可能性もあるのか?


「どうする……?」


 選択肢はいくつもあるが……まずは仲間を見つけるところから――


 そこまで考えた時、俺は見つけた。島の奥……そこに、天を衝くような漆黒の城がそびえ立っていることを。


「あれが、魔王の城か……」


 見ているだけでも威圧されそうな、巨大な建造物。島の外からでも見れそうだけど、少なくとも騎士エルマなどから報告がなかった。ということは、島の外側からは幻術などで見えないようにしている、というわけだ。

 俺は逆方向へ目を向ける。そちらには建造物らしきものが一切なく、爆音もそちらから聞こえてくる。


「島の中央部に誘い込んで、本来の転移ポイントへ向かう騎士や勇者を倒しているってことか……」


 俺は状況をある程度理解し、さらに周辺を見回す。瓦礫が大量にある場所で、遮蔽物も少ない。そもそも家の外壁などが残されているが、ボロボロで隠れるには適さない。


「まずは拠点を作成しないとまずいよな……けど、俺一人ではどうにもできない」


 ならば、人を集めること……俺は走り出す。まずは爆音のする方角へ。そこで騎士や勇者と合流し、人を集めて拠点を作る。

 とはいえ、本来転移を予定していた場所へ向かうのが筋か……考える間にも音が聞こえてくる。明らかに戦闘音であり、近づくと人の声が聞こえてくる。


 この調子だと、俺達に続く騎士達も……とはいえ外と連絡をとることができないため、完全に敵の策略にはまってしまっている。


「俺達を孤立させて各個撃破するってやり方か……」


 敵の目論見を理解し、俺は魔王の島を駆ける。やがて辿り着いた戦場は……騎士達が奮戦していた。


「魔物を倒せ! ここで退けば負けるぞ!」


 そう指示を飛ばす男性騎士。他にも魔法使いや複数の騎士がいて、魔物と交戦していた。

 相手は多数の骸骨騎士。魔力だけを見ても、どうやら普通の魔物とは違う。味方も精鋭ではあるが、それでも互角に渡り合うのがやっと……いや、数が多いことも起因しているだろう。ならば、まずは数を減らす!


 俺は決断して戦場へと飛び出す。そして味方がこちらに気付くと、歓声が上がった。

 そうした中で俺は、剣を振り手近にいた魔物を斬った。手応えは十分、俺なら一撃で倒せる……そう判断して、俺は続けざまに魔物を斬る。


 数体まとめて倒した直後、呼応するように騎士達も応戦する。士気を取り戻し、魔法と剣による連携によって、どうにか魔物を倒していく。

 俺が参戦しておよそ五分後、周辺に魔物がいなくなる。短い戦闘ではあったが、これが延々と続くのであれば……危険な状況であるのは間違いない。


「ありがとうございます」


 礼を述べる騎士。先ほど指揮していた男性騎士だ。


「あなた方は、第一陣ですか?」


 見覚えのある人がいなかったため問い掛けると、男性騎士は頷いた。


「はい、突然孤立した状態で転移し、近くにいた人を集めて態勢を整えようと動いていました」


 その中で、俺が近くに転移したと……辺りを見回すが、少なくとも他に仲間は見受けられない。

 遠くで戦闘音らしきものが聞こえてくるけど……救援に向かうべきか、それとも彼らと連携するべきか?


「私達は、本来の転移場所へ戻ります」


 と、男性騎士は告げる。


「漆黒の城……あちらとは逆方向に進めば魔王由来の魔力も弱いですので、そちらを目指そうかと」

「……魔力の薄い方角を目指すと?」

「はい。地図を確認すれば、城から逆……そちらへ歩めば、所定の位置に到達します」


 なるほど……俺は彼らが進むであろう方角を見た。魔物と交戦していたわけだが、他に気配は見当たらない。

 ただ、正直気配を探っても当てにならないかもしれない……そんな予感を抱きつつ、俺は男性騎士へ問い掛けた。


「俺はどうすれば?」

「あなたは遊撃という扱いだったはず。であれば――」


 それ以上は言わなかった。自由に動けというわけだ。

 彼らのことは心配ではあるけれど、俺がやるべきことは、とにかく味方を助けることであると判断。よって、


「では、他の場所で戦っている騎士や勇者の援護に向かいます」

「はい、ご武運を」


 俺が頷くと彼らは移動を開始。そして俺は……音のする方角へと駆け出す。

 走りながら記憶した地図を頭の中で浮かべて思考する。先ほど男性騎士が言っていたように、本来転移する場所は魔王の城とは反対側。方角的に言えば魔王の城が北で、転移場所が南。


 俺は太陽を見て方角を確認する。目指すべきは南……とにかく方角については逐一チェックしないと迷いそうだ。

 そこに気をつけ、仲間を助けていこう……そう考えていると、爆音がいよいよ近くなっていた。


「おおお!」


 そして声が聞こえてくる。接近すると、騎士と魔法使いが骸骨騎士と交戦しているという、先ほどと同じ状況。ただ騎士の顔に見覚えがあるため、第二陣のメンバーだ。

 そこに俺が割って入って魔物を倒す。騎士は驚きつつ「感謝する」と述べ、俺と連携して魔物を撃破することに成功した。


「合流したのは、これだけですか?」


 こちらの質問に騎士は頷く。第二陣だって結構な人数いたはずだが、ずいぶんとバラバラになっている。

 相当手の込んだ策略だな……そう思いつつ、遊撃として立ち回っていかないと、と剣を強く握りしめた。


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