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万の異名を持つ英雄~追放され、見捨てられた冒険者は、世界を救う剣士になる~  作者: 陽山純樹
第三章

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防御魔法

 ギルジアの提案する訓練については、どうやら他の人も誘っているらしく、俺やセレン以外にも話をしたカーナなどもいた。で、何をするのかというと、


「勇者であり、幾多の戦場で戦い続けた俺達にとって、多少の連戦や苦境は平気だし耐性もある……が、俺達が今から踏み込むのは魔王のいる島だ。何が起こるかわからん以上、今までの戦場と比べどこよりも厳しい、という考えで臨むのがベストだろう」


 ギルジアの言葉に俺も頷く。他の勇者も同意するのか、小さく頷いて人がいた。


「場合によっては散り散りになって戦うなんて場合もある。なおかつ、魔族の中には精神攻撃が得意なヤツがいる。それは言葉で揺さぶってくるとかそういう次元ではなく、魔法により精神に干渉してくるタイプだ」

「そういう敵とお目に掛かったことがないけど」


 と、話し出したのはカーナだ。


「他ならぬギルジアが言うんだ。経験はあるんだね?」

「そうだな。普通、精神攻撃なんてしてくる魔族はいない……というか、根本的に人間よりも強い以上、そんな面倒なことをする必要性もなく、魔法を撃って終わりというわけだ。単純に力の差がある以上、それで事足りるし、精神攻撃の魔法なんて磨く必要性はない」


 ギルジアは続ける……まあ確かに、俺も遭遇したことはない。

 そもそも精神攻撃というのはどういうものなのか、想像するのも難しいな。


「ただ、一定数魔族にはそういう領域の攻撃を得意とする個体がいる。その多くは、基本的なスペックで他の魔族と比べ弱かったりするケースがほとんどだ。つまり、能力に見劣りするため、他の能力を磨こうとしたわけだ」

「そこは人間と同じだね」


 セレンがコメント。ギルジアは深々と頷き、


「その通りだ……つまり、単なる力押しでは通用しないタイプだ。しかもこういう輩は相当魔法について練度を高めている。魔法攻撃を受けまいと立ち回っても、奴らはそれを上回る技法を所持しているケースが多い」


 ここでギルジアは嘆息した。


「これはひとえに経験の差だな。俺達の方は精神攻撃を受けるような経験がないからどう対処していいかわからない。反面、魔族側は勇者や騎士と戦った経験を持っている以上、百戦錬磨……純粋に戦う際のノウハウがないため、そういう意味でも苦戦を強いられることになる」

「魔法を食らわなければいいのか?」


 俺が疑問を呈すると、ギルジアは難しい顔をした。


「精神攻撃に使われる魔法は、基本的に魔力を周囲に拡散させるくらいで目に見えないケースが多い。例えばの話、真正面から魔法を放たれても俺達は魔力によって体を保護できるから食らわないだろう。しかし、例えば隠れて休憩するとか、気が緩んでいる時……魔法を常に使い続けて自分の身を守り続けるのは、相当な労力を使う。長期戦となれば、敵がいない場合どうしたって魔力を温存するために守りを解こうとするだろ。しかも戦場で、となれば冷静な判断が難しくなる」


 ギルジアの解説に、勇者達の目が鋭くなる。単なる訓練……というよりは、生き残るために必要なことなのだと、理解し始めたらしい。

 それは俺もまた同じだった。精神攻撃……様々なシチュエーションで戦えるよう俺は修行してきたけど、今の俺にとっても防げるかどうかわからない。訓練しておくべきだな。


「精神攻撃の魔法は、基本的に見えないからこそ問題なんだ。いつ何時、魔法を行使されたかわからない。こういう魔法を扱う魔族は、基本的に俺達と真正面から対峙することは少ない。それができたら真正面から挑んでいるわけだからな。つまり、どこかで観察しているケースなんてのもある」

「結構面倒だな」


 と、俺が答えるとギルジアは「だからこそ」と付け加えた。


「今からの訓練が役に立つ……といっても、そんなに難しい技法じゃない。精神攻撃というのは、魔力を介するものであるから、普通の結界でも防げる……で、攻撃魔法と違って体の内側に入り込まなければ問題ない。というわけで、防御による結界魔法とは別に、精神攻撃に耐えられるように別で魔力を保護できるようにする」

「多重結界ってことか?」

「考えとしてはそれに近い。つまり、普段用いる防御魔法とは別に、独立して構成する魔法を常に維持できるように……といっても、意識して維持するような形式だと意味がない。本人の意思とは別に自動的に付与される……そういう魔法を教える」


 ――そう告げて説明を受けた俺達だが、ここはさすが歴戦の勇者というべきか。セレンもそうだし、仲間であるヴィオンやカイムさえも、あっさりと体得した。

 俺の方は、少しコツが必要だったけれど、どうにか覚えた……ちょっと苦戦したのだが、そんな様子の俺に対しギルジアは、


「自分独自の鍛錬方法があるなら、それでもいいが」

「いや、大丈夫」


 そう言って強引に体得した。まあ俺は莫大な時間を利用して強くなったタイプで、これまでに得た経験値で無理矢理習得したって感じだな。

 他にもギルジアは、魔王との戦いへ向けて色々と解説を行った。勇者達はそれを聞き、どうすべきなのか考え始める……ここはさすがギルジアと言うべきだろうか。純粋な戦歴は彼が圧倒的に多いし、経験したからこその対策が多い。


 俺もまだまだ精進しないといけないな……と心の中で呟きつつ、この日の午前中は訓練に費やした……そして昼になり、騎士エルマから話を聞く。


「二日後、出陣します」


 いよいよか……魔王のいる島の状況がわからないにしろ、ここで尻込みしていても埒が明かないし、決断するしかない。

 問題は短期決戦で終わるのか、長期戦となるのか……そして俺の能力がどこまで通用するのか。様々な思いを抱きつつ、俺は後後からもギルジアの訓練をこなす。


 明日はたぶん、体を休ませていよいよ……って感じになりそうだなあと思いつつ、俺はその日セレンなどと共に訓練を続けたのだった。


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