純真無垢な狩人 ~ルルホ~
ある日突然、別の世界の森の中に迷い込んだあなた。不安に押しつぶされそうになりながら森を歩いているとひとりの少女に出会います。彼女の名前はルルホ。この森で猟師をしている少女です。
森に精通したルルホに助けられながら人里へと向かいますが、あなたは森を歩くのに慣れていないためどうしても時間がかかってしまいます。そんなあなたに優しく手を差し伸べるルルホ。彼女のおかげであなたの不安も次第に晴れていくのでした。やがて深い森の中で夜を迎えることになります……
ちゅっ……ん。
ちゅるっ……ぷはっ。
あっ……もう! 大人しくしててください。私だって恥ずかしいんですから。
もしかして始めてですか?
ふふ、それなら私に全部任せちゃってください。私は慣れてますので。
それじゃあ縛りますね。
あ、痛かったですか? でも今だけですから我慢してください。
あら? そこも腫れてますね。
え? そこは大丈夫? あの……無理しないで言ってください。ちゃんと手当しますから。
……
………
…………
はい。これでよし。毒はあらかた吸い出しましたし、モリクラゲの毒は弱いので人が死ぬことは滅多にありません。暫く眩暈や寒気があるかもしれませんが朝にはよくなりますよ。
本当は村まで戻った方がいいのだけれど……その身体で夜の森を歩くのは危険ですね。今夜はここで野宿しましょう。
もう……不安そうな顔をしないでください。私がついています。絶対にあなたを見捨てたりはしませんから……
さあ、森の夜は冷えます。私のマントに一緒に入りましょう。
流石にふたり並んで入るにはマントが小さいですね……寒いでしょう。もっと寄ってください。
震えてる……毒のせいだけじゃないですね。それなら私が背中から抱きしめれば……よいしょ……
あ、なんでそんなに嫌がるんですか! 怪我してるんですから大人しくしてください! えいっ! 捕まえたっ!
ぎゅっ!
……
やっぱり……身体が冷たい……私が温めてあげます。
……どうしました? え? 胸が背中に……?
そういえば私の胸、最近大きくなってきたような……弓を引くのに邪魔なのに……
わ! 何言わせるんですか! 恥ずかしいじゃないですか! もう……
ぎゅ……
え? のーぶらってなんですか?
何でもないって……気になります! 気になりますよ~!?
ぎゅっ、ぎゅっ……
え? 獣に襲われる……危険……ですか? それなら大丈夫です。これは皇狼という魔獣の毛です。これを持っていれば獣に襲われる心配はありませんので安心して眠れますよ?
え? 猛獣は私……?
もう……どういう意味ですか? それ……
大丈夫……襲ったりなんかしませんよ……? それとも……襲ってほしいんですか?
がるるる……
ふふふ、冗談です。そんなに怯えないでください。
そうですね。あなたに会って私、浮かれているんだと思います。
……
え?
きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!
ぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!!!!!!!!!
……
ご、ごめんなさい。い、今のはヤマネコさんですね……もう……脅かさないでよ……
……
ごめんなさい……思い切りしがみついてしまって……苦しくなかったですか? あれ?
……
寝ちゃってる……びっくりして気を失ってしまったのかも……
しょうがないですね。私だってあんなにびっくりしたんだもん……
……
じ~~。
……
ちょっとだけ……いい……よね?
ぎゅ……すりすり……
良い匂い……異世界の香りなのかな? それにあったかくて落ち着く……まるで……
……
………
…………
……グスッ……お爺ちゃん……
……
あ、ごめんなさい。起こしてしまいましたか?
え? 泣いていたのかって?
い、いえ……何でもありません。人ってあったかいんだなぁって……私、幼いころに両親が死んじゃって、お爺ちゃんに育ててもらってたんですけど、お爺ちゃんが死んで、それからずっとひとりぼっちだったから……こうして人と触れ合うのが久しぶりで……
昔私もモリクラゲに刺されたとき、お爺ちゃんがこうしてくれたんです。真っ暗な森の中で、寒くてつらかったけど、朝までこうやって抱きしめていてくれたことを思い出してしまって……
ごめんなさい。見知らぬ世界であなたの方が心細い思いをしてるのに……
あっ……
も、もう! 子供扱いしないでください!
ふん! で、でも……あの……もう一回、頭を撫でてもらえませんか?
……ありがとうございます。優しいんですね。
え? 調子も良くなってきたから横に移る?
私は別にこのままでも……嫌ですか?
……だったら……どうか朝までこのままでいさせてください。
ぎゅ……
……
もし、元の世界に帰れなくても……うち、狭い小屋ですけど……私独りですから……
え? 空……?
月が奇麗……?
……ええ、そうですね。
お疲れ様でした。おやすみなさい……