人質
(コント) 人質
場所‥‥あるアパートの前
役‥‥人質を取って立てこもる犯人と拡声器で説得する警察官
警察「犯人に告ぐ。馬鹿な真似はやめて自首しなさい」
犯人「俺の要求を聞かないと人質は殺すからな」
ズキューン(ピストルを撃つ音)
警察「わ、わかった。それで要求は何だ?」
犯人「今すぐ3000億円用意しろ」
警察「さ、3000億」
犯人「早くしろ! さもないと人質を撃つぞ」
警察「高額過ぎてすぐには用意できない」
犯人「そうか。わかった。だったら3万でいい」
警察「めちゃくちゃ安なったな。一瞬で2999億9997万円も下がったやん」
犯人「早くしろ! 今日の23時59分までにお金を用意しなければイベントが終わってしまうんだ」
警察「ゲームの課金かい!」
犯人「早くしろ。さもないと」
警察「わ、わかった。とにかく人質が無事かを知りたい。人質を窓から見せてくれ」
犯人「それはできない」
警察「なぜだ」
犯人「肖像権に引っかかる」
警察「何わけわからんこと言うとんねん。無事かどうか顔見るだけやろ」
犯人「とにかく断る」
警察「じゃあ、人質の情報だけでも教えてくれ。人質の人数は?」
犯人「1人だ」
警察「性別と年齢は?」
犯人「女性だ。年齢は2001年3月3日生まれの18歳だ」
警察「めちゃくちゃ詳細なデータ知ってるやん」
犯人「これでわかっただろ」
警察「いや、まだお前が嘘をついている可能性もある。人質の声を聞かせてくれ」
犯人「わかった」
助けてくれー(低くて太い声)
警察「おっさんやん」
犯人「これでわかっただろ」
警察「どう考えてもますます疑われてるやろ! カーテン越しのシルエットでいいからその人質を確認させてくれ」
犯人「疑り深いやつだな」
普通の5倍くらいの大きな丸顔の影にピストルを突きつける映像を出す。
警察「顔でかすぎやろ!」
犯人「これで気が済んだか」
警察「そんなん人間の顔の大きさと違うやろ。ぬいぐるみかなんかと違うんか?」
犯人「何を言ってるんだ。これはれっきとした若い女性だ」
警察「めちゃくちゃ不細工やんけ」
ズキューン(ピストルを撃つ音)
警察「わかった。ではその女性の特徴を教えてくれ」
犯人「目が2つに鼻と口が1つずつだ」
警察「当たり前やん! そんなどうでもいい情報はいいから、その人独特の情報を教えてくれ」
犯人「わかった。大きな目と赤い鼻。それに猫のような髭と水色の輪郭だ」
警察「ドラ〇もんやん」
犯人「うるさい。ドラ〇もんは黄色い鈴は付けてないだろう」
警察「それ絶対ドラ〇もんやん! もしかして人質はいないんじゃないか?」
犯人「なぜそういう発想が出てくるんだ?」
警察「この展開やったら誰でもそう思うやろ!」
犯人「よし、なら人質がいるという徹底的な証拠を聞かせてやる」
警察「どういうことだ?」
犯人「きゃー、助けて―」
警察「若い女性の声だ」
犯人「警部、犯人の名前がわかりました。山本隆一23歳無職です。よし早速人質犯を手配しろ。我々はここで説得を試みる。了解しました」
警察「それ刑事ドラマ大音量で流してるだけやろ」
犯人「なぜわかった」
警察「わかるわ! 人質がいないのなら突入するぞ」
犯人「ちょっと待て。本当にそんなことしてもいいのか?」
警察「どういうことだ」
犯人「人質がいないと言い切ってもいいのかと聞いてるんだ」
警察「いや、どう考えてもいないだろう」
犯人「もし強硬に突入して人質がいた場合お前たちはどうなる?」
警察「え? どうなるって‥‥」
犯人「そして俺が人質を殺したらお前たちは『警察の軽率な判断ミス』と報道され、世間から批判をされるばかりか懲戒免職になるんだぞ」
警察「懲戒免職?」
犯人「そう、退職金も貰えず首になることだ」
警察「それは困る」
犯人「そうだろ。お前にも家族はいるんじゃないのか。お前が懲戒免職になったらお前の家族は明日からどうやって生活していくんだ?」
警察「生活できません」
犯人「そうだろう。それでも突入してくるというのか?」
警察「いえ、しませんです」
犯人「わかったら早く要求に従え!」
警察「はい、わかりました」
犯人「ああ、それともう一つ要求を増やす」
警察「何でしょうか?」
犯人「誰でもいいから人質になる人を連れてこい」
警察「やっぱり人質おらんやんけ!」