初ダンジョン
今回少なめです。
読んでくださる方がいるので、できる限り都度都度投稿したいと思います。
今回1000字程度ですが、2000字くらいになったらあげたいですね。
ダンジョンの入り口を抜けると、肌寒い空気に包まれる。
それと澄んだ風と植物の香り。
「うわあ、空気が綺麗だわ。」
横で五十嵐さんが深呼吸をしている。
確かにこのダンジョンの空気はきれいだ。
ダンジョンの外ーー実家のあたりも田舎だから悪くはないんだけど、なんというか大自然に来た感じ。
空には雲一つなく、というより太陽自体もない。天井が青く空色に光っているようだ。
どこまでも続く緑……ではなく、数キロ遠くに高い壁がそびえ立っていなければ、地球のどこかと言われると騙されてしまうかもしれない。
これが、ダンジョンか……。
それにしても、どうやって次の階層の入り口を探すのだろう。
後藤さんを見ると、待ってましたと言わんばかりに話し始めた。
「この少し先。ええと、もう少し左です。そちらの方角に、緑が空に突き出している場所があるのが見えますか?」
無言でうなずく。
「あの緑は、大木になっていて、幹に人が二人ほど入れる大きな穴が開いています。そこを通れば、2階層です。」
なるほどな。昔のゲームのように、不自然な階段があるわけじゃないのか。
ダンジョンの型に応じて、次の階層の入り口が変わっているんだろうな。
「さて、行きましょうか。五十嵐、先導しろ。私は中野様の後ろを行く。」
「わかりました。それでは、中野様。参りましょう。」
五十嵐さんの後をついていく。
5分ほどなにもなく歩き、ふと感じた疑問を投げかける。
「そういえば、怪物は出ないんですか?」
「ダンジョンの入り口付近では怪物は寄ってきませんよ?」
さも当たり前のように五十嵐さんが答えた。
あれ、そんなことダンジョンの本に書いてたか……?
自分の勉強不足に、恨めしく五十嵐さんを見る。
「あっ。失礼しました。」
1冊しか本を読んでないからか、細かい知識が足りていないな。
恥を忍んで、どんどん聞くしかないだろう。
「いえいえ、不勉強なもので、初歩的なことでも解説をお願いしたいです。」
そう言い愛想笑いを向けた。
もうしばらく歩くと、五十嵐さんが振り返る。
「さて、ここまでくると怪物が見えて来ます。中野様が初めて見る怪物は、解説をしながら倒しますのでよろしくお願いします。」
そう言い五十嵐さんは横を見た。
「あ、ちょうどいいところにウォーターサラマンダーがいますね。」
五十嵐さんの視線の先を見る。
水から顔を出して、サンショウウオのような生き物が泳いでいる。
「あの怪物は、口から強い水鉄砲を撃ってきます。ウォータージェットというのはご存じですか?」
ウォータージェット、確か高圧力で水を噴き出すことで、木材程度なら容易に切断できるものだったか。
当たったらひとたまりもない。
「通常は耐水魔法の防具が必要なのですが、このダンジョンのウォーターサラマンダーは弱いので大丈夫ですよ。」
そう言いながら、五十嵐さんが弓を構える。
「なので、遠距離武器ならばッ!」
矢が甲高い音とともに、弓の弦から離れていく。
そして、ウォーターサラマンダーの頭部に直撃した。
『ギュエ』という鈍い断末魔をあげて、黒い塵となり消えていく。
ダンジョンの怪物は、倒されると体は残らない。
「さて、何かドロップしたかな。少々お待ちくださいね。」
五十嵐さんがウォーターサラマンダーがいた場所に向かう。
そこで何か見つけたのか、青く光る石をかかげている。
確かあれは、水の魔石だ。