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ひとときの別れと砂利整備

今回から、文中の魔素量に pt という単位を付けていきます。

翌日生活音で目が覚める。

僕の部屋はキッチンのちょうど真上にあるため、誰かがいるということが何となくわかるのだ。


2階の洗面台で軽く顔と口を洗うと、1階に下りて行った。



高梨が食器棚からコップを取り出し、お茶を飲んでいるのを見つけた。


「あ、高梨。他人の家で勝手にコップを取り出すのは、どうかと思うぞ。」


「すいません。だって、喉が渇いたんですもん。」


「二日酔いとかにはなってないか?」


そう聞くと、高梨は頭を少し揺らす。


「んー。喉の奥が少しお酒臭い気がしますが、頭は痛くないみたいです。」


そうか。と相槌を打つと、自分用にお茶漬けを作る。

「あ、私も食べたいです。」と言われたので、しぶしぶ同じものを用意した。


「いただきます。」


ついでに味噌汁も用意してやる。インスタントだが。


「そうだ、今日はいつ東京に戻るんだ?」


「ええと……。11時の特急電車に乗ります。」


11時か。僕の家から特急が止まる駅まで、車で30分もあればつく。

駅でお土産も買いたいだろうから、10時には出たほうがいいだろう。

時計を見ると、7時半を指していたので余裕だ。


お茶碗に残った米粒をはしでよそいなが、昨日のことを高梨に話した。

本当に専業の探索者を目指すのだろうか。


「はい。酔ってましたけど、本気ですよ。昨日の探索で分かったんです……。本当にやりたかったことが。」


やっぱり僕と同じ思い……将来に対する漠然とした不安を、高梨も持っていたんだな。


「また、僕と働きたいと言っていたのも?」


「はい。」


「そうか。」


短い返事を返す。

僕は、いつの間にか空になっていた僕と高梨のお茶碗を、流しに持って行った。


― だから、その時はまた一緒にお仕事しましょうね――先輩。


昨晩の言葉が、心につっかえたまま残っている。


「わかった。」


気づけば、心のつっかえに対する返事を、僕の口は漏らしていた。




しばらく無言の時間が続いたが、2階から下りてきた母親によって、それの空気は壊された。

「あら、起きていたの。」と寝癖をつけた、母親が言う。


ああ、そうだ。

10時に車を出してほしい旨を伝えておかないとな。


「昼までに帰れそうなので、駅までは見送ってやるよ。」


母親に車の運転を頼むと、僕はそう言い残して、自室に戻った。


〇△□


ふう、昨日見ていなかったダンジョンの情報を見てみるかな。

ダンジョンの管理端末を取り出す。


経験値は、60pt になっていた。

高梨以外にも、後藤さんが連れてきた探索者がダンジョンに入っていたんだろう。


魔素は、20pt か。それなりに怪物が倒されたようだな。

お、端末に「新規お知らせ」というのが表示されている。


指で押してみると、そこには「宝箱が空になりました(破壊済)」と書かれていた。

ということは、探索者が宝箱の野菜を見つけたのか。

あそこに設置した「ふつうの宝箱」は、一度開けると壊れてしまう。

そのため、破壊済と書かれているのだろう。


後で後藤さんにきいて、好評ならまた野菜の宝箱を設置しよう。


経験値についてだが、この量ではまだ何も変化が無い様だ。

ゲームでよく見る、次のレベルというような表記がないため、よくわからない。


後藤さんに聞いた時にも、経験値の件をきいておこう。


他にも管理端末でショップの確認などを行っていると、すぐに時間は過ぎていった。



9時半頃。


どこかで電話の音がする。

僕宛の電話だったようで、母親から内線で替わってもらった。

どうやら、ホームセンターからの電話のようだ。

14時に伺いたいということなので、了承した。


さて、そろそろ高梨を送っていく準備をするか。

軽くシャワーを浴びて、普段着に着替える。



居間では、高梨がキャリーケースを整理していた。


「あ、先輩。そっち押さえてもらえます?」


しぶしぶ荷造りの手伝いをする。



さて、そろそろ出る時間かな。

キャリーケースが重そうだったので、代わりに持ってやる。


「さて、行くか。」


高梨は後ろに、僕は助手席に乗り込む。


「さあレッツゴー!」


テンション高いな。


駅まで道中、主要道路から外れた道を進んでいたため、高梨は物珍しそうに外を見ていた。

まあ、東京では見られない風景だからな。


駅前の道路に停車すると、母親を残して降りる。

駅舎の中に入ると、日曜日の昼だというのに、学生とお年寄りが数人いるだけだった。


改札外のコンビニで、高梨がお土産を買う。

ああ、餡子あんこと栗のタルトにしたのか。


「さて、電車がくるまでもう少し時間があるが、もう改札を通っておくか?」


「はい。上でゆっくりしてます。」


そういったのでキャリーケースを渡すと、改札まで歩いて行った。

切符に、駅員さんがハンコを押す。

高梨は、自動改札ではないことに戸惑っているようだ。

こっちに来るときに、一度体験しただろうが。


短いエスカレーターの先に、高梨が消えていくのを見送ると、僕は車に戻る。


あいつは、これからどうするんだろうか。

久しぶりに会ったかつての後輩に思いをはせながら、車は静かに家に走っていった。



さて、午後からはダンジョンの作業をしないとな。


〇△□


午後、作業服を着てダンジョンの前まで来ていた。

時間は14時。そろそろホームセンターの人が来るころだ。


しばらく待っていると、ホームセンターのロゴが入った軽トラが、畑の横に止まった。

窓からは、30歳くらいだろうか、店員らしき男性が顔を出している。


「中野さんですか?」


「そうです!」


手を挙げながら答える。


「この中に入ってきて良いんで、荷下ろしだけお願いします!」


ちょうど畑の入り口にふたをするように、軽トラがバックで畑に入ってきて止まった。

1袋20kgのため、合計で200kgか……かなり重そうだ。


店員さんの話では、300kgを超えるあたりから、もう1ランク大きなトラックが必要らしい。

全て降ろし終えたので、受け渡し状にサインをすると店員さんは帰っていった。


さて、これを全てばらさないといけないな。

ダンジョンの入り口から等間隔に袋を並べていく。

普段持つことのない重量のため、腰と背中に熱がこもるのを感じた。明日は筋肉痛かな。

1通り並べ終わると、納屋から持ってきた大型のスコップで袋を破り、まんべんなく広げていった。


砂利を敷いたところを足で踏みつぶしてみると、土だけだった時と違い、しっかり歩けている気がする。


とりあえず第1段階としてこれでいいな。

今日、炊飯器の「炊飯」ボタンと間違えて、「保温」ボタンを押してしまいました。

こんな失敗は初めてかもしれません。

お酒でも飲んで、忘れましょう。


ほぼ毎日投稿してますが、あと10日でちょうど1ヵ月ですね。

コンスタントに見て頂いている方々、ありがとうございます。


ダンジョン系のお話なのに、ダンジョンに入ってる時間のほうが少ない。。

ざっくりとした完成図は頭にあります。16万字くらいで物語のおわりが来るんじゃないかなあ。


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