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実家に帰ったので、早速管理者登録します。

気分が乗っているのでもう一話。これの次からダンジョンに入ります。

実家に帰ると、ちょうど国の役人が来ていた。


「中野……真人マサト様、ですね?」


役人は男女の2人で、ゴルフケースのような縦長のバッグを持っていた。


「えっとー」


「はい、私のほうから説明させていただきます。私が国のダンジョン庁ダンジョン管理課の五十嵐です。そして、こちらの大男がー」


「誰が大男だ! えっと失礼しました。私は五十嵐の上司でもあります、課長の後藤です。」


そう言って二人が名刺を差し出す。

それを恭しく受け取る。これでも数日前までは社会人だったのだ。

ダンジョン庁というと、国のダンジョン政策を一手に引き受けている役所で、ダンジョン管理課はダンジョンマスターの支援を行う場所だったか。


「さて、中野様。ダンジョンのほうに参りましょうか。」


後藤さんに先導されて、畑……もといダンジョンへ向かう。


「道中は、私五十嵐が中野様のダンジョンを説明差し上げます。」



ダンジョンへの道中ーといっても10分程度の散歩道だったが、五十嵐さんは僕がこれから管理することになるダンジョンの説明をしてくれた。


湧いたのは、湿原型ダンジョンでスライムといった液状の怪物や、植物に似た怪物が生息しているらしい。

洞窟型じゃなくてよかったと心底思う。暗いところは少し苦手なのだ。

階層は3階層しかなく、3階層はダンジョンで一番強い怪物が1匹生息していただけだったようだ。

難易度が低いため、踏破自体は2週間ほどで終了したが、珍しい湿原型のため研究機関が1か月ほど調査をしていたらしい。


日本に多いのは、草原型と森林型、洞窟型の3種類と聞いている。

湿原型は北海道に1か所だけだったそうで、日本のダンジョン学会では、ダンジョンが湧いた場所の土地柄に依存しているというのが定説だ。

ただ、まったく湿原に縁がない土地で湿原型が発見されたことから、研究者の間では強い論争が起きているらしい。


まあ、僕にはあまり関係のない話か。


そうしている間にも、ダンジョンについた。


「さて、入り口に来たところで、この端末をお渡しします。」


そう言って後藤さんが半透明のタブレットを取り出した。

これが、ダンジョンの管理端末か。


「先ほど五十嵐のほうから説明致しました通り、3階層の怪物を倒すとこの端末が出現しました。所謂ボスのようなものだったのでしょう。」


タブレットを手に取る。


「画面に手のひらを乗せてください。ああ、どちらの手でも一緒ですよ。」


期待に胸を膨らませ、画面に右手を置いた。


『ダンジョン状況確認中…………』


「!?」


急に頭の中で声がした。

その声はこう続ける。


『ダンジョンの踏破を確認……。管理者……現在未登録……。』


『新規管理者として、この生物を登録しますか? ……登録許可申請中……。』


『受理を確認……。……登録完了。』


何かが体の中に入ってくる。

体が次第に重くなっていき、やがて意識を手放した。



「様っ!」


頭の上で声がする……。


「中野様っ!」


誰かが僕を読んでいる……。


僕は、恐る恐る目を開けた。


「五十嵐…さん? それに後藤さんも?」


「ああよかった。びっくりしましたよ、急に倒れるんだから……。」


倒れた? 確か、端末を……そうだ、端末だ。

横になった格好のまま、あたりを見渡す。

あれ、端末がない?


「端末ですか? それなら、中野様の……体の中に吸い込まれていきました。」


「ええっ! それってどうなるんですか!?」


「ああ、驚かないでください。ごくまれにあるらしいんですよ。原因はわかってませんがね。」


「それじゃあ、管理できないじゃないですか?」


『マスター、大丈夫ですよ。』


「って何か言いました?」


誰かが僕のことをマスターと呼んだ。

女性のような少し高い声。でも五十嵐さんじゃないな。


管理命令アドミンコマンドと念じてください。』


僕は、不審に思いながらも声に導かれるままに(アドミンコマンド)と念じた。


「中野様、手!」


五十嵐さんが僕の手を指さし、驚いている。

視線を右手に向けると、いつの間にかあの管理端末を持っていた。


「後藤さん、これはどういうことですか?」


「原因はわかってないんです。ただ、管理端末登録時に消失した場合、しばらくすると管理者の手に自然に表れると聞いています。」


それは恐らく、あの声に導かれて『管理命令』なる言葉を念じたからだろう。

とにかく、ダンジョンマスターを始める直前に管理端末を失うということはなかったようだ。


「さて、気を取り直してダンジョンにご案内しましょう。」


そう言って2人はバッグから何かを取り出した。

後藤さんは……これは西洋の剣のようだ……。

そうか、ダンジョン管理課の2人しか来なかったのは、この2人は戦うことができるからか。


「ちなみに、私は弓です。ショートボウとでもいうんでしょうか。」


後藤さんが仕事だから仕方ないという顔をしているのに対して、五十嵐さんは……なんというかあいつ(高梨)を思い出す。

同類かな?


「こら五十嵐。仕事中だぞ。」


「だっていいじゃないですかー。公務員だから探索者にはなれないし、こんな時しかダンジョン潜れないんですもん。」


同類だ。


それはともかくー


「後藤さん、案内していただけますか?」


初めてのダンジョン……ここから僕の新しい仕事が始まるんだ。


「おいてかないでくださいよー!」


”僕の”湿原型ダンジョンに、そうして足を踏み入れた。

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