怪物購入と初心者到着
そういえば、Twitterを開設しました。
更新情報や、日常のあれやこれやをつぶやく予定です。
詳しくは、活動報告から。
7時のアラームで目を覚ます。
この二日間だが、後輩の高梨は有休を使って探索者登録を済ませたらしい。
魔石の方は、午前中の朝一番に届くそうなので、すぐにダンジョンに移動できる準備をしておく。
身支度をしていると、玄関のチャイムが鳴った。
「シロネコ運輸でーす!」
朝からはきはきとした声が聞こえる。
運送会社から両手ほどの大きさの発泡スチロールを受け取る。
早速中を確認すると、大岩に吸わせたものとは少し色合いが違う魔石が詰まっていた。
そうか、ドロップしたダンジョンに応じて色が違うのか。
魔石を持ち、早速ダンジョンに向かった。
ダンジョン3階層。
ミユに挨拶を済ませると、拠点の縁側で端末を取り出した。
「ミユ、何かいい怪物は見繕ってくれた?」
「うん。このダンジョンの怪物と同じくらい強いのは――ええと。」
そうか、ミユは文字を書けないから伝えづらいか。
端末のショップ画面を開いた。
怪物で検索して、購入に必要な魔素量が少ない順に並べる。
「この中に、ミユが考えた怪物はいる?」
「うーんと、これとこれ!」
そう言って、ミユは2体の怪物を指し示した。
・アイアンワラビ
・クロシカ
アイアンワラビは、一見植物のワラビのように見えるが、葉の部分が研がれた鉄の板のように固い。
個体によっては木を切り裂くことができるそうだ。
根の部が足となっており、人の走る速さ程度で襲い掛かるらしい。
クロシカは、黒っぽい鹿だな。
ただ、角が毒針になっており、体に突き刺さると一定時間手足がしびれるそうだ。
アイアンワラビはなんというか、比較的弱い怪物に見えるがクロシカは毒持ちか。
「クロシカは2階層に配置するの。1階層と2階層で難易度?というのを分けた方がいいらしいの。」
確かにそうだな。
じゃあ、とりあえず購入してみるか。
購入ボタンを押そうとすると、魔素が足りませんと表示された。
「マスター、魔石吸収してないの。」
忘れていた……。
魔石は合計で 400 の魔素になった。
1個あたり 5 の魔素量だったのだが、吸わせるにしたがって得る魔素量が少なくなってきたのた。
ミユに聞くと、魔石はダンジョンにとっての食事で、同じものだけ与えると飽きてくるから……だそうだ。
これで怪物を購入できるかな。
アイアンワラビとクロシカは、それぞれ200魔素で購入できた。
購入した瞬間、目の前に2体の怪物が出現する。
どちらともすり寄ってくるのだが、アイアンワラビの葉が正直痛い。
アイアンワラビを1階層、クロシカを2階層に移動するよう指示をすると、名残惜しそうに走り去っていった。
端末の階層情報を確認すると、
――
1階層
ウォーターサラマンダー 0/0
バルーンクラブ 49/49
アイアンワラビ 1/1
……
――
2階層
ホーンラビット 39/39
クロシカ 1/1
……
と表示されていた。
そうか、新しく怪物を追加すると、どれかが減るのか。
ウォーターサラマンダーについては、以前0体に変更していたので変更しておこう。
――
1階層
ウォーターサラマンダー 20/20
バルーンクラブ 20/20
アイアンワラビ 1/10
……
――
2階層
ホーンラビット 20/20
クロシカ 1/20
……
1体から増えていく仕組みはわからないが、こんなところだろう。
設定を確認していると、ちょうど後藤さんから電話が来たようだ。
「中野様、管理課の後藤です。家がお留守のようでしたが、ダンジョンにいらっしゃいますか?」
「はい。ちょうど準備が終わったので入り口まで行きますね。」
探索者を引率してきたのかな。
「じゃあ、ミユちょっと上に行ってくる。また後で来るからね。」
「うん、マスター。お仕事がんばって!」
人間の女性に言ってほしい言葉だな。
と思いつつも、ダンジョンの入り口まで向かう。
途中階層で、怪物たちが寄ってきたので
「これから探索者が来るから、頑張ってもてなしてくれよ。」
と伝わるかわからないが、激励をしておく。
ダンジョンから出ると、後藤さんと知らない2人組の男性が立っていた。
大学生と高校生くらいに見えるが、兄弟か?
「あ、中野様。」
後藤さんが僕に気づき、声を掛けてきたので手を挙げて返す。
「そちらが探索者の方々ですか? 兄弟かな。」
「ええ、兄弟です。私の親戚にあたるんですが。」
じゃあやはり片方は高校生かな。
日本では、未成年の探索者は珍しい。
というのも、危険な職業でもあるわけで、未成年では親の許可が必要なためハードルが高い。
子供をわざわざ危険な場所に向かわせたい、という親は少ないのだ。
「ああ、あまり詮索はしないでくださいね。」
後藤さんにくぎを刺される。
「おじさん、とにかくダンジョン行こうよ。」
兄の方が言う。弟は人見知りなのか兄の後ろに隠れている。
「はいはい。そうだ、中野様も初めての探索者受け入れですので、説明しますね。」
そういって、後藤さんは交通系電子マネーのカードを取り出した。
「ダンジョンに入るときは、入場料を支払います。このカードはただのICカードですが、カードの番号と私の個人情報が紐づけをされています。」
便利な世の中になったものだ。
「もちろん専用のカードもありますが、このような普段使いのカードを利用される方が多いですね。」
そういって、ダンジョンの入り口にカードをかざした。
一瞬のうちに ピッ と音が鳴りダンジョンのゲートが開く。
そうか、実際はああやって入るんだな。僕の場合自動でゲートが開いたのだが。
「ダンジョンマスターは管理端末がキーになります。中野様の場合体内にあるようなので、そう見えたのですね。」
後藤さんがゲートの1歩中に入ると、あの兄弟を手招きした。
兄弟も同じように、ICカードを取り出しダンジョンゲートを通る。
「さて、2時間くらいしたら戻りますので、2時間後にお会いしましょう。」
そういって、3人はダンジョンの中に消えていった。
3人分の入場料はどれくらいになるんだろうか。
確かランクごとに決まっていたっけ。
スマホで、ダンジョンの入場料について調べる。
Eランクだと…… 1000円らしい。
国に1割持っていかれるので、僕の手元に残るのは900円か。
探索者としても、Eランクダンジョンはうまみが少ないな。
僕が購入していた魔石が、Eランクダンジョンでよく手に入るもので、購入金額が500円なので……売値は300円あればいい方だと思う。
つまり、一度の探索で4個以上は魔石か、それ以上のドロップ品を入手しないと完全な赤字だ。
入場料とトントンでは、探索者として食ってはいけない。
僕のダンジョンでは、薄利多売でやるしかないので、入場料だけではなく他の収入も考えなくてはいけないだろうな。
幸いにも畑は広い。何なら宿泊施設や食堂などがあってもいいかもしれない。
まあ、そこまで手を広げるには先立つものが必要だし、金も人も今の僕には足りない。
とにかく、初めての探索者(お客様)だ。いろいろ感想を聞きながら、進めていこう。
本業より副業が儲かるパターンになるかもしれないですね。
また、主人公は宝箱を設置し忘れている……後藤さんにお小言とかいただくんでしょうか。