打ち合わせ
最近外が暑くなってきましたね。
マスクして歩くだけで、いい運動になる気がします。
熱中症には気を付けて。
ミユをダンジョンに残したまま、家に帰った。
明日は後藤さんと打ち合わせがあるので、早めに寝よう。
ー
早めに寝たおかげで、東京にいた頃のように、7時に目を覚ます。
少し前まではここからシャワーを浴びて、ご飯を作っていた。
まあ、この時間はぎりぎり親も起きていないため、自分で朝ご飯を作る必要があるのだが。
ふとスマホを見ると、メッセージアプリの LIME に、懐かしい後輩 ―高梨のメッセージが入っていた。
時間は昨日の23時、ちょうど寝ていた頃に送信されたらしい。
―
ダンジョンの準備はいかがですか?
まもなく連休なので、遊びに行きたいです。
―
そうか、連休か。
この生活になってからは、カレンダーをまじまじと見ていないため、曜日感覚が狂っているな。
通常のダンジョンだと危険だろうが、初心者ダンジョンにすると決めたので、高梨でも中に入ることはできるか。
探索者登録は必要だと思うが。
「連休までにオープンできそうなら伝えるよ。念のため探索者登録だけしておいたら?」
と返信する。
あ、早くも既読がついた。
まああいつも会社員、この時間には起きているか。
ー
はい!
ー
元気のいい言葉とともに、微妙なスタンプを送ってきた。
それを見たら、スマホの画面を落とす。
さて、お茶漬けでも作るか。
朝飯を食べ終えた後、僕はダンジョンの入り口に来ていた。
畑だった場所にダンジョンができているため、周りの土はやわらかく、草が生い茂っている。
一応商売をするのだから、この辺りを整備したほうがいいだろう。
農地を転用するのは面倒なのだが、ダンジョン発生時の特例で、申請がほぼ無条件で通る。
少し家から遠いという関係で、作物は作られておらず、農地というよりは荒れ地なのだが。
とにかく、ダンジョン管理課はその申請も行ってくれたという話なので、この土地はもう農地ではないのだ。
0.5ヘクタールの畑の中央部分に、ダンジョンの入り口はある。
周りを舗装して、休憩場所を設けてもいいだろう。
まあそれも、今日の打ち合わせでどれくらいの探索者が見込めるか次第なのだが。
打ち合わせまでの間、持ってきたメジャーで長さを測定していった。
しばらくすると後藤さんから電話が来て、これから向かう旨を伝えてきた。
いったん家に帰ってシャワーを浴びるか。
シャワーを浴びてすぐに、玄関のチャイムが鳴る。
扉を開けると、後藤さんが立っていた。
「今日はお一人なんですね。」
「ええ、今日は事務的な話ですので。」
居間に通し、お茶を出す。
その間に、後藤さんは何枚かの紙を机に出していた。
「まず、これが助成金の申請用紙と記入サンプルです。」
助成金の話からするようだ。
「先日電話で説明致しましたが、毎月30万円を1年間、中野様の口座に振り込ませて頂きます。事業用の口座はお持ちですか?」
そうか、確かに事業用の口座を分けたほうがいいのか。
確か、普段使っていない銀行口座があったな。
「ああ、お持ちでしたか。後ほど口座情報と銀行印を押して頂くので、準備をお願いします。」
後で取ってこよう。
「助成金ですが、ダンジョン事業を廃業された場合、支払いは終了しますのでご注意ください。他にも、ダンジョン事業での売り上げが50万を超えた場合も同様です。」
廃業はしないからいいとして、売り上げはそんなリアルタイムで確認できるのか?
「ダンジョンマスター様方の売り上げは、ダンジョン入場時の手数料・ダンジョンのドロップ品を販売した時の利益で構成されています。それらはすべて、国のダンジョン関連団体経由で行われるため、日ごとの確認が可能なのです。」
なるほどな。
まあ特に異存はないため、印鑑を取ってきて申請書を記入する。
「そうだ、中野様は開業届は出されていますか?」
まだ出していない。
「それでは、そちらも早めに税務署に提出をお願いします。そうすると、私共管理課が確定申告の補助を行うことができますので。」
そう言って、ダンジョンマスターの場合と書かれた開業届の記入サンプルを手渡された。
明日にでも出しに行くか。
申請書を記入し終わると、続いてダンジョンの打ち合わせが始まった。
「初心者向けのダンジョン計画ですが、管理課側の要望書を作成しましたので確認をお願いします。」
1枚ぺらの用紙には、細かく要望が書かれている。
要点だけ抜き出すと、次のような要望だった。
・ダンジョンの近くに初心者向けの講習所を設置したい。
・探索が楽しいものと思えるように、積極的に宝箱を設置してほしい。
・雑誌やホームページに公開できるように、ダンジョンの外見を整えたい。
お金がかかりそうなものばかりだ。
「一応魔石を購入したので、それを魔素に変換して、宝箱や怪物を配置する予定です。ただ、ダンジョンの外見については……お金が。」
「さようでございますか……。それは追々、ということでしょうか。講習所については、プレハブを管理課が設置します。」
「それだと時間がかかりますよね。そろそろダンジョンを開放したいんですよ。」
実家暮らしとはいえ、使っていなかったとはいえ畑を一つつぶしてお金を稼がないというのは、家族に申し訳ない。
「ふむ……。それではお試しとして、初心者探索者をピックアップして斡旋しましょう。」
明後日に魔石が届くので、それくらいに斡旋してくれることになった。
〇△□
魔石が届くまでの間、ミユを構ったり、ダンジョンの周りの草を刈るなどした。
そして、2日後――
次の話では、物語の中で2日の時間が過ぎます。
こういう時間が空くときってどういった表現にするんでしょうね。