はつこいのきみ。
「はじめてのきみ。」の続編です。
「なつみ、帰り教室で待ってて。」
いつもの朝。いつもの教室。いつもの場所。
そこにすでに定着しつつある存在。
「いや、りなちゃんと帰るから。」
「今日カウンター当番なんだ。あ、でも一緒に当番すればいいか。じゃあ、HR終わったら迎えに来る。」
「え、ちょっと話し聞いてよ・・・!」
「じゃあ後で。」
今日も負けた・・・。
先週のあの「俺の彼女」宣言から、毎日のように彼はやってきた。
そしてわかったこと。彼はかなりの自由人だった。
決して人に惑わされることなく、常に本能のままに行動する。
それは悪く言えば、自分勝手。よく言えば、まっすぐな素直さ。
「なっちゃん!今日もすごいラブアタックだったね!」
「ラブアタックって・・・。あの人、何が目的なんだろう・・・?」
「何ってなっちゃんに一目ぼれしたのよ!なっちゃん可愛いもの!!」
そう言って意気込む彼女を尻目に、教室中を見渡せば嫉妬に満ちた視線たち。
その視線を受け止めて、やはり見当違いな考えを打ち消した。
「あの人ってモテるんでしょ?なのにあたしなんかに惚れるわけないよ。きっとほかに目的があるのよ。」
そう言いながわ、ちくりと自分の胸が痛んだ。
―放課後
「ちょっとなっちゃん!ゆうとくん来るって言ってなかった?!だめだよ、帰っちゃ!」
「いいのよ、別に。こっちは答えたわけじゃないし。じゃあまた明日、りなちゃん。」
「え、ちょっとなっちゃん!!」
りなは少し急いで出て行くなつみを見送りながら、「やばいよぉ・・・」とつぶやいた。
いいのよ、別に待たなくたって。
関係ないんだから。
だいたい付き合ってるわけじゃないんだから・・・。
昇降口までの階段を降りていくと、ちょうどあと数メートルという距離に長身の人影があった。
「え・・・?」
気づいた時にはすでに目の前に迫っていた長身の人物は・・・
「なんで待っててくれなかったの?」
それは、今まで見たこともないほど冷たい表情だった。
「だって・・・待つなんて一言も言ってないし・・・。」
視線をやや下に向けながら、まるでいたずらがバレた子供のような気持ちだった。
「ふーん。」
空気が凍る、とはこういうことだと思った。
――ぐらっ
「きゃっ・・・?!」
世界が反転したと思うと、いつのまにか目の前には綺麗な顔が。
背中と膝裏に感じる温かさがなまなましい。
「なっ何するっ・・・」
「黙って。」
はっとするほどの美しさと威圧感だった。
降ろされたのは、図書室。
思い沈黙が続く中、ふわりとまた香水の香りに包まれた。
「っ!?」
「俺言ったよね。君は俺の彼女になるって。君が俺のことをどう思ってるかなんて知らない。でも、俺は君しかありえない。なつきしか欲しくない。」
それは単純なようでとても素直な言葉だった。
自然と心が温かくなった。
「君は俺の彼女になる。」
ご愛読ありがとうございました。
次もがんばって書いていきたいと思います。
よろしくお願いします。