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12話
私は今競技場にいる。地方の小さな草大会。瑠宇がエントリーしたというのだ。男子一般200m、それが瑠宇の出場種目。初夏の風が吹く中、大会が始まった。
「第2コース。天野瑠宇選手」
選手紹介で瑠宇が呼ばれた。鮮やかな赤のランニングウェアに身を包んだ瑠宇がトラックに立っている。大きな拍手が沸く。みんな瑠宇の事を知っているのだ。この大会の出場理由も。
大会終了後のトラックに瑠宇が立っている。
「瑠宇」
声を掛けるとトラックに１礼した瑠宇がちょっと寂しげなでも笑顔で
「祥子帰ろう」
「お疲れ様」
今日は瑠宇と、そのつもりで来た。だから瑠宇の手を引いて普段なら通り過ぎる入り口をくぐる。
「祥子」
瑠宇が驚いた顔。
「何も言わないで。瑠宇の全てを感じさせて。私の全てを感じて」
瑠宇を胸に抱き締めながら
「今日までお疲れ様でした。明日からは受験勉強ね」
「うん、祥子と一緒に通えるように頑張るよ」
傷ついても私にさえその痛みを伝えない瑠宇。せめて今日は私の胸でゆっくり眠って欲しい。次に羽ばたくときにも一緒に未来を見させてね。
これで完結しました。お読みいただきありがとうございました。
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