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元魔王の秘策

 ローザリンデの魔術は、ティネの障壁によって無効化された。


 が、何も不思議ではないとイグナーツは思っていた。


 半ば侮っていたのもある。もし、何かしらの効果を付加していれば、ティネの障壁では防げなかっただろう。


 確かに魔族の高密度な魔力は、間違いなく人間に対して猛毒であり、致命的なダメージを与えられる。だが、対抗策が容易く練れることも紛れもない事実。


「おい、ローザリンデ! 俺はここにいるぞ!」


 イグナーツはティネの家の前から、森に向かって叫ぶ。


「師匠? 私は一体何をどうすればいいんですか?」


 リリアーヌはイグナーツの前で、正座になって座っていた。

 背中が大きくはだけた白い上着に、黒のロングスカートを履いている。天族の由緒正しき戦闘装束である。


「お前はそこに座っていればいい」

「分かりました。……ねぇ師匠。ティネちゃんからの言伝があるんですけど」

「……なんだ?」

「〝大丈夫ですか?〟」


 はあとイグナーツは大きくため息をついた。あんなに研究で自分を追い込んでおきながら、それでもイグナーツのことを気にかける。

 お人好しすぎて、研究者に向いてないのではないかと思い始めてきた。


「ま、大丈夫だ」


 数分とせぬうちに、魔族がティネの家を取り囲み始める。

 しかし誰も攻撃する素振りは見せず、ただただ囲っていた。


「えーと、私達めちゃくちゃ取り囲まれてますが……」

「その通りだな」

「何もしなくていいんですか?」

「ああ。あいつらも何もしないからな」


 イグナーツの言うとおり、魔族たちは手を出してこない。

 そして、イグナーツが待ち望んだ相手が姿を表した。


「お久しぶりね、イグナーツ。よくまあ、私の術を防いでくれたわね」

「久しいな、ローザリンデ。あの城の頂点に立ったはいいが、なんというザマだ。街一つ、簡単に壊せないなんてな」


 ローザリンデは怒りに顔を真っ赤にさせていた。


「何よその顔! その澄ました顔は! 全て悟っているとでも言いたげな憎い顔! ほんと嫌いよ!」


 ローザリンデは手を向ける。


「リリアーヌ……やれ」

「はい、師匠!」


 リリアーヌはイグナーツから譲り受けた短剣の宝珠を叩き割った。


「はぅっ! 私の中に……すっごく濃いのが!」

「だから余計なことは言うな!」

「ふざけるな!」


 ローザリンデは手から濃密度の魔力を放射する。

 が、リリアーヌが生み出した障壁がいともたやすく防ぐ。


「そんな……どうして! 人間ごときに今の攻撃は……」

「鈍ったんじゃないか? ま、そもそも後衛でふんぞり返ってばかりだったお前が、今のを理解しているわけないか」


 ローザリンデは朱色の槍を空から生み出した。


「それじゃあ、近接戦で殺してあげる。その娘共々ね!」

「たしかに……近接戦なら不利だな」


 ローザリンデが、進めようとした足を止めた。


「……何をする気?」

「いや、俺は俺を守るために魔術を発動するだけだ」


 イグナーツはリリアーヌの背中に手を当てる。


「んっ!」

「我慢しろよ、リリアーヌ。俺の最強魔術を使わせてやる!」

「う、うん……わかった……あんっ!」


 人に魔力を弄られるのはこそばゆい。リリアーヌは頬を赤らめて、体を震わせている。


「自分で言うのは恥ずかしいが……〝理の暴力〟イグナーツ=エフェンベルクの真髄を見せてやる」

「やれるものならやってみなさい! 私はもう……後に引けない!」


 ローザリンデは全身に魔力の鎧を纏い、突撃してくる。

 対してイグナーツは、


「〝荳也阜縺ョ邨ゅo繧翫〟」


 それは魔界古来の言葉による詠唱だった。

 人の言葉では言い表せない発音で、恐怖を具現する。


「これは……一体……」


 周囲の形式が全く別のものへとすり替わった。

 空には赤黒い雲が広がり、あちらこちらで火の付いた瓦礫が散乱していた。地はひび割れ、木は枯れ、風は乾いている。

 何もかもが死しているかのような風景に、魔族の誰かが呟いた。


「これは……魔界だ!」


読んでいただきありがとうございます!

次は11月18日㈪の更新予定です

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