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前触れ

 イグナーツは床へ座り、吹き出た汗を袖で拭う。


「なに……いまの……」


 リリアーヌは呼吸を整えながら、イグナーツへ問う。


「あれが本来の俺の魔力だ。あまりに気配がデカすぎるから、滅多に使わないんだ」


 イグナーツはリリアーヌからフラスコを受け取り、中を覗き込む。


「俺の髪、か。俺の一族は代々髪が薄くなるのが早いというのに……酷いことを」


 ティネははっと我に帰り、イグナーツの腕に縋り付いた。


「ごめんなさい……ごめんなさい……わたし……」

「ティネは怪我してないか?」

「うん」

「なら大丈夫だ。貴重な毛を失ったのは許せないが、研究のためであれば仕方ない」


 ティネの頭をポンポンと二度撫で、立ち上がった。


「でも私、きっと取り返しの付かないことを……」

「大丈夫だ。とりあえず、一回寝るんだ。いいな?」

「……うん」


 ティネは俯きながら、寝室へと足を運んだ。

 今の状況で、さすがにイグナーツに言い返すことが出来なかったのだろう。


「それにしてもヤバイ……魔族は間違いなく俺の生存に気付いたろう。パラルロムにも気付いた奴がいるかもしれない」


 密度の高い魔力は、そのまま空中へ放つと凄まじい圧迫感となって放たれる。天族でなくとも、魔族や魔力感知の高い人間なら、魔族の存在を知ることができてしまう。

 特に四天魔王の魔族はとりわけ密度が濃いため、かなり広範囲に渡って知られてしまうだろう。


「パラルロムに探りを入れてくる。お前らはここに残り、最悪の自体に備えて荷物をまとめておいてくれ」


 リリアーヌはこくりと頷いた。


「リリアーヌ……今日から明日の夜まで魔術を使うのは禁止だ」

「え? 特訓も?」

「もちろんだ」


 リリアーヌは不服そうな表情もせず、こくりと頷いた。今の深刻な状況への手段だと悟ってくれているのだろう。


「えーと、ちなみにそれは……魔族が来たら、私が戦うってことですかね?」

「近からず遠からず、だ。でもこの前みたいな無茶なことはしない。だから心配しなくていい」

「……はい」

「あと、ティネが起きても家の外には出させるなよ」

「わかりました。今のティネちゃんは、疲れてますからね」


 イグナーツはこくりと頷き、身支度をさっと整えてから家を飛び出した。


 いつかは魔族と戦うときが来るだろうと思っていが、ここまで早いとは思わなかった。イグナーツは必死に対抗策を練りながら、パラルロムを目指した。


読んでいただきありがとうございます

次は2019年10月18日㈮の更新予定です

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