参
臓器を口に含む表現があります。
目次にお戻りください。
ある世界で、ある女はずっと考えていました。
ずっとずっとずっとずっと、女が大切に思っている存在のことを。
女の寿命はもう以前のように永くありませんでした。
とある契約によって、永遠にも等しい寿命を死神に吸い取られているからです。
契約を果たさなければ、女が大切に思っている存在はどんな世界にも存在することが出来ません。
輪廻の輪から外れた魂は消滅してしまいます。
それはもう女でさえもどうすることも出来ません。
女の気まぐれから、男は禁忌に触れてしまった。
早く早く早く早く、早く、男から返してもらわなければいけない。
けれども、この世界でも、男は別の女と結ばれてしまいました。
友人として近くに居続けた女は、嫉妬と羨望に心を蝕まれながらも、機会がある毎に男から言葉を引き出そうとしていました。
男はついぞその言葉を口にすることなく、呆気なく逝ってしまいました。
*
ある世界で、その女には婚約者がおりました。
結婚式は間近に迫っていました。
婚姻届を見ながら、女はマリッジブルーになっているかのように暗い表情をしていました。
女は婚約者の前では明るく取り繕っており、婚約者は一切それに気が付いていませんでした。
ある時、婚約者が出張に出掛けました。
既に同棲していた女はそれを快く見送り、婚約者が出掛けるとため息を1つ吐きました。
1泊2日の出張でした。
その夜、家で1人で過ごしていた女の元に電話がかかってきました。
警察からでした。
婚約者との関係を聞いてきたので、婚約者だと言いました。
落ち着いて聞いてください、と警察は言いました。
貴女の婚約者がある男に刺されて、病院に搬送されました。
婚約者の方は貴女とは別の女性と旅館で過ごしていた時に、その女性が付き合っている方に襲われたようです。
その女性も、付き合っていた方に刺されたようです。
警察から浮気相手の女性が付き合っていた男の名前を聞いた途端に、女は力を失って座り込んでしまいました。
女は男に会いに行きました。
男は突然現れた女に驚きつつも、次の瞬間には嘲笑いながら言いました。
貴女を幸せに出来るのはあんなクズではない。
*
ある世界で、ある男が死神と契約をしました。
昔、自分を救ってくれた天女が忘れない。
また会いたい。
天女を自分の物にして、2度と自分の元から離れられないように、永遠に自分の物にしたい。
神に祈り続けた男の目の前に現れた死神に、男は懇願しました。
死神は聞きました。
どんなことでも出来るのか、と。
天女を自分の物に出来るなら、と男は答えました。
男から見えないところで、死神はにやっと醜悪な笑みを浮かべました。
ならば、力を授けよう。
これで天女を呼べばいい。
お前の中には天女の血が生きている。
その血が天女を呼んでくれるだろう。
ずっと空を見上げ続けて、天女が見えた瞬間に引きずり下ろして天女の身体に己の存在を刻み付けながら心臓を抉ってその肉を食べればいい。
そうすれば、お前が希って病まない天女はこの先ずっとお前が死んでもずっとずっと永久に、お前の物になるだろう。
男は天女を引きずり下ろし、男の屋敷の地下牢の奥に拐いました。
決して天に戻らぬように、互いの手首に鎖を付けて、決して自分を置いていかぬように。
毎日夢に見るほど慕っていた相手に触れられる喜びに男は夢中になり、呆然とする天女の身体に己の存在を無理矢理刻み付けた瞬間に。
男は天女の心臓を抉りました。
そして恍惚とした表情で、その血を舐めて口いっぱいにかぶり付きました。
男は意識が薄くなることを感じながらも、これで天女を自分の物に出来たという幸福感で満たされていました。
男は天女を抱き締めながら、眠りにつきました。
R15のガイドラインを読んで、大丈夫かなと思ったのですが、引っ掛かるようであればご連絡下さい。