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童貞を殺す服を着ている奴を殺す服

作者: チャンドラ

 ーー童貞を殺す服

 そう言われている服が存在する。

 殺すと言っても生物的に殺すわけではない。

 女性に対して免疫のない男を怯えさせたり、警戒させることなく距離を詰めて捕食できる、肉食女子が清楚さを装った服装のことである。


 代表的な服装として、腹部がコルセット状になっているハイウエスト上の暗色のスカートに白いブラウスという出でだちである。


 そして、童貞であるこの俺、月島明石つきしまあかしは過去に一度、見事に童貞を殺す服に殺された。

 一年前の大学二年のときの研究室の飲み会にて、その女性と出会った。彼女はまさに先ほど説明しているような童貞を殺す服を着ていた。

 その女性の名前は山口真紀やまぐちまきという俺とタメの女性であった。


 特段、真紀は美人という女性というわけではなかった。

 黒髪で地味な顔立ち。

 しかしながら胸はなかなか大きかった。

 童貞を殺す服はボン! キュッ! ボン! が強調される服である。

 平静を装いながらも俺はちょくちょく真紀の胸を見た。

 飲み会で隣の席になった真紀は俺に対して友好的に話しかけてきた。

「明石くんってさー、綺麗な顔してるよね。女装したら似合うんじゃない?」

 まじまじと顔を近づけ、そう話した。

 ち、近い。

 俺は不甲斐なくもとても緊張した。


 飲み会の後、真紀と連絡先を交換し、それなりに親しくなった。

 そして、俺は一世一代の告白をした。

「真紀さん! 俺と付き合ってください!」

「ごめん。うち、彼氏いるから、無理」

 そんなこんなで俺は振られた。

 大学三年になり、俺と真紀は別の研究室になり、話すこともなくなった。


 それ以降、俺は一人寂しいキャンパスライフを送っている。

 いやぁ、それにしても大学生になれば自然と彼女ができるもんだとおもってたなぁ......

 つくづくそう思った。

 一体全体、俺には何が足りないのだろうか? 容姿? コミュニケーション力? お金? それとも全部?

 考えれば考えるほどネガティブになっていった。

 くそ、女はいいよな。童貞を殺す服を来ていればちやほやされるんだから。

 特に理由もなく俺はスマホで童貞を殺す服と検索をした。

 調べていくと、まさに真紀が飲み会のときに着ていたような服の画像が見つかった。

 真紀が俺に顔を近づけてきた時のあの光景を思い出した。

 あの時のことを思い出すと俺は悶々としてくる。

 その後も童貞を殺す服に関するサイトを見ていると、あるサイトが目に入った。

 ーー童貞を殺す服を着ている奴を殺す服

 なんだそりゃ。早口言葉か。

 サイトのアクセスすると、童貞を殺す服を着ている女性をオトす服をお作りいたします!

 特別価格、一着一万円! 送料無料!

 くだらない。そう思いつつも、俺は気になり、気の迷いか注文をしてしまった。

 三日後、その注文品が届いた。

 中を開けると、なんの変哲もない、白いシャツであり、真ん中にでっかく『TD』の文字がプリントされていた。

 なぜか説明書もついていたが、めんどくさいから読まないでおく。

 ぶっちゃけ、ダサい。

 やっぱ詐欺だったのかな。これ。

 まぁ、大学で話すような友達もあんまりいないし、買ってしまってもったいないし、着ていくか。


 俺は童貞を殺す服を着ている奴を殺す服を着て、大学に向かった。

 昼ぐらいに大学についたので、昼ごはんを買いに行こうと購買に訪ずれた。

 するととある女性に目がいった。

 メガネをかけた、ツインテールの女性である。そこそこ美人(少なくとも真紀よりかは)だったのだが、それ以上にその女性も童貞を殺す服を着ていた。

 

 まぁ、どうせインチキの服だし、何もないんだろうななどと考えながら、おにぎりコーナーに向かおうとすると、そのツインテールの女性が俺に近づいてきて、俺に話しかけてきた。

「初めまして、三日月玲みかづきれいと言います。あなたに一目惚れしました。よろしければLINE交換してくれませんか......?」

 えぇー!? 俺は内心とても驚いた。

 まさか、この服本物?

「え、あ、はい。いいですよ......」

 内心、驚きつつも平静を装い、LINE交換した。

 うっふふふ。

 女性の方から連絡先、教えてください! なんて言われるの初めてだ!

 今日は良き日なり。


 らんらん気分になりながら、俺は家に帰宅し、LINEを送った。

『お疲れ様です! 三日月さん。今度の日曜日、よかったら会わない?』

 しかし、三日月さんからLINEが返ってくることはなかった......

 その次の日は既読がついたものの返信は返ってこなかった。

 その二日後、俺は再び童貞を殺す服を着ている奴を殺す服を着て大学に赴いた。

 まるで不審者のように大学を徘徊していると、三日月さんを見つけた。

 

「三日月さん!」

「......」

「LINE送ったんだけど、何か俺悪いことしたかな?」

「ごめんなさい、あの時はどうかしてたの。よく考えたらあなたそこまでかっこよくないので、前に言ったことは忘れてください」

 ええー!?

 三日月の野郎はそう言うと、どこかに移動した。

 何なんだ?

 一体全体何をしたっていうんだ!?


 その日、授業を受ける気力もない俺はサボって家に帰宅した。

「うう......なんでだ......」

 すると、床に置いてあった、童貞を殺す服を着ている奴を殺す服の説明書に目が入った。

 俺は読んでなかったのだが、読むことにした。

 この服は女性が童貞を殺す服を着ている時ではないと効果を発揮しないのでご注意ください。


 全く役にたたねぇじゃねぇか。

 よし、これをハードオフに売りに行こう! ハードオフならオフハウス! オフハウス!


 






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