第一話 もう一人のアルト そして
ある日西暦856年に迷い込んだ兵士アルトは見知らぬ女剣士に出合う。
今自分がどこにいるか理解できずに困惑すアルトだったが、目の前には自分に似ていた剣士が
死んでいた。
※この話の前に序章があります、まず序章からお読みください。
見知らぬ女戦士がこちらを見ている。
無言でこちらを見ている、何故だろうか冷たい眼差しというより冷静な目だ。
少しずつ彼女が大きく見えてきた、こちらに近づいている。
よく見たら案外可愛らしい顔をしていた、剣士の防具を身に着ける程だからもう少し厳つい顔を想像していたのだ。
「あんた、アルト?生きていたのね。早く本部にこのことを報告しましょう、ほら剣持って!」
俺の名前を知っている?誰かと勘違いしているのだろう、早く教えてあげよう。
にしてもあまりにも勘違いが酷い気がするのだが、ここまで人違いされたことはないな。
そしてここは一体どこなんだ?早く最高指導者の下に行かないといけないんだ。
「あの、誰かと勘違いしていませんか?確かに俺の名前はアルトですがあなたが知っている人とは違います。」
「はぁ?あんた妖精の魔法にでもかかったの?記憶でも奪われた?」
何をこの人は言っているのだ?妖精?まさか妖精族のことか。
妖精族とは俺たち連合国の敵、同盟国のことだ。同盟国には連合国と同じように複数の種族で構成されているのだが、その同盟国に所属している種族が「妖精族」なのだ。
いやいや、そんなことは今はどうでもいい、今の状況が全然理解できないのだ。
「いや、だから俺はあなたが知っているアルトさんではないんですよ、もしかしてここで死んでいる人がアルトさんですか?」
なんか、自分の名前に“さん”付けは少し気持ち悪いな
「おい、お前目も奪われたのか?どこに死体があるんだ?」
「え?ここに....」
-え?死体が消えている。おかしいさっきまで俺の顔に似ている人がここに....-
(俺の顔?、そうかやっぱりあの人がこの人が言う「アルト」さんだ。これは少しまずいな、でもこれはこの世界について知れるチャンスかもしれないぞ。俺がこの人になりきれば、なんとかなりそうだ。聖剣のこともあるしな。)
「あ、そうだごめん、ごめん。少し頭打って記憶が飛んでいたんだ。」
いい考えだと思ったが駄目だったらしい。
彼女は俺に呆れた顔をしていた、変な嘘をついてばれたのだろうか?
どうしようか、どんな言い訳をすればいいか、めちゃくちゃ睨んでくる。
「あんた、アルトじゃないね。私に嘘は付けないよ、さぁあんたはどこの誰か教えてもらおうか?」
あぁ、まずいことになったな。しかし俺の聖剣がここにあるのは気になるしあの死体の行方も気になるし、それにここはどこだ?
俺の時計は西暦856年20;09を指していた、俺はまだ気付いていないのだ。
To be continued....