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村人Aでも勇者を超えられる。  作者: 日向日影
第一章 どこにでもいるごく普通の少年
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03 いつもの光景

「馬鹿者ッ!!」


 当然バレた。

 せっかく捕まえたハネウサギをまる焦げにしたショックから立ち直った二人は、口裏を合わせて森を焼きかけた事は絶対にバレないようにしようとした。しかし『モルデュール』の爆発と木が燃えた時に出たボヤは村からもバッチリ見えており、村に帰って来た二人は即座に連行され、長老の前に正座をさせられてお説教タイムに突入した。

 連行された先は他の家よりも一回り大きく、この村の長老の家であり身寄りの無いアーサーとアレックスも世話になっている家だ。

 科学都市では当たり前のように鉄筋コンクリートの家が主流だというのに、未だに時代錯誤な完全木製。いくら時代遅れの『ジェミニ公国』といっても、ここまで古いのはこの村くらいだろう。アーサーとアレックスはこの村の時代遅れは一〇〇パーセント長老の趣味だとみている。

 二人の前に座るそんな長老だが、歳は六五とそれなりにいっている。長い髪や髭は全て白く、顔には年寄り特有のしわがある。しかし気力というものは全く衰えておらず、現に今もアーサーとアレックスは硬直して全く動けない。


「(このじーさん元気すぎるよ……。いつになったら年相応になるんだ……?)」

「(んなこと俺が知るかよ……。つーかそもそも人間か? キングゴリラの突然変異って言われた方がまだ納得できんぞ)」


 そんな硬直状態でもひそひそとくだらない会話を続けられる辺り、この二人はかなり肝が据わっているのかもしれない。

 そんな態度の二人を目の前にして長老は呆れと諦めの混じった溜め息をつくと、一言目とは違って重々しく口を開く。


「全く貴様らというやつは……どうして薪拾いに行って山火事を起こしかけるのだ」


 長老の言葉に、二人の目が一瞬輝いた。

 目線を合わせて意志確認をするが、二人に迷いはなかった。

 怒声の後の呆れた質問。今までの経験から、ここで上手く答える事ができれば二人の罪はぐっと軽くなるターニングポイントだ。

 二人は同時に頷く。

 やるべき事は既に決まっている。

 少しでも罪を軽くするために、互いの口裏を合わせてこの状況を脱する事だけだ!

 二人は長老にバレないようにさらに声を押し殺して会話を始める。


「(まずは俺が……)」

「(いや待てアーサー。そもそもの原因は俺だ。ここは俺に任せてくれ)」

「(……大丈夫なのか?)」

「(俺を信用しろ。最低でもお前だけの無実は絶対に勝ち取ってみせるぜ!)」

「(アレックス……。……分かった。頼むぞ!)」

「(おう!)」


 そしてアレックスはアーサーの無実を証明するために口を開いて、


「待ってくれよじーさ……長老! 森を燃やしたのは俺じゃねえ!!」


 早々に裏切った。


「おまっ……ふざけるなよアレックス! そもそも最初に狩りをしようって言い出したのはお前だろ!! じー……長老! 俺はアレックスに無理矢理付き合わされただけなんだ!!」


 裏切られたアーサーも、即座にアレックスに罪を擦り付けにかかる。


「テメェアーサー! 全部俺に擦り付けるつもりか!?」

「うるさい! そもそも俺は釣りにしようって言ったはずだ!!」

「サボろうとしたのは同じだろうが!!」


 もはや説教されている事すら忘れて取っ組み合いを始める二人に、本日二度目の長老の怒声が飛ぶ。


「いい加減にしろッ!! 見苦しい言い争いなどしおって! ……あと貴様ら、裏では私の事をじーさんと呼んでいるようだな?」


 アレックスの裏切りよりもマズイ状況になりつつあると感じたアーサーが、素早く対応を始める。


「待ってくれじーさん!」

「いよいよ隠す気すらなくなったようだな……」


 決定的に何かを間違えた気がしなくもなかったが、アーサーの頭はそんな些細な事を気にできない程に切羽詰まっていた。それほど長老を怒らせるのは恐ろしいのだ。


「よく考えてくれ。本当に蔑称として呼びたいなら、俺達は長老の事をじーさんじゃなくてじじいって呼んでるよ。これは俺達なりの尊敬の呼び方なんだ!」

「尊敬、ねえ……」


 苦し紛れの一言のせいで色々と穴だらけだった。そもそも長老をじーさんと呼んでいる事を認めてしまっている。しかし見切り発車をした当の本人は、これで大丈夫だと確信している。どこまでも救いがなく、とんでもなくしょうもない話だった。


「(ナイスだアーサー。これでじーさんの評価を上げられたはずだ)」

「(これで罰も軽くなると良いんだけどね)」


 それでもお気楽二人組はこれで罰が軽くなるとわりと本気で信じているのだが、そんな二人に対して長老は呆れたように溜め息をついた。


「はぁ……。もう良い、お前達に罰を与える」


 長老の罰という一言に、今までチャランポランだった二人がビクゥ!! と背筋までピーンと伸ばして正座をし直した。

 もはや長老もこの二人には呆れ果てているのだが、それでもこうして説教をする辺りかなり良い人のはずなのだ。

 その事は二人にも分かっている。そもそも身寄りのない上に問題ばかり起こしている自分達の面倒を見て貰っている時点で、アーサーもアレックスもそれなりに感謝はしているのだ。

 ただそれとこれとは話は別。長老の罰はわりとガチの方で死んでもおかしくないものが多い。

 先刻話に出てきた終わるまで眠れない休めない水汲み一○○往復や、薬草をとるために十数メートルある崖を命綱無しで登らせたりとか、とにかく色々である。

 そんな二人の緊張を解くように長老は優しい声音で、


「そう身構えるな。お前達の思いを汲んで、罰は軽くしてやる」

「ちょ、長老……!」


 二人は目線で歓喜を上げる。


「(やったぜアーサー! 俺はもう長老の事をじーさんなんて呼ばないぜ!)」

「(俺も俺も! これからは尊敬の眼差しで見ちゃう!)」


 どうせ二人は数分後にはケロッとして忘れるだろうが、今だけは確かに長老に感謝していた。

 そんな二人の尊敬の眼差しを受けながら、長老は二人への罰を告げた。


「三日間飯抜きじゃ」

「「表出ろやじじい! 白黒つけてやるッッッ!!」」

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