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村人Aでも勇者を超えられる。  作者: 日向日影
第n章 終わりの果ての世界 Road_to_the_End.
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(無題)Let's_Save_the_World.

 上空で大爆発が起きた直後、アーサーとリディの傍に魔法陣が浮かび上がった。そこからスゥとレミニアが現れる。アーサーの仲間の姿にリディも警戒を解いた。


「リディさん、レン君はどうしたの!?」

「回復中だ。五分か一〇分、このまま休ませる必要がある」

「それなら時間まで私が守ります。レミニアさん、魔力を貸して下さい」


 そしてスゥは前に出ると、両手を広げて自身を含む四人を覆うように『断絶障壁』(イージス・ウォール)を展開し、レミニアが彼女の体に触れて魔力を流す。するといつものクリアブルーではなく紫紺の障壁が現れた。

 怖くないと言えば嘘になる。しかし目を閉じて半分眠っているかのように座り込んでいるアーサーを見て、その恐怖を必死に押し殺す。


(……約束通り、私がレン君を守るよ。だからレン君もみんなを守ってね……?)


 スゥがアーサーを信じるように、外側でも彼を信じて戦っている者がいた。

 サラは空を浮遊し、掌からエネルギー弾を放ってランチャーとボウを攻撃していた。そして紗世(さよ)も四本の尾で二人を攻撃していた。サラのアドバイス通り四本にする事で、アーサーが腕を一本消し飛ばしたかいもあり、再び掴まれてもすぐに解除して投げ飛ばされる事はなかった。

 二人の目的は倒すよりも足止めに近い。ボウの方はタイミングさえあれば倒そうとも思っているが、ランチャーを倒す事ができないのは分かっている。その可能性があるのはもはやアーサーしかいない。

 対してランチャーは少しずつだがスゥ達の方に足を進めていた。ボウは足元からいくつもの石の礫を操って浮かせると、無駄な部分を落として棘のような形状にしてサラと紗世、さらにスゥ達の方にも飛ばす。そこまで強い攻撃ではないので三人とも防げるが、これが地味に効いて来る。特にランチャーの足止めが出来なくなったのは致命的だった。すでにスゥの目の前まで移動していたのだ。

 スゥは拳を振りかぶるランチャーと目が合った。歯を食いしばり、その衝撃を受け止める。流石に一撃で砕けるような事は無かったが、未だかつてない衝撃に障壁が軋む。それは今まで破られた事の無い『断絶障壁』が破られる確かな予感をスゥに与えるには十分だった。そして一寸の隙が魔術に必要なイメージに影響する。拳が振り下ろされる度に障壁にヒビが入る。


「くっ……サラさん、紗世さん!!」


 スゥが声を上げる前から二人は行動を起こしていた。二人は同時にランチャーの背後から襲い掛かる。が、その直前に横から飛んできた岩石が紗世の体を吹き飛ばし、彼女の体がサラに衝突して二人とも吹っ飛んでいく。二人が仲間のフォローに回ったように、ボウもランチャーのフォローに回ったのだ。無論、彼らにあるのは利害関係で『ディッパーズ』のような絆は無いが、それでもランチャーを有効活用するというボウの徹底した裏方作業は効果的だ。

 直後、ランチャーが振り下ろした拳によって『断絶障壁』が破られた。今度こそ四人を殴り飛ばすために拳を引き絞るランチャーを見て、リディはアーサーの肩とスゥの背中に触れて叫ぶ。


「ボクに掴まれ!!」


 ほとんどレミニアだけに飛ばした声だった。彼女が自分に触れたのを確認して、リディは閉じていた右目を開いた。そして遠くの空間と自分達の空間を入れ替えて移動する。


「り、リディさん!? これは一体……っ!?」

「離れた空間と空間を入れ替える能力だ」


 答えるリディは右目を抑えていた。どうも痛みを堪えているようで、手を退けるとまた右目は閉じていた。


「回復まであと少しだったのに無理して使った! 次の攻撃は躱せないぞ!!」

「ならもう一度障壁を展開して時間を稼ぎます! レミニアさん、力を……っ!?」


 会話を交わしている間に、ランチャーもこちらに向かって来ていた。

 急いで障壁を展開し直そうとしたスゥとレミニアだが、それを妨害するように足場が割れた。再びボウがこちらの動きを妨害したのだ。

 その一瞬が致命だった。もはや障壁の再展開は間に合わない。

 ランチャーの必殺の一撃が振り下ろされる直前、スゥは自分の中で恐怖より大きくなる感情を自覚していた。


(私には守るしか取柄が無いのに……それが出来なきゃここにいる意味がない!!)


 不甲斐なさが胸中に広がる。

 自分が他のみんなみたいに戦いに向いた性格ではない事も、戦う事ができるような力が無いのも分かっている。

 だけどせめて守りたい。自分以外の多くの人を守ろうとする彼らを、彼ら自身の代わりになんとしても。


(もっと力をっ……他の何を犠牲にしても良いから、リディさんみたいにみんなを守れる力が欲しいッ!!)


 そう望んだ。

 望んでしまった。

 何かと引き換えに力を望んで、そして偶然か必然か、それを叶えてしまう条件がスゥの手の中に揃っていた。

 その瞬間、左目に変化があった。まるで隠している右目と同じように、少し違う紅の色に染まる。そしてさらに金色の六芒星が光った。


(これは……)


 それはまるで、左目だけ別の場所を見ているような感覚だった。

 視界に映っているのは、ステンドグラスのような細かく区切られたガラス。そこにいくつかの光景が広がっている。


 ―――アーサーがランチャーに殴られて死ぬ。

 ―――リディがアーサーを庇って死ぬ。

 ―――レミニアがアーサーを庇って死ぬ。

 ―――スゥがアーサーを庇って死ぬ。

 ―――ランチャーの拳の当たり所が良くて耐える。

 ―――ランチャーの攻撃は外れて地面を穿つ。


 他にも、他にも、他にも。

 ガラスの一枚一枚に、これから起こり得る『未来』の可能性が映し出されている。スゥはそれを直感で感じ取った。そしてそれが正しい事も理解できてしまった。


(……それなら迷う必要はありません。私は選び取ります。誰も傷つかないで済む『未来』を!!)


 それを選び取った瞬間、他の可能性を映していたガラスが砕け散った。そして選び取った一つの『未来』が眼前に広がると、それが現実とリンクする。

 先程のボウの影響で脆くなっていた足場が今度は自然に崩れ、アーサーの体がグラついた事でランチャーの拳は当たらず地面を穿つ。リディやレミニアは唐突な奇蹟に驚いた顔をしているが、スゥはそれとはベクトルの違う驚きに満ちていた。


(凄い……この力があれば、どんな困難も……ッ!?)


 珍しく調子に乗った直後、鋭い痛みが左目に走った。触れて自分が血の涙を流している事に気付いた。これが望んだ力に対する代償なのだと遅れて気付く。

 リディとスゥの力はもう使えない。レミニアの転移も間に合わない。

 凶器が、迫る。





 ◇◇◇◇◇◇◇





 ずっと目を閉じて回復に努めていたアーサーだが、何が起きているのかは分かっていた。スゥとレミニアが援軍に来てくれた事も、何度も何度もボウがここぞという場面で横槍を入れてくる事も。


(……ボウを、倒さないと……ダメだな)


 静かに結論付けるのに時間は要らなかった。

 最大限ではないが、十分に回復したと判断してアーサーは意志を込める。


(もう、十分休んだろ……動け、俺の体!!)


 そして、瞳を開けた。

 どんな状況でも変わらぬ『希望』に満ちた魂がそこにはあった。体を起こしながらありったけの魔力を集束させた右の拳を突き出す。互いの右拳が衝突し、凄まじい衝撃が撒き散らされる。


「へっ、ようやく起きたか!!」

「みんなのおかげで回復したからな! これ以上、俺の仲間は傷つけさせないぞ!! 『珂流(かりゅう)』―――『象掌(エレファント)底砲』(・インパクト)ッ!!」


 入れ替えるように左手を突き出してランチャーを吹き飛ばす。やはり片腕を奪ったのは大きい。明らかに攻撃が当たりやすくなっている。


「みんな、守ってくれてありがとう。早速だけどリディ、動けるか?」

「ああ……」


 隣に立つリディはそう返答し、閉じていた右目を再び開いた。すでに紅の瞳の中に金色の六芒星が輝いている。


「ボクの瞳力(どうりょく)も戻った。いつでも動けるぞ」

「なら早速やるぞ。まずはボウだ!!」


 今一度、この場にいる他の五人と『桜花絢爛(クロス・リンク)』で繋がり、再度『星蓮舞奏』アストラル・カルンウェナンを発動させて二人は同時にボウに向かって走る。

 ボウは動かなかった。ただ足元の岩石を操作してこちらに飛ばして来る。アーサーはそれを殴って砕くが、ボウは粉々になった破片すら操って攻撃して来る。それをまともに受けたのはアーサーの少し後ろを疾走していたリディだ。アーサーから離れて大地を転がる。


「くっ……サラ、紗世!!」


 近くにいた二人は呼びかけに応じ、三方向から三人は同時に襲いかかる。しかし攻撃が当たる直前、ボウの周りの地面が爆ぜた。大量の細かい岩石が四方八方に飛び散り、それがショットガンのように三人に被弾して吹き飛ばす。

 ランチャーに隠れて目立たないが、ボウはこの時代のラプラスに勝っているのだ。強敵な事に間違いは無い。しかしこの数秒で倒さなければ吹き飛ばしたランチャーが戻って来てしまう。


(どうする!? 直接殴るのはもうダメだ。でもこんな不安定な体勢じゃ砲撃だって当たらない!!)


 思考している間にも後ろに吹き飛ばされているアーサーとボウの距離は離れている。

 どう動くか必死に考えて、不意に後ろへ意識が向いた。そこには一足早く吹き飛ばされたリディがいる。

 彼女を見た瞬間、頭の中に打開策が稲妻のように閃いた。


「リディ!!」


 アーサーは彼女の名を叫ぶとボウに背を向けた。そしてリディに向かって紅蓮の焔が渦巻く拳を引き絞る。

 その光景を見ていたボウは鼻で笑った。


「やはり同じだな。誰も半端者など信じない」


 ボウにはその光景が、アーサーが混血のリディを殺そうとしているようにでも映っているのだろう。

 しかし、


「いいや……」


 リディの口から否定の言葉がすぐに出た。

 不適な笑みを浮かべて、彼女は目前に迫るアーサーではなくボウの方を見る。


「アーサーはボクを信じてる」


 その直後、リディは右目の力を使った。有無を言わせずリディとボウの位置が入れ替わる。つまり、リディがアーサーの背後に、ボウがアーサーの正面にいる形で。

 それは不可避の一撃だ。


「なっ、これは……!?」

「吹き飛べ―――『廻天衝焔滅焦嵐拳ドリルスマッシュ・エクスハティオ』ォォオオオッ!!」


 ゴウッッッ!!!!!! と渦巻く焔がボウの体を飲み込んで消し飛ばした。一切の躊躇なく、仇を打倒したアーサーだが緊張の糸は解かない。むしろ今までで最大の警戒心を抱いて最後の敵を睨む。それはリディと体勢を立て直したサラと紗世も同じだった。


「アーサー! 強化をお願い!!」

「任せろ! 『獣化(じゅうか)()制限解放カルンウェナン』―――!!」


 サラの右手が白い光に包み込まれて巨大な爪が形成されていく。さらに紗世は四本の尾を束ねて一本の尾にし、アーサーは手刀に構えた右手に魔力を集束させて引き絞る。それもリディを三方から取り囲む形でだ。


「正真正銘、最後の一回だ! もう回復を待つ時間は無い。これで決めろ!!」


 再度、リディが右目の力を使った。そしてランチャーと位置を入れ替え、直後に三人が三方向から打撃を加える。

断魔絶爪(だんまぜっそう)』『死黒蛇尾(ブラックマンバ)『白犀刺突剣』(ライノ・スティンガー)

 全て威力も貫通力も申し分ない。だが貫けない。アーサーとサラの二人の力を合わせた『断魔絶爪』だけではなく、効くはずの『珂流(かりゅう)』の攻撃でも全く通用しない。

 理由は一つ。ランチャーの褐色の肌が熱を帯びたように赤く色を変えていったのだ。


「『訣魁(けっかい)』だ。これで二〇年ぶりに本気が出せる!!」


 元々俊敏な動きだが、それは正に目にも止まらぬ速さだった。野性的な第六感を持つサラ、『魔族堕ち』の特性として魔力感知に長けた紗世、超直感とも呼べる戦闘勘を持つアーサー。異変を察知した三人は防御の体勢は取れたが、回避はできずに高速で蹴り飛ばされた。

 腕を交差させたアーサーは後方へ吹っ飛びながら考えていた。これはこの場にいる全員で力を合わせても勝てない。方法があるとすれば一つだ。

 それ以上は迷わなかった。交差した腕を解き放ちながら叫ぶ。


「これで最後だ―――『最奥の希望をそ(インフィニティ)の身に宿(・フォース)して』!!」


 二度目になる『無限』の力の行使。おそらく一度目よりもずっと短い間しか発動できないのは分かっている。しかしランチャーが発動した『訣魁』も瞬間的には凄まじい力を発揮できるが、長続きはしない代物だ。

 勝敗の行方は分からないが、これだけは確実に言える。おそらく決着まで時間はかからない。


「本気を出せるのは最高の気分だ! やっぱりお前だけだ、お前だけが俺を楽しませてくれる!!」


 ランチャーは味方がやられて一人になったというのに、やはり笑みを浮かべていた。これが膂力の代わりに知力を捨てる呪術を使い続けた代償なのか。もはや彼の頭の中には戦いしかないのかもしれない。

 しかしアーサーは違う。戦う事でしか救えない道だったから拳を握って来た。自分自身で選んだ道だが、それでも戦わないで済むに越したことはないという考えだって持っている。

 だけど今回も戦わないといけない。だからアーサーは両拳を握って応じる。


「互いにもう長くねえのは分かってる! これで決着だ!!」

「望む所だァ!! 『加速連撃(ジェットラッシュ)()灰熊天衝拳(グリズリースマッシュ)』ッ!!」


 またしても至近距離で壮絶な殴り合いが始まった。ランチャーは元々防御なんて考えていない上に、片腕だけだというのに一発が重すぎるせいで『灰熊天衝拳』一発だけでは防げない。だからこそお互いダメージ覚悟で殴り合うしかなかった。

 このままでは先に倒されるのは自分の方だと悟ったアーサーは一度距離を取った。そして手刀の形に構えた両手を引き絞る。


「―――『加速乱撃(ジェットラッシュ)()大蛇投擲槍(アナコンダジャベリン)』ッ!!」


 今度は無数の『大蛇投擲槍』を操って一方的に攻撃を始める。しかしランチャーはもはやダメージなど気にしていなかった。全身の至る所から血を噴き出しながら、それでもこちらに向かって来て叫ぶ。


「チマチマ攻撃してねえで、さっきのとっておきを使って来いよ!!」


 ランチャーの言う事にも一理あった。確かにこのままの状況を続けていても意味は無い。倒す為には左腕を吹き飛ばしたような渾身の一撃が必要だ。

 彼の口車に乗った訳ではない。ただ彼を倒す為だけに、アーサーはありったけの魔力を右手に集束させて腹の底から叫ぶ。


「行っっっけェェェええええええええええええええええ!!」


 全力で振り抜いた右手から槍状の魔力弾が『珂流』も相まって凄まじい速度で撃ち出された。しかし真っ直ぐ飛んで行くその攻撃をランチャーは身を逸らして初めて躱し、拳を引き絞ってアーサーに迫る。

 渾身の一撃を躱されたアーサーもすでに次の行動に移っていた。両手に『無限』の魔力を集束させ、虎爪の構えを取って前に踏み出す。そしてランチャーの拳をダッキングして躱すと、無防備な胸に上下で反対に構えた両手を放つ。



「―――『古代虎王掌底砲』スミロドン・ロードインパクトッッッ!!!!!!」



 ドッォォオオオン!! と凄まじい衝撃がランチャーの体を撃ち抜いた。外傷は目立たなくても内部には甚大な破壊をもたらしており、ランチャーの口からおびただしい量の血が吐き出される。

 だがそこまでだ。確かにダメージを与える事には成功したが、倒すまでには至らない。


「ごふ……っ! ……はっ、耐え……たぞ。俺の勝ちだ!!」


 ランチャーが高らかに勝利宣言したのはアーサーの変化が理由だった。二度目の『最奥の希望をその身に宿して』の限界時間が訪れて素の状態に戻ってしまっていたのだ。さらに全身から力が抜け、仰向けの状態で背中から倒れた。これではもう勝ち目がない。


「ま、だだ……」

「……相変わらず諦めが(わり)いな。だがこの拳を振り下ろせば終わりだ」


 しかしアーサーは諦めない。歯を食いしばり、ランチャーを見上げる。

 だが戦いの終わりだ。ランチャーは決闘の終わりを示すために、アーサーの命を確実に刈り取る拳を振り上げる。


「じゃあな……俺唯一の好敵手(ライバル)!!」


 対してアーサーは開いた右手を天に伸ばした。

 そして、叫ぶ。


「まだだ―――もっと加速しろ!!」

「なに……?」


 不可解な言葉にランチャーの体の動きが止まった。ランチャーはアーサーが自分を見上げているのだと思っていたが、実際に彼が視線を向けているのはもっと上、ランチャーの上空だったのだ。

 咄嗟に見上げる事でランチャーもようやくそれに気が付いた。自分達の上空を黒く光る何かが超高速で何度も折れ曲がりながら加速している。それは先程アーサーが撃ち、ランチャーが躱したはずの『投擲槍』だ。


「……まさかお前、これを狙っていたのか!?」


 ランチャーは躱したと思っていたのだろうが、アーサーにはそもそも当てるつもりが無かったのだ。『無限』の魔力を内包した『投擲槍』はそのまま当てても強力だが、それ自体の魔力で何度も何度も加速すれば、その分のエネルギーが蓄積されていく。おそらく気づかれるのは時間の問題だっただろう。音速の壁を超えた『投擲槍』は衝撃波を発生させて肉食動物の雄叫びのような轟音を鳴らし始めた。ここまで来れば気づかれても躱すのは無理だ。

 直後、それを待っていたアーサーは笑みを浮かべ、右手を握り締めながら皮肉を込めて叫ぶ。



「じゃあな―――『古代蛇王投擲槍』ティタノボア・ロードジャベリンッッッ!!!!!!」



 ズッッッドォン!!!!!! と。

 天空から超音速で落ちてきた光の槍が躱す暇も与えずランチャーの胸を穿った。地面も砕かれて吹き飛び、近くにいたアーサー自身もその衝撃で吹き飛ばされた。

 土煙が晴れ、今の一撃でできたクレーターの中央にランチャーは倒れている。その胸には大きな穴が空いていた。本来なら全身が吹き飛んでいただろうに、胸の穴以外に目立った傷が無いのは流石といった所か。


(おわ、った……?)


 吹き飛ばされた先で、アーサーは星々と彼らの施設の残骸が降り注ぐ空を見据えて息を吐いた。

 そして、続けてこう思う。

 確かにこの時代のラプラスが言っていたように戦いには勝てた。しかしこれは新たな始まりに過ぎない。むしろ本番はここからだ。

 確定した未来を覆す。

 その使命はじんわりと、戦後の余韻と共に胸の内側に刻み込んだ。

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