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村人Aでも勇者を超えられる。  作者: 日向日影
第n章 終わりの果ての世界 Road_to_the_End.
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(無題)Rewind.

 八人の失踪について、残された彼女達が気付くのは時間の問題だった。それが分かっていたクロノは隠すような真似はしなかった。

 朝食の席に八人以外の全員が集まった時点で、不審に思って憶測が飛び交う空気の中でクロノが良く通る声で短く言い放つ。


「ヤツらは私が未来に送った」


 爆弾発言をした後もしれっとした態度を貫くクロノ。ミオ以外の八人は開いた口が塞がらないといった感じで唖然としていた。


「えっと……未来って未来? 比喩とかじゃなくて、タイムトラベル的なやつ?」


 全員の心の声を代弁するように、サラが半分笑いながら尋ねる。自分自身でも言っていて馬鹿らしいと思っているのだろう。

 しかしクロノは真面目な顔で頷く。


「今頃は二〇年後の世界にいる。お前達も知ってる『MIO』が確定させた未来だが、色々あって世界は崩壊した。今アーサー達はその終わった世界を救いに行っている」

「待ってクロノ。ならどうしてワタシ達は送ってないの? 自慢じゃないけど紬と同じように忍術を使えるワタシならどんな状況にだって対応できたはず」

「理由があった。それに無論、これから送る。お前達を送るのは最終決戦の目前の時間だ。お膳立てはアーサー達が済ませているはずだ」


 はずだ、なんて曖昧な言い方をしているが彼らが上手くやっている事は分かっているし決まっている。ただし全てが秘密だ。こんな隠し事ばかりで陰謀に関わってばかりだから、いつまで経っても『ディッパーズ』に真に馴染めないのかもしれない。事態を俯瞰し過ぎるあまり、昨夜の女子会のように遠くから見守る事しかしない。

 傍観者としての立場か、敵意を向けられるか。

 五〇〇年前から変わらずクロノの周りにはそれしかない。唯一の例外と言えば、アーサーとその両親くらいか。その事実を意識して自嘲気味に笑いそうになるのを堪えて、クロノはわざとらしく咳払いした。


「二〇年後の世界を救え」


 近衛(このえ)結祈(ゆき)、サラ・テトラーゼ=スコーピオン、レミニア・アインザーム、フィリア・フェイルノート、カヴァス、ソラ、水無月(みなづき)紗世(さよ)、アクア・ウィンクルム=ピスケス、そしてミオ。

 居並ぶ面々を見渡して、クロノは宣言する。


「二〇年後の世界で効率よく動けるのはあの八人だけだった。しかし最終決戦を迎える前にもう満身創痍なはずだ。元気な助っ人を送り込むならこのタイミングしか無い」

「つまりわたし達は脳筋って扱いなんだね。紬もエリナもレンの力になってるのに、仲間外れにされた気分」

「私もです。アーサーさんとの繋がりを感じないのは落ち着きません」

「で、おれのご主人の元へどう行くんだ?」

「方法はアーサー達にやった事と同じだ。ステップ一、レミニアの魔力を借りて私とミオの中にある『箱舟』の力を使って直列次元の未来に飛ばす。ステップ二、暴れて敵を倒す。簡単だろう?」


 言うは易く行うは難し、だ。

 約束された勝利へ向かう手順を踏んでいるだけのクロノはともかく、これから未来に送られる者達にとって先は未知だ。特に新人の紗世は行動する前に辟易として溜め息を溢した。


「お兄さんに付いて行くのは大変そうですね……凛祢(りんね)が恋しいです」

「慣れれば姉さんも兄さんの事を好きになりますよ」

「その呼び方、嬉しいですが慣れないです……」


 何だかんだ言いつつ、紗世もこの場に馴染んで来ている。兄のアーサーと妹のレミニアの存在が大きいのだろう。とうかその二人がいなかったら任務なんてさっさと放棄してヘルトを殺しに行っている所だ。

 特に全員分の同意を取った訳ではないが、すでにクロノの言う通り未来へ飛ばされるのは決定事項になっている。そんな空気の中で申し訳なさそうに、今まで一言も喋っていなかったミオが頭を下げた。


「わたしのせいですみません……」

「謝らないで、ミオちゃんが悪い訳じゃないし。それにアーサーやラプラスみたいに考えるより、戦う方が性に合ってるのは否定できないしね」

「なら早速送るぞ。私とミオは同行できないし、この国の王のアクアも当然無理だが他のメンバーは総動員だ。五分で準備し中庭に集まれ」


 ややあって。

 準備を整えた彼女達は全員中庭に集まった。

 未来へ送られるのは七人。レミニアだけは魔力の肩代わりをするために前に出てクロノとミオの手をそれぞれ握る。


「帰還方法だが、お前達がここに戻るためには未来にある『時間』の『魔神石』が必要だ。見つけ出してアーサーに握らせろ。それを指標に私が周りにいる全員を引っ張り戻す。そうすればアーサーに負担もかからない」

「分かりました。他にはもう無いですか?」

「最後にもう一つ。お前は『無限(パンドラ)』の力を使いこなせていない。その意味をよく考えてみろ。そうすればお前はもっとアーサーの力になれるはずだ」

「わたしが兄さんの力に……」

「まあ、今はこっちに集中してくれ。やるぞ」


 クロノに言われてレミニアは集中する。とはいえやる事は魔力を流す事だけだ。ミオの中の『箱舟』の力を利用するのも、送る時間と場所を定めるのも含めて全てクロノが一人で制御する。


「では行くぞ―――『時間跳躍(クロノス)』!!」

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