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村人Aでも勇者を超えられる。  作者: 日向日影
第一一章 自由の代償はいつも高い Freedom_or_Peace.
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199 報われない少年の慟哭

「だったら教えてやる。ぼくは! きみ達の事を仲間だと思ったことは一度も無い!! そうだよ、いつだって一人が良かった! 何も気にせず、誰の事も考えずっ、ぼくは一人っきりで生きていたかった! なのに世界がそれを許してくれない。どうあっても人との関りを絶って生きてはいられない! 他でも無いぼくの性根が、それを許してくれなかった!! 誰かを助けなくちゃいけないという想いに突き動かされて、誰かと関わらなくちゃいけない願いを捨てる事ができなかった!! でも本当は、ずっと分かっていたんだ。それが間違いだって頭じゃ分かっていたんだ! だからこそいつも考える。どこで間違えた? ぼくはいつから誤った? いや、それは分かっている。最初からだ。産まれた瞬間からぼくは欠陥だらけだったんだ! 誰かを助ける度に自分を傷つけて、周りに嫌われて、あいつなら何を押し付けても大丈夫だって都合良く解釈されて、当たり前の人の輪っていうのがどんどん遠くなっていって、自分の肉を切って配るような真似をしてもこっちが得をする見返りなんか何も無くて、それでもぼくは誰かのために動く事を止められなかった!! まるでそうしないといけないと強迫観念に突き動かされるように、ただ走り続けた!! その果てに待っていたものが、暗い路地で顔も知らない誰かに殺されるっていう救いもなにも無いものとも知らず!! いや、分かっているさ。きっと彼をぼくは知っている。いつ、どこでかは知らないけど、ぼくが助けたかそれを見ていた大勢の内の一人だ。いつもと同じ理不尽な見返りが、その時は凶刃だったってだけだ。でもそれを受け入れられるとでも? ああそうか、と納得できたとでも? 誰かを助けられたなら、ぼくの人生もそんなに捨てたもんじゃなかったと達観できたとでも? そんな訳が無いだろう!! 狂ってるよ、本当に狂ってる! 確かに周りに誤解されてもしょうがない人助けしかして来なかったのはぼくだ。たとえそれしか手段が無かったとしても、いつかはそのツケが回ってくる事も分かっていた。自業自得なんて成立不能で、因果応報なんてどこにもなくて、見返りは何もなくても、それだけは何となく直感していた。それでもこんな仕打ちがあるか? 確かに感謝や見返りを求めていた訳じゃない。でも何度手を差し伸べたってありがとうという感謝の言葉もなく、人の輪に入れて貰える訳でもなく、自分の評価が上がる訳でもなく下がる一方で! 唯一のお返しがまた悪意なんて信じられるか!? それが成立してしまえるのが狂ってるって言ってるんだ!! だから感謝も見返りもいらないって言ったのに、彼らは勝手に勘違いした。何の見返りも求めず泥を被り続けるぼくを気味悪がって、何かをしでかす前にその芽を潰しておこうって、出る杭は打たれるんじゃなくて引っこ抜かれた!! それでも道化のように笑い続けなくちゃいけなかった。涙の流し方なんてとっくに忘れて、心がシロアリに侵されているように少しずつボロボロになっていくのを自覚しながら、それでもぼくは笑って人を助け続ける事しかできなかった!! でも本当はそんな風に生きたかった訳じゃない。でもぼくの人生は一本道の一方通行しか許されてなくて、強制されるようにその生き方しかなかっただけで、ずっとずっと辛かったし本当は泣きたかった!! 喚いて、叫んで、全てを捨てて諦めてっ、普通の人生ってやつを生きたかった!! 死ぬ寸前だって辛かったさ、悔しかったさ、苦しかったさ! 流れる血を見てどうしてぼくばっかりと自分の運命を恨んださ!! ぼくが何をした? どうしてぼくじゃなきゃいけなかった!? いつか聞いた現世で悪い境遇なのは、前世が悪党だったって話がもし本当なら、ぼくは一体どれだけの事をしでかしたんだ? ここまでやっても償えない悪事を繰り返してきたのか? いや、一度犯した罪を償えるなんて思ってない。でも、それだってっ、ぼくには関係の無い話だろう!? 前世の事なんて覚えてない。どうしてぼくが知らない他人のせいでここまで苦しまなきゃいけない!? もしもぼくが罪を犯したっていうなら、それは暗い路地で凶刃に襲われた時に償っているはずだろう!? どうしてまだ運命は追いかけてくる? 呪いはぼくを逃がしてくれない!? きみ達が不幸な境遇に産まれたのだって、ぼくのこの呪いが関係しているのかもしれない。だから本当はきみ達を助けてきたのだって、贖罪の意味合いが強かった。なんの罪の償いなのかは分からないし、何に赦されたいのかも分からなかったけど、その過ちだけは正したかった! それなのに、ぼくにできたのは結局はきみ達を縛り付けるだけだった。ぼくの傍にいれば安全だと思わせてしまった! 本当ならきみ達を助けるのはアーサー・レンフィールドみたいなこの世界の人間のはずだったのに、ぼくが勝手に横から割り込んだ。きみ達が向けて来てくれる好意は本来別の人に向けられるはずだったのに、ぼくが横から掠め取った!! ぼくは好意なんて向けて欲しくなかった。ぼくが欲しかったのはそんなものじゃない! ずっと欲しかったのはたった一つの言葉だった!! 普通の人ならその言葉に思い入れもなく、発する事が恥ずかしいと思っている人もいるくらいで、固有名詞でもない世界にありふれた言葉の一つだけど、ぼくはずっとその言葉が欲しかった!! でも誰も言ってくれなかった。どんなに頑張っても、頑張ってもっ、頑張っても! 誰もぼくの行いを認めてくれはしなかった!! ぼくは世界に存在していないようになった。それでもぼくは生きてるから、際限なく間違いかもしれないと思いながらも自分の生き方を貫いた!! ……でも、もう疲れたよ。生きるのにも、この生き方を貫く事にもとっくの昔に疲れたよ!! だからもうほっといてくれよ。ぼくの事なんて忘れて、きみ達は幸せになってくれよ! ぼくなんかと一緒にいたんじゃ、きみ達はいつまで経っても不幸せのままだ。ぼくの呪いに巻き込まれるだけだ! だったら一人にしてくれ。きみ達だけで勝手に生きてくれ!! いつも通り、陰からならいくらだって支える。ぼくの体が無くなるまで肉を割き続ける! だからぼくに付きまとうのを止めろよ。ぼくに他人の命まで預かりきる自信なんて無いんだから、ぼくが助けたってだけの理由で寄生虫みたいにいつまでもくっつくなよ! ぼくはっ、きみ達の仲間でも友達でも何でもないんだから!! 確かにきみ達と一緒にいる時間は楽しかったよ。でもまだぼくは戻れるから。一人で無敵になれるから! いつだってぼくは一人でやってきたし、これからだって一人でやっていける! だからもうぼくには関わらないでくれ!! ぼくの事なんかほっといてくれよっ!! ぼくはもう、ずっと昔から! ただ死にたいと思って生きてるんだ!! だから頼むよ、頼む! もし本当に神様なんてものがいるのなら、人の運命を弄ぶ事ばかりしている狂人なら! お願いだからっ!! もうこの地獄を終わりにさせてくれよッッッ!!!!!!」

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