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004

そう、あれは、ノワールが生まれて初めて、

肌を磨かれ、眉や、顔を薄く化粧をする程に整えられた時。

「ドレス」と言う綺麗な服を初めて着せられた。そんな日の出来事。


昼の立食ランチにて、初めて出会った。

グレンデルの国民特有の明るい髪色をした12歳の少年。

「ノワールの兄」と自称する「アンブル」に、ノワールが戸惑い。


そんな兄の手によって、

強制的に大皿から取り分けられた「生焼けの肉の味」が、

ノワールは普通に苦手で、兄と同年代くらいの美人さんに、

『貰って下さい!』と、その肉を押し付けてしまう。


その事を・・・

これまた初対面の「ノワールの姉」と自称する「ブランシュ」に、

酷く叱られ、ノワールが「早く帰りたい。」と願った。

強制的に参加させられた。その日、本番のイベントでの御話。


午後の御茶会にて、

ノワールは、自分の運命を左右する美少年と、問題を起こしたのだ。


「ヤハウェルの王子様」と自称する彼は、

そこでノワールに会うなり、親しげにノワールの手を取り、

自分の指をノワールの指に絡める様にして、強引に手を繋いでくる。


当時、何処の誰だか分らなかった。推定12歳。どの姫より愛らしい。

女の子よりも、綺麗な顔立ちをした髪も眼も黒い美少年は、

『ランチの時は、ありがとう』と言って、何故かノワールに対し、

『君は、家にある母上が大切にしているビスクドールそっくりだから、

僕の婚約者にあげるね』と、宣言する。


ノワールは、当時、5歳ながらに、

「絵面的に、どう考えても、服装が逆ではありませんか?」と、

心底、本気で思いながらも、申し出に対し、礼儀正しく御礼を言い。

その場の雰囲気に流されて、婚約者になる事を了承した。


了承すると、7歳年上の相手が、

ノワールに対して何度も、目を閉じて顔を寄せて来るので、

ノワールは抵抗する事無く、キスの雨を受ける。


手から、ノワールの焦げ茶色の髪、額に頬、肩、首筋。

やっぱり、その場の雰囲気に流されて、お兄さん可愛かったからつい、

ノワールは、唇を重ね合わせる。と言う所まで、

彼に、求められるがままに統べて受け入れてしまう。


それが何を意味しているのかを知らず。

後で、どんな仕打ちが待っているのかも想像できず。

ノワールは、繰り返し、繰り返し、

綺麗なお兄さんからのキスを受け入れてしまっていた。


そして、その日の夕方に、ノワールは投獄される。


その時、まだ、子供だったノワールには、「その後の出来事」。

父親の行動が、訳の分からない。理解する事もできない。

恐ろしい事だった。の、だが、しかし……。


現在、今のノワールになら、「その後」の事は、

普通に想像するに足りる。普通の一般的な常識だ。


「人目のある場所で、キスする事」でさえ、

『不純異性交遊だ』と言う。潔癖症な大人達が集う場所で、

ノワールは、7歳年上の「身内ではない相手」と、

公衆の面前で、堂々と、何度も「やってはいけない事」をしたのだ。


ノワールは、誰もが羨む、幸せな「キス」をした。

その対価として、実の父親に『売女ばいた』と罵られる事になり、

「姦淫の罪」で、実の父親の手によって、「鞭打ちの刑」に処された。

アレは、今思えば、「必然的な結果」で、「当然の報い」なのである。


更に数年後、そんなノワールに、

追い討ちを掛けてくれる。悲しい出来事が起こる。


ブランシュと母を同じくする実の兄。

「アンブル・グロウ・グレンデル」が18歳に成り、

社交界デビューを迎えた年の事。


幼き日のノワールのキスの相手、他国の王子。

「セイブル・ウォーロック・アドナイ」は、

アンブルの同級生として、11歳のノワールの前に現れる。


そして、男児とし、

小姓や使用人の仕事をさせられていた。ノワールと再会して早々に、

『僕が好きになった女の子は、君みたいな子じゃない!』と、

ノワールに対して、セイブルは、拒絶の言葉を投付けた。


女性より美麗に育ったセイブルにとって、

使用人の子供等と仕事をし、使用人の子供等と一緒に遊ぶノワールは、

「価値の無いモノ」に、分類される。そんな存在になっていたらしい。


セイブルは、ノワールに冷たい眼差しを向けて、

『君には、ヤハウェルの加護を折角、与えてあげたのに、

僕の為に、女の子として、綺麗になる努力しなかった。』と怒り、

『一度、「あげたモノを返せ」とは、言わないけど、

婚約は取消させて貰うからね』そう言った後……。

態とらしく、故意に、ノワールの存在を無視して通す。


「ヤハウェルの加護」が何だったのか?何を貰っていたのか?

記憶に無いノワールには、返却を求められても困る。

本当に、それだけだった。


ノワールは、プレゼントを贈られても、手元に届く前に、

上前を撥ねられる。そう言うのが当たり前だった。

御蔭で、「返せ」と言われなかった事に対して、

胸を撫で下ろす事しか、できない。

言い訳は、勿論。何を何処まで、言い訳すれば良いのかも、

その時のノワールには、分からなかった。


ノワールの心がショックから復活し、

精神的に状況を理解する事が出来る様になった頃……。


ノワールは、5歳の頃から聞こえる様になった「声」に導かれ、

夜間、誰も利用する事の無い王立図書館へと侵入し、

個室になっている閲覧室の中に忍び込み、一人になって、

辛くて、悲しくて、声を上げて泣いた。


何にも知らなかったあの日。

ノワールが、父親に鞭で打たれていた時に、想像した夢。

御伽噺に出て来る。シンデレラの様に、

「何時か王子様が迎えに来て、酷い日常から助け出してくれる」と、

馬鹿みたいに信じていた「夢見がちで、強欲な乙女心」は

胡桃の様な硬い殻を自分で用意して、心の中で眠りに就く。


乙女心を生み出す結果を齎した。

その相手の言葉や態度に深く傷つけられ、その場所で、

夜明けを待って、ノワールは、精神的に、進化する事が出来た。


生まれ変わるチャンスを得た。ノワールの心は、夢を見ない事で、

甘言に騙される事無く、現在のノワール足元を固めてくれている。

経験が今、誰からも、足を掬われない為の支えになっている。

御蔭で、今では、ちょっとした事ぐらいで揺らいだりしない。

意思と判断力をも、持ち合わせる事が出来ていた。


「過去の辛い事が全部、今の糧になってるんよ。」と、

何者かが、ノワールの心に語り掛ける。


ノワールは、期待外れな事は、縁が無かったと思い。

最初から、誰かに、何かに期待する事をも諦めて生きる。

縁があった。良かった事だけを大切にする事が出来る様になっていた。


ノワールは今、沢山の何者かの声に支えられ、

正しく諦める事で、生きる道を切り開いて生きている。


「それは、何でもかんでも諦めれば良い。」と、言うモノでは無い。

人の意見に流される事無く、人の言う事に騙される事無く、

情報を自分で収集し、情報と状況で判断して、あくまでも正しく、

先の見通しを立てて、間違える事無く、

間違ったモノを諦めない様に注意しながら、諦めて生きる。


「諦め道」を極めた。ノワールの諦めた生き方だ。


ノワールは天を仰ぎ、現実を見る為に、理解して貰う為に、

大きく深呼吸して、目の前のブランシュに目を向ける。


『ねぇ~!ノワールはどうして、

わたくしと一緒に、御揃いのドレスを着て下さらないの?』

ブランシュは、少し怒った様子で、もう一度、

同じ質問を口にしている。


ノワールは、少し困った様子で、ブランシュに向かって微笑し、

『国王の命により、

私には、この黒以外を着る事は、許されておりません。』と、

静かに、魔法で効果を強くして、しっかりとブランシュに返答した。

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