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017

投獄解放後、風呂でのぼせた翌日。

罰と称し、王に鞭で打たれた背中の傷は、長風呂で悪化し、

回復力を強化しても、背中の傷の肥立ちの悪い状態、

表皮だけしか修復できず、その表皮も薄く破れやすい為、

背中丸出しのホルターネックの服を着込み、ノワールは、

何時も通り、仮面だけは被り、通常勤務に復帰する。


のだが…しかし……。困った事に、普段は常備長袖生活&、

邪魔になる為、胸に晒を巻き潰していた事による弊害が発生。


露出度を下げる為、

肩付近までの長さがあるアームカバーをしていても、

背中丸出しのホルターネックの服装に注目が集まり、

「押さえ潰していない胸」と「露出した肌」、

特に、背中の変色した傷跡に視線が集まった。


居心地が悪くなった職場環境と、巡回の担当地域の雰囲気に、

ノワールは1日で、苦痛に耐えられなくなって、

事務室で仮面を外し、部隊長のアシエに直談判。

『傷が完全に治って、元の服が着られるようになるまで、

夜間の巡回警備に行かせて貰っても良いですか?』と申し出る。


アシエは、ノワールに苦笑いを返し、

『それは難しいですね、アンブル王子や先王から、

「仕事をさせるなら、極力安全な任務で」との通達が来ているし、

そもそも、女が女丸出しで夜道を歩いたら、

「飛んで火に入る夏の虫」か「鴨が葱を背負って来る」感じで、

「客寄せパンダ」ですよ?余計な者まで、捕まえる事になって、

留置場の空きが足りなくなったら、困るじゃないですか!』と、

夜間の治安の悪さを露呈する。


『そもそも、ノワールは、本調子じゃないでしょ?』

『そりゃ、まぁ~、背中が地味に痛いですからね』

『君に、もしもの事があったら、フォルマ師匠や、その甥っ子、

自分の妻子からも、私は何かしら言われるんですよ?

頼むから、大人しくしておいて下さい。』

『それ命令ですか?』

『命令ですね!』と言う事で、ノワールは、アシエの命令で、

仕事復帰の翌日から詰め所にて、事務仕事に従事する事になった。


そんなノワールが、その日から宛がわれたのは、

アシエの秘書としての仕事である。


普段のアシエは、仕事に対して優秀過ぎて、

普通、他の部隊では、3人程の秘書を雇ってする仕事も、

「自分でした方が早いから」と、自ら全てやってしまう。


自分で手掛けているので、手元に残る仕事は少なく、

そのままだと、

ノワールに回される仕事の量も極端に少なくなってしまう。

エルステの仕事の御手伝いで、

その仕事の経験があるノワールにとっては、冗談抜きで簡単な仕事。

年度末に手が足りず、アシエが溜めてしまった分を見兼ねて、

ノワールが、手伝って、アシエとの仕事の経験もある。


と、言う事で……。

アシエと懇意の他の部隊の部隊長が溜めた仕事を預かってきてでの、

引き継ぎ無しの本番で、仕事をスタートとさせたのだが……。


そもそもの不定期に発生する仕事の性質上、

行き成り、下から上がって来る仕事が増える事無く、

他の部隊の仕事も含めて、アシエの属する部署は暇になった。


アシエ1人で仕上がる仕事。それに対し、

アシエ程に優秀ではないが、人並みに仕事ができるノワールの参加。

アシエとノワールが2人で取り掛かると、仕事時間が、

3分の1に短縮されてしまう事が判明する。


ノワールは室内で帽子の様に仮面を被り、

暇過ぎて、他の部隊の場所を含めた事務室内の清掃活動を行っていた。


『さてと…暇ですし、昼ごはんでも食べますか……。』

『アシエ部隊長、まだ、10時です!

仕事だって、開始から1時間もやってないですよ?』

『あぁ~でも、もう、仕事が無いんですよねぇ~……。

部下を急かしてさせる様ない仕事も無いですし、

どうしましょう?皆の仕事振りでも、観察しに行ってみます?』

『それ、無駄に、部下にプレッシャー掛けるだけになりませんか?

って、言うか……。

何時も、そんな理由で、皆の仕事振りを見て回ってたんですね』

『悪い事ではないでしょ?私が頻繁に見て回る事で、

警備兵のサボリや、不正を軽減!皆が真面目で、治安も向上!

私の暇まで潰れて、良い事尽くめではありませんか?』


ノワールは何も言い返せず。物や書類が整理整頓され、、

1トーン明るくなった事務室内を見まわし、掃除道具を片付けて、

他の部隊長に見回りに行く事を伝え、途中、アシエの家に立ち寄り、

アシエの妻の判断で、アシエの娘さんが勤める治療院へと、

ノワール連れて行かれる事になった。


治療院では、

『本来なら、入院すべき怪我よ!魔法で何とかできるからって、

魔法を過信するのは、如何なモノかと思うわ!

これ以上、悪化させる様な事があったら、エル君に言うわよ?』と、

最近、エルステと仲の良いアシエの娘さん「オランジュ」が言う。


アシエの奥さんは、『ワタクシも同感ですわ』と、何度も頷き

『自宅謹慎名目で、休暇を取らせればよいのでは?』と、

夫に提案する。


ノワールは仮面を外し、治療台の上でうつ伏せで薬を塗られながら、

目を閉じ黙って話を聞いていた。

そこへ、アンブルとセイブル、そしてブランシュがやって来た。


治療室に入るなり絶句する3人はそれぞれ、

息を飲み青褪めたり、口元を押さえて眉間に皺を寄せたりした。

ノワールは目を閉じたまま、3人を確認する事無く。

今までと違う気配を発するブランシュに意識を向ける。

そこから不穏な気配と、小さな呟きが聞こえてきた。


ノワールが目を開けて、ブランシュの表情を確認すると、

今回の事を懺悔するアンブルとセイブルの後ろで、

王妃が自分に向けるのと同じ、

険しい表情、冷たく暗い憎悪に満ちた目をしていた。

ノワールは、ブランシュが、

そう言う目で、自分を見ている事を確認する事ができた。


悪寒が走り、ノワールは鳥肌を立てる。

ノワールの異変に気付いたアンブルとセイブルが、

「寒いのではないか?」と勘違いし、部屋を暖める事を提案する。


騒ぎ出したアンブルとセイブルに対して、アシエは、

『ノワールの治療の邪魔をするのは如何なモノかと思いますよ?

それに、他の患者にも迷惑になります。御引き取りを』と、

3人を追い返してくれた。


名残惜しそうに出て行くアンブルとセイブルとは対照的に、

ブランシュは、作り笑いを浮かべ、この場から立ち去る事を促し、

笑わぬ目で、ノワールを一瞥してから出て行く。


ノワールとアシエは、3人の気配が遠ざかり、

3人が治療院から出た事を確認すると、大きく溜息を吐いた。


アシエは、窓から馬車に乗り込むブランシュを見ながら

『ノワール、君は……。身の安全を確保する為に、

この国を捨てた方が良いのではありませんか?』と、

素直な意見を言う。


ノワールは起き上がり、衣服を直しながら、

『「出て行かせてくれる」と言うなら、数年前に、

出て行ってたでしょうね、私には…通常コースで国を出る手立てが、

無いんですよ……。』と、吐き捨てる様に言い。


『ブラックリストに、私の個人情報と名前があるんです。

現在の国王の王命で、

私には、他国への関所の通行手形の発行が禁止されてます。

あ…そうそう……。通行手形を偽造しようとは思わないで下さいよ?

もう、自分の為に誰かが罰せられるのを見せられるの、

嫌なんです』と、ノワールは力なく微笑み、

『そうだ!そんな事より、皆で、昼ご飯食べにいきませんか?』と、

アシエ夫妻と、その娘のオランジュをランチに誘った。

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