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後宮へと続く城の回廊。セイブルが、ブランシュに渡す設定で、

準備された花束をエルステがメイドから預かり、

途中から、年配のブランシュのメイド達が先導して歩いて、

辿り着いた先、

公爵家の者と、歴代国王が手を付けた女達が住む後宮の手前の花畑。


アンブルの予告あって、事前にブランシュ付きのメイド達が準備した。

宦官達が警備するブランシュ主催の昼食会には、

アンブルとブランシュの母親である王妃を支持する親の娘達が集い。

セイブルを今か今かと待ち構えていた。


『帰りたいなぁ~…帰っちゃ駄目ですかね?』

『普通に、アカンやろ。

取敢えず…招待の御礼言って、花束渡してきぃ~さ……。

全部が終わるまで、ちゃんと一緒にいてやるし』

囁き合うセイブルとエルステに集まる視線。


2人はそれぞれ、

「恨みますよ!アンブル!」

「アンブル、マジで恨むで!ホンマ!」と思いつつ、

愛想笑いを振りまいた。


準備されていたのは円卓、向かって右からから、

エルステ・セイブル・ブランシュ・ブランシュの付き人と並び、

その他の席を爵位ある親の娘達が並ぶ。


神殿最高位の神官フォルマの甥であるエルステには、

この世界の貴族社会的に行き遅れた女性達が集い。

セイブルは、ブランシュに独占され、

若い娘達から熱い眼差しを向けられる形となった。


セイブルはエルステに、

『どんな質問しても、途中から、自分の主役の話を返してくる相手に、

僕はどう対応していけば良いんですかね?』等、

ちょいちょい愚痴を囁きながら、エルステに助けを求める。


エルステはセイブルに、

『女ってのは、そう言うもんやろ?適当に相槌うって、時々、

鸚鵡返し気味に言われた事に同調してやって、

知ってる事とかを褒めたって、時には、鸚鵡返しで質問してやれば、

それなりに納得するんやで!笑顔だけは崩さんよう、頑張りや』と、

励ましながら、その場での事無きを得た。


波風立たぬ昼食会は、アフターヌーンティーの時間になっても続き、

セイブルとエルステをウンザリさせたが、ブランシュは、

『こんなに話の合う殿方に出会えたのは、ワタクシ初めてです。』と、

大喜びしている。


そんな御茶会の後は、「余計な事をっしないで欲しかった。」

「余計な事すんなし!」と、セイブルとエルステが思う中、

アンブルが事前に準備していた馬車での観光に行く事となった。


観光は、

エルステ・セイブル・ブランシュ・ブランシュの付き人の4人が、

1つの幌無しの馬車に乗り込み。

ブランシュがカンペを見ながら、言葉に躓きながら、

観光案内をする苦笑いしかできないモノだったのだが、

エルステ直伝、

笑顔と多種多様な鸚鵡返しでの対応で、セイブルが頑張り、

何とか形になって、それぞれが胸を撫で下ろす結果となる。


満足気なブランシュの笑顔に、顔を綻ばせ、

『もしも、僕に妹がいたら、

何時もこんな感じで、仕方ないなって思うんだろうな……。』と、

セイブルが一人、呟いた。


セイブルの呟きに気付いたエルステが、

『いやいや……。普通はここまで、空回りせんて!』と、

普通に突っ込みを入れてしまう。


それを耳にしたブランシュが、

眉間にしわを寄せ、悪くなった雰囲気で、誰も何も言えず。

何時しか、それぞれが手持無沙汰になって、

ブランシュ主催の模様し物は、解散の時を迎えた。


気疲れしたセイブルは、

それをブランシュに悟られない様に微笑を浮かべ、礼儀正しく、

『今日は楽しかったです。』と、社交辞令を並べ、

ブランシュの手を取り、ブランシュの手の甲に軽くキスしてから、

別れの挨拶をして、エルステを伴って、その場を後にする。


ブランシュと付き添いの御令嬢から、

自分達の姿が見えなくなったくらいの所で、セイブルとエルステは、

大きく溜息を吐いた。


後宮付近を離れ、王宮で仕事をする者達のエリアまで来ると、

『それにしても、「フレッシュポット」の言葉の意味も知らずに、

「殿方の御買物スポット」と紹介されたのは驚きましたね』

『「殿方に必要なモノが、ここで買えるそうです。」ってのやな、

あれ、アカンて俺も思たわ!突っ込み入れる所やったで……。

誰やねん、花街のある歓楽街マッピングしたん!ヤバイやろ?

普通、姫さんがそんなモン知っとったら!修道院行きやで…

後で、アンブルに報告しとったらなアカンわぁ~マジで……。』と、

セイブルとエルステは雑談を始める。


『そうや、セイ…

セイと、ブランシュ姫との会話聞いてて思ったんやけど……。

もしかして、ノワールの事、気になってるんか?』と

エルステに言われ、セイブルが頷きながら、

『はい、実はそうなんです。』と言う。


エルステは苦笑いを隠す事無く、

『セイはアカンよ、ノワールに近付いたら駄目やわ』と、

セイブルを拒絶した。


『何故ですか?』と、セイブルが訊ねると、

エルステは、『ノワールは、

俺が赤ちゃんの頃から面倒見て来た「妹」みたいなもんやねん』と、

優しく微笑を浮かべた後、『宝物やから傷付けたくないし』と囁き、

『セイは、前にアカン事したやろ?

アンブルから聞いて、10年前の事を最近知しったんやけど、

1度目は、不可抗力としても、4年前のは、アウトや思う。

先に「違う」て、拒絶したん。セイやろ?だから駄目』と、

エルステは、セイブルにとって、心当たりがある事を指摘する。


『そうだけど…でも……。

エル先輩には、関係無い事じゃないですか?

僕の所為でつらい思いをさせたのなら、謝りたいんです。

ノワールに、謝罪くらいさせて下さいよ!』と、セイブルが言う。


エルステは、『「自己満足で」とか、勘弁したってや』と呟き、

何かを思い出したかの様に、左手の拳を右手で被い胸に抱いて、

『ノワールが、母親から取り出されたの最初に抱いたんは俺で、

冷とうなってたの温めたんも俺、半日後に産湯に入れたんも俺なら、

オシメ交換とか、離乳食食べさせたんとか、全部、俺やねん。

「関係無い」とか無い。』と断言した。


詳しいノワールとエルステの関係性に驚きつつ、セイブルが、

『先輩が保護者として、ノワールさんの事を心配してるなら、

ノワールさんに、エル先輩が付き添ってくれれば良いのでは?

僕は、前回会った時の事だけでも、謝りたいんです。』と言う


エルステは溜息を吐き、セイブルの耳元で、ぼそっと、

『この国の今の王は、10年前も、4年前も、

お前の行動や言動が切っ掛けで、ノワールを投獄して鞭で打った。

「切っ掛け」は、お前でも、ノワールにトラウマを作ったのは、

この国の今の王だ。お前に謝られても、

ノワールのトラウマは消えない。過去を思い出すだけで、

悪化するやろから、「近付かんとって」て、俺は言ってんねん』と、

低い声で囁いた。


アンブルから聞いていなかった昔の事を知り、セイブルは立ち止り、

悲壮感漂う雰囲気で黙り込む。


最終的に、アンブルだけではなく、エルステからも、

ノワールに謝罪する事、それ以前に、

近付く事も許して貰えそうにない事を宣言され、セイブルは余計に、

ノワールに会って話して、謝りたいと思う様になった。

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