暇な日
大学生に与えられた2カ月近い春休み。2カ月もあると逆に毎日用事がある方が珍しいわけで。
今日はその暇な日。朝食を8時に取り、そこからずっと読書。そろそろ昼食の準備でもしようかと思っているとソイツは現れた。
「ドーンッ!」
俺の至福の時間をぶち壊した奴は、俺の部屋の扉すら壊しそうな勢いで俺の部屋に入ってきた。
「ねぇ!聞いて!」
「その前に、俺の話を聞いて」
そこから、とりあえず10分ほど説教タイム。
ノックに始まり扉の開け方。他に幾つか伝えた最後に毎度お馴染みになりつつある事を。
「女の子が大声を出すのはやめなさい」
なんで毎度毎度こんなことを注意しなきゃならんのだ。あぁ……なんでだろう。頭痛が痛い……なんだよ、頭痛が痛いって。痛くない頭痛があるなら教えてくれよ。
「どうしたの?頭悪いの?」
「俺はお前の頭が心配だよ……」
このままだと話が進まなそうなので、こっちから話を促す。
「で、何か用か?」
「そうそう!今日はね、女の子の日なんだよ!」
え?こいついきなり何?突然すぎて、開いた口が塞がらないんだけど。
「どうしたの?」
「むしろお前がどうした?お前のそんな個人情報を教えてもらっても困るだけなんだけど」
「え?」
「え?」
なんか話しが噛み合ってないな。でも、『女の子の日』なんだろ?
「女の子の日、なんだよな?」
「うん。女の子の日」
「うーん……まぁ、羞恥心を持て、とでも言えばいいのか?」
「え?羞恥心?ひな祭りって恥ずかしいの?」
「……」
ひな祭りか。紛らわしい。確かに『女の子の日』だけど。
「あぁ……お前、だから着物なんて着てるのか」
「そう!可愛いでしょ!」
「……知ってるか?昔はひな祭りの人形って川に流してたみたいだぞ」
「だから?」
「お前も流れてくればいい」
俺に対して「酷い!」と言っている姿を横目に、部屋を出る。そして、振り返り尋ねる。
「夕飯はちらし寿司でいいか?」
「え!作ってくれるの!」
「嫌ならいいぞ」
「嫌じゃないよ!」
「そりゃよかった」
買わなくてはならない食材を考えながら玄関へ。
「あ!私も行く!」
「……なら早くしろ」
「うん!お買い物楽しみだね!お兄ちゃん!」
こうして、俺の暇な日は手が届かぬ彼方へと飛び去ってしまったのだった。
なんか、浮かんだので文字にしてみました。特に意味はありません。
ちょっとだけひな祭りを絡ませた感じで。
ご意見、ご感想お待ちしております。