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プロローグ
ああ、憎かった。ひたすら憎かった。罪なき我らを滅ぼした奴らがにくかった。復讐する事もせずただ隠れてるだけの我自身も憎かった。この憎悪に我の身体は蝕まれていった。
しかし、それも今宵まで。
夜が明けるとき、闇夜と共に消えるのだ。この世に生きた痕跡を残すことなく消えるのだ。
ああ、でも、それでも一矢報いてやりたかった。臆病な我は隠れていただけだったが、あの時のことを忘れたことは無い。飛び散る深紅の血、転がってゆく漆黒の鱗の付いた赤い肉片、血肉の焦げた鼻を突く悪臭。そして、それを見て嗤う同族であった奴ら。
ああ、なぜ罪なき我らが滅ぼされなければならなかったのだ。ただ静かに暮らしていきたかった我らを。断罪と称して、我が一族を惨殺した奴らの方が罪深いではないか。奴らの方が罪深いのだ。
罪深き奴らに復讐を。罪深き奴らに断罪を。
いつかは叶えたかったこの思い、今宵、我とともに消え去るのだ。そう、夜が明けるとき、闇夜と共に消える、はずだったのだ。