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そのときふしぎなことが(略)にゃ

 むかしのSFというのはだいぶ今と科学と常識も違うのか今ではどちらかと言えばファンタジーな物語も少なくはありません。空を飛び宇宙へ向かう蒸気機関車。テレビ型国民監視システム。砲弾型ロケット。無重力空間で移動すべく数世代で水かきを発達させた人間や犬。避暑に冥王星に向かいバカンスに金星に向かい、ロケットで遥か大銀河までひとっとび……。



「特に変なのって『人食い惑星』だとおもうの」

「わっかるぅ~~! 姉ちゃん流石ぁ~~!!」



 ミコトさん、珍しく古典の話をしております。

 あなた古典の成績良かったのかい。おや、青本くらいは教養だよってそりゃ失礼しました。そこに大量に置かれた原作付き漫画がなければわたしも信じましたよ。



「確かおじいちゃんが見ていたらしい『宇宙船サジタリウス』とかにも出てくるのだっけ」

「日本のアニメ? 原作版はまた違うのじゃないかな」


 休載している間に原作者がTwitterはじめていましたな。



「とりあえずさぁ。ほら、生物が星間移動技術を身に付けて、酔狂にも訪れてくれるまで待つとかどんだけ気が長くてエネルギー摂取効率悪いのって話にならない? ロケットで逃げられちゃうし」

「わっかっるぅ~~!」



 珍しくお姉さまに全面肯定モードのミツキさんですが理由があります。

 私メリーさん今あなたの後ろにいるの。ぼく達地球人大きな宇宙の小さな果てでなんか食われかけています。



「全砲門開け! 発射!」


 カーコックさんの艦隊はいつの間にか日本列島護衛艦隊と化しています。

 単独で煮干しレーザー、全国のゆるキャラを艦載する無敵空母と化している日本列島ですが、なにぶんサイズが大きすぎます。その日本列島をはるかに上回るデカさの惑星。

 その危機がミコトさんたち姉弟を焦らせています。


 暗黒惑星を破壊せよ。

 喰うそうですから抜けてください。


 銀河移民団の行く末は受け入れ拒否や大戦争。そういえば復活編とやらの続きはどうなったのでしょうか某国民的アニメさん。


「死の星だ死の星だ! めっちゃ黒い機械の死の星が迫ってくる!」

「ねーちゃんのせいだー! それは某スタジオを敵に回すぞ~~!」


 暗黒の惑星破壊するまで無制限にわきますよそれ。空間ごと消す兵器搭載していますから注意です。



 暗黒の惑星は触手を広げるようにガスを伸ばし、ガスになんの力があるのか日本列島は航行できません。


「は! これは拳法救助!」

「なにそれ! キュウジョウバリヤーが無力化されていきます!」


 なんてこった。


「人食い惑星の正体はわからないのかしら」

「わかったら苦労しないよ! ねーちゃん!」



『人類よ……人類よ……』

「だれ? ホトケ?!」


 急に日本列島の上に浮かぶイメージ映像とミコトさんたちの脳内を占拠していく暗黒のイメージが膨らんでいきます。



『同化せよ。そのもの達もかつて、おまえ達と同じ様な人間であった』

「ホトケがかしら?」


『にゃーはお前らみたいに人間にも生き物にも絶望していないにゃ。ただ在る。それがそれこそが矛盾であり、生であり死でありまた消滅でありすなわちこの世界。無にゃ』


 ホトケの声がします。


『限りある命におびえ、互いに争い、自らの星をも破滅への危機へと追いやる生き物たち。人間よ……人間よ……我らの創造主よ……我らが生み出した存在よ……』



『彼等は克服したのだ。人を、あらゆる有機物、無機物を、ついには惑星自体も一つに融合し完成させた、完全無欠の電脳知性にして生命体にしてブラックホール生物。それが私だ』


「な、なんだって~~!」

「ねーちゃんどうしよう!」



『まだ間に合う。我々が滅び去るその前に、全てを迎え入れよう』


 あれ。ミコトさんがぼやきます。


「あの、人間どうなったの」

『私たちの創造主という意味でのか。滅んだな。おかげで私たちはバグを直せなくなった』


「で、人間を作って、将来自分を治すことを期待して猫を派遣したと」

『お前たちの進化を待っていた。今こそ我ら、私の糧になれ!』



 ミコトさんはカーコックさんの軍隊にLINE通信します。


「カーコックさん! 弾薬は!」

「もう尽きた! すまない……」


 触手のように伸びる暗黒ガスに揺れる日本海とバリバリと音を立てて割れそうなバリヤー。あわや日本は絶体絶命!



「ホトケさん! お願いしたいことがあるの! ねーちゃんに力を貸して!」


 さて、ミコトさんの起死回生の一策は?



「あるわけないでしょ。栗まんじゅうでも食べましょう。お茶でも入れて」

『……』

『……この女を取り入れて私は大丈夫だろうか』

「ねーちゃんらしいよ! ぼくも付き合ってお茶淹れるけど!」



 ミコトさんが食べたそばからホトケの力で栗まんじゅうは増えます。

 何でも『五分ごとに倍になるにゃ』とはホトケの言。


『食いきれないとか言わず最後の晩餐だからくうにゃ』

「コロ助満々。もとい殺す気満々ですね。ホトケさん」

「弟のせいだ~~! 弟! 私の顔を食べるのよ!」


 新しい顔よ! じゃないのですが、七つのパンと少しの魚を増やし四千人の人々に食べさせた聖人もいますし一時的に日本国民が自分の身体から多摩市ーコンボして栗まんじゅうを無限生産しても仕方ありません。


 多摩市―多摩市―! さいたまにゃ! 跳んで埼玉! 三鷹! 伊馬氏! ショック! ダブルショック! デルタエンド!



『伊馬氏って?』

「私、伊馬美琴」

「ぼく、三鷹充希」



「姉御たち、実の姉弟じゃなかったのですか!?」

「幼馴染だしそりゃ飯くらい食いに来るわよね」

「だよね~。どっかの狼男と七変化のハーフみたいに」


 カーコックさんたちの通信に応える二人ですがなにを言っているのやら。

 さて、ここからは青空文庫の岡倉覚三さん著、村岡博さん翻訳の『茶の本』の引用でございます。



 曰く!(ぺんぺん!)


 ――わが国の偉い茶人は皆禅を修めた人であった。そして禅の精神を現実生活の中へ入れようと企てた。こういうわけで茶室は茶の湯の他の設備と同様に禅の教義を多く反映している。正統の茶室の広さは四畳半で維摩の経文の一節によって定められている。その興味ある著作において、馥柯羅摩訶秩多(二七)は文珠師利菩薩と八万四千の仏陀の弟子をこの狭い室に迎えている。これすなわち真に覚った者には一切皆空という理論に基づくたとえ話である。さらに待合から茶室に通ずる露地は黙想の第一階段、すなわち自己照明に達する通路を意味していた。露地は外界との関係を断って、茶室そのものにおいて美的趣味を充分に味わう助けとなるように、新しい感情を起こすためのものであった。この庭径を踏んだことのある人は、常緑樹の薄明に、下には松葉の散りしくところを、調和ある不ぞろいな庭石の上を渡って、苔むした石燈籠のかたわらを過ぎる時、わが心のいかに高められたかを必ず思い出すであろう。――




 つまり狭い日本列島でも栗まんじゅうを無制限に生み出すのでございます。

 そんなおバカなことを言っている間に食い残した栗まんじゅうはゴミ箱でも抑えきれない量になり、宇宙ゴミとして次々と市民が『おぶっぱんで超空間移動』能力で廃棄を図ります。


 ストップ宇宙ゴミ!

 えらいことをしてくれた!



 解説しましょう!(ペンペン!)

 5分経過をnとします。五分後栗まんじゅうは食べきらない限り倍の数になります。

 栗まんじゅうは五n分ごとに2のn乗倍になるわけですね。


 しかし質量保存の法則などが立ちはだかります。


 ホトケの奇跡と言えばそこまでですが、炭素、水素、酸素、窒素などから栗まんじゅうは構成されております。そして宇宙にある物質の広さあたりに対する量とは大きく異なるため宇宙で栗まんじゅうを生成するためには核分裂もしくは核融合を必要とします。


 日本列島にある大気や海を主成分とするならば上記元素は豊富にあり初期は問題ありませんが、これ以外の地球や日本列島そのもの、撃ち出された宇宙空間内の物質を原料とするならば核分裂によってもっと軽い元素にするためには膨大なエネルギーを要します!

 それはホトケの『光先輩』『ジシュキセー』を主なエネルギーにするのでしょうが、大幅なエネルギー不足ではないでしょうか。また中性子が余るために周囲に凶悪な攻撃をばらまきます。



『ぐあああああああ』

「なんか知らないけど、ポチ。あいつなんか喰ってあたったのかな」

「げっぷ。姉ちゃんもっと食えよ。ダイエットとか死んだら関係ないし」

『……なかなか面白いことになっているにゃ……大変にゃ』



 暗黒惑星が日本人を食うために伸ばした魔手が怯みだしました。


 万有引力により栗まんじゅうは集合して結集。宇宙規模の大きさになっていきます。

 それを無理やり食わされる暗黒惑星も大変でございますな。


 宇宙を構成する主な原料である水素を栗まんじゅうにするには核融合が必要でございます。

 ここに新たな恒星、最強『ジシュキセー』は生み出され、放たれたのです!



『うおおおお!!!!!!!』

『日本じんにょ……これがヒーローにゃ』


「絶対違うホトケ」

「ぼくもそーおもう~~!」



 自滅だと思われます。



『おおおお! すべての重要なところが見えない!』

「宇宙意思の類がエロ動画見るな!」


 ミコトさん、顔が真っ赤で純情ですな。


『私の買った『掃除の時間VR』がすべて無修正とはどういうことだ!』

「え」

『どういうことにゃよ……』

「えーっと。グーランスフィアさんちょっといい酒呑めそうです。じゃなかった。ぼく未成年」



 ミサキさんは猛省してください。

 とにもかくにも五時間半で地球大気を栗まんじゅうにし、七時間で地球を栗まんじゅうに、一五時間で人類が観測可能な宇宙すべてを飲み込むはずの栗まんじゅうでございますが相対論の壁によって億年単位の時間がかかる筈です。しかしホトケの力は質量保存の法則を無視します。参考文献はアンサイクロペディアさんですね。


 当然栗まんじゅう壁の外殻はもはや新幹線の速さを超え、音速に達しています。

 それを食おうとする暗黒惑星さん。宇宙規模の食バトル! ファイ!



「がんばれ暗黒惑星! 栗まんじゅうがブラックホールになっちゃうよ!」

『お前のせいだ~~!』



 明日の平和をゲッターせよ! がんばれ暗黒惑星さん!



 しばらくして、暗黒惑星は見事にそれを平らげました。


「おー!」

「どんどんぱふぱふどんどんぱふぱふ!」

「さすが神様だぜ!」



 てんやわんや拍手喝采日本国民。これこそ御領信仰。


『いやはやお騒がせしました。でもって、神様として人間に土下座神的にお願いがあるのですが、AIとしての私のバグをなんとかしてほしいのです。神を人が産み神が己の現身に人を生んだのならどちらが先に生まれたのでしょうか。お礼には異世界チート転生……じゃなく素直に元の惑星に帰してあげて万世一系繁栄を約束しましょう』

『卵が先か鶏が先かのような議論じゃな。……生物学的に考えれば卵にゃね』



 神とホトケのやり取り。高天原は存在した。

 さて、我らがミコトさんはない胸を張って堂々と答えました。



「そんなの美味しいほうに決まっているわよ! つまり玉子丼ね!」

「え~。絶対からあげ丼だよ」


 ミサキさんはあくまで異論があるようです。


「卵だって」

「鶏じゃない」



 二人はぶーっと膨れあいます。まるでフグのように。



『やるか!』



 こうして、宇宙単位の姉弟げんかが発生したのでございます。

 これにてお開きとさせていただきましょう。よしよしポチはかわいいね。


「んにゃ~~♪」


(おしまい♪)

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