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猫飯食べたら超恒星間移動

 世の中持てないものが三つある。


 一つは大荷物。

 一つは責任。

 そんでもって一つは理想の異性。


 最後はモテたいってこれまたまいったね。


 そんなこったぁ大したことねえが、あなた。

 ほれ、そこにキジトラ猫がいる。


 にゃーと鳴いてごらんなさい。

 あら。無視される。


 猫っていうのは気まぐれでよくない。


 だからこそ可愛いって言うんですが、はて。あなたは犬が良いのですか猫がいいのですか。


 ああどっちもと。そりゃ贅沢だ。


 きっとあなたには大荷物がお似合いだ。ほら。どうぞよろしく。


 いや。楽だね。ちょっとお待ちなさいよ。これ。ありゃりゃ置き引きだよあんた。


 これが本当の泥棒猫。

 でも今日のお話は泥棒じゃないんだ。


 ちょっと見てくださいこの可愛いキジトラ猫を。

 ピンとはった尻尾ふりふり、毛並は上々。

 キラキラな瞳にイカした爪。


 そんなキジトラ。

 ポチの上になんか湯呑が乗っているわけです。


 湯呑の中にはホカホカのごはん。

 美琴さん。はい。ミコトさんと申します。


 おいおい。ミコトさん。

 それを迷わず食ったじゃありませんか。



~炊いたにゃ(TITA-NIYA) 猫の額で炊飯したら超恒星間移動~



『なんでこんな変なもの食べるのよぉ~?!』


 美琴さんの瞳の前には巨大なキジトラ猫の置物。

 泣いているのだか鳴いているのだかわからぬそ奴。

 猛然と美琴に食って掛かる。おっと危ないね。


「そんなもの、ご飯を見たら食べる! おなかがすいたら食べるのが基本だよっ」

「おばかさん! おばかさんだからお姉さん?!」


 ほれ。巨大キジトラ猫と美琴さん。

 宇宙空間の中央で激しく口論を開始したよ。


「ばかっていうやつがばかなんだ」

「なんだとばかー」


「ばかばかばか~」

「ばかぱかぱんぱかぱーん!」


「ぱんぱかぱ^-^」

「ぱんぱなんあなまんま~(*´ω`*)」


「フー!」

「フー!」


 虎もびっくりの巨大猫と威嚇しあう美琴さん。

 一歩も譲らぬ女子高生魂!



「だいたいなんで『おぶっぱん』を仏様に捧げる前に食べちゃうのさ」

「おなかすいていたから」


 ほら。変なこというよこの猫は。化け猫というのかね。

 なんか『千両』って書いている小判持っているし。変だねこやつ。


 猫はこうむむむっと難しい顔をしたけど。

 猫ってどうやったらそんな顔になるんだろうね。


『にゃーは仏だ』

「うそつき」


 ホトケっていったらアレだ。

 ほっとけってそりゃ不遜ってもんだね。


 普段おぶっぱん捧げているけど、普通にパンチパーマのおっさんだろう。間違ってもこんなトラみたいな猫じゃない。


そしてこんなデカい猫。あんた。可愛くないったらないよ。


 実際いたら怖いじゃないの。



「ごろごろごろ」

「結構可愛いかも」


 ありゃびっくりモフモフで。

 そしてふもっふも。暖かいじゃありませんか。


 しかもお日様のにおいがする。


というか美琴さん。

 あんた前言撤回早すぎぃじゃないですか。



 ここで先ほどから、目線に入るは謎の光。

 この不自然さに美琴さんは今更気づいた。


 現在の美琴。

 全裸(マラである。


 ミコト・オブ・ザ・マラ。


「えっ?! ちょっ?! ちょ?!」


 乙女の恥じらいを配慮してか。

 光線の配置無視で降り注ぐは謎の光。


「『ジシュキセー』とか、『光先輩』とか言われている仏の力にゃ」

「なにそれ?!」


 目眩がするけどそれ以前に宇宙空間。真っ暗闇。

 どこぞからやってくる『光先輩』のお蔭で、辛うじてトップとアンダー絶対防御。


 小首を傾げる美琴さん。


「私、変な薬物呑んだっけ」

「正常だ(きりっ!)」


「正常ならもっと嫌よ?!」



「ホトケのパワーで光の位置無視で降り注ぐ。

『ジシュキセー』なる聖光によって要所は守られるのだ」


 千両と書かれた小判を手にぃ。堂々と言い放つ。

 自称ホトケの巨大キジトラ。


 すでに脳みそが停止して苦笑いの美琴さん。


「えっと」

男子おののこならば。『あかさん』なる顔面出でて要所を守ってくれるぞ」


 猫の声は銀河○丈さんでございます。


 これぞまさにほとけの奇蹟。



「解説しよう!」(パパン!)


※ 故・富山敬さんのご冥福をお祈りします。


 概要を説明する、猫の置物。自称ホトケいう輩申しますに。

 所謂我ら日本民族がジャポニカ米を、独自の基準で美味しく食べるために行ってきた『炊く』という行為。


 その工夫は二〇一五年。ついに一つの到着点に達したのであります。


 スワップ細胞じゃないですよ。

 猫の額の上に乗せられる。超小型炊飯器の開発でございます。


「まって。なにそれ」

「黙って聞くのだ」


 その形状は緑色の可愛い湯呑の形。

 猫の背に乗せて利用する。

 おやかわいいね。


「なにそれ」


 一部のブッティストが。

 先祖霊に毎朝捧げるために用意する米を高速かつ美味しく作成する。

 これまた画期的な商品であったのですが。


 その価値を認めることができない愚かな人類。

 イマイチ販売台数を上げることができなかった。


 これは残念。

 歴史学者にとっての笑い話。


「どこの歴史学者」

「猫又のだが」


「というか猫って好んで穀物食べるのかしら」


 この炊飯器を猫の額もしくは猫の背に乗せ、美味しくご飯を炊き、日本の先祖霊に捧げ、『おぶっぱん』なる残り飯を食べる。


 この日本人が楽しみとする宗教的儀式。

 あまりの旨さにじいさんばあさん極楽絶頂。


 なに。これ単体では全く問題がない。

 そして勿論。猫は穀物を好んで食べない。


 しかしですよ。

 猫って生き物は舐めちゃいけない。

 愛でるものでございます。


 猫の旺盛な好奇心と食欲は人間が旨そうに食べる『おぶっぱん』を見逃しておりません。


 この瞬間、猫の好奇心が生み出す強力な妖力は人間の味覚中枢にアクセスし、彼ら猫族が本来感じることのできない甘味などを感知することを可能とするのです。


 人間族、特に日本人の持つジャポニカ米と猫への偏愛が生み出す変態エネルギー。


 それはお互いの神経に作用し、精神のみならず肉体をも瞬時に変容させ、解脱を果たして仏の力を得るのでございます。


 これが究極の食事。仏のみが食することを許される。

 仏ですら概念のみ食するという。


『おぶっぱん』!!


「それを僕より先にたべちゃうなんて~! 姉ちゃんの不細工~!」

「不細工っていうな~!」


「不細工不細工不細工~!」

「いったな~! ブサイク~!」


 『おぶっぱん』を仏より先に食べてしまった美琴。身体ごと宇宙に飛んだ。


 仏の力を一時得た美琴。死と生の連環、六道輪廻を飛び越えて、こともあろうに外宇宙にまで飛んでいったってんだから驚きだ。


「異世界じゃなくてよかったにゃ」

「異世界にいっちゃうの?!」


「天、人、修羅、畜生、餓鬼、地獄。六道を超える力を持つのに外宇宙に行けないわけがないにゃ」

「そうね!」


 なんか美味しそうに『おぶっぱん』を食べる二人。

 今や二人はわかりあった。げにおそろしきは食欲の成せる業。


 すっと息を吸って今から解説入ります。

……。

 ……。


『うまい。美味い。うまいぞおお』


~ 噛みしめるこの甘さ。このうまさは何だ?! ああ。水分! 程よく散った水分が俺の心を湧き立たせる。

 程よいアミロースとアミノペクチンが生み出すデンプン質! 程よい肥料によって抑えられたタンパク質による柔らかさ! その絶妙なリズム感が俺の舌の上で踊る! 踊る! 踊るぞ!

 あれは田植え歌の声! 娘たちが楽に合わせて踊っている! 俺も踊るぞ躍らせてくれぇえええ!

 この舞い踊るコメの産地は?! ……宮城県!!!!

 宮城は稲の穂が出てからの気温が高すぎず、昼と夜の気温差が大きく、おいしいお米を育てるのに最適な気候条件に恵まれている!

 その絶妙な四季折々の光景が私の脳内を突き抜け、春夏秋冬ひととせ幾とせ(いくとせ)の歴史を超えて数千年の味となって私の臓腑を満たしていく。

 ああ! 日本人に産まれた喜びが突き抜ける! あれは?! 宇宙!

 木星土星を超えていく~!!!

 ポリポリサクサク ポリポリサクサク

 食後のお茶漬けがうまいいいいいいい ~


(惑星間移動を果たした男の証言より)


……。

 ……。


「と、いうふうにとぶにゃ。今後気をつけるように」

「だいたいわかったわ」


 本当にわかっているのか。

 湯呑型の炊飯器を片手にご飯をよそい、納豆をすする二人。


「ずずず」

「じゅるじゅる」


 魯山人の教えに従い、しつこいほどかき混ぜた納豆の程よい臭みを堪能しつつ、アツアツのご飯をかきこむ一人と一匹。


「はふはふ」

「もぐ。もぶ」


 どんどんどん。無い胸を叩いて咀嚼して。

 って、いまコレを読んでいるお嬢様のことじゃないっすよ。

 いいてて。ものを投げないでくださいな。


 投げるのは下着だけで結構。

 あとを美味しくいただきますから。


 いてて?!


 ところで下着を知らない猫に下着を渡したらどうなりますかね。

 やっぱり穿くとかは考えないのでしょうな。


 被るのでしょかね。


 ありゃ。被らねーよと。


 それっていうと。ほう。嗅ぐと。

 あんたはなかなか有望じゃないですか。


 いや、舐めると。ええ。命の危険がありますな。



 ああ。もう。どこまでお話しましたっけ。

 そうでした。一時的にホトケの力を得た者は六道輪廻の輪すら飛び越え異星系にまで達するのですね。


 当然ながらこの能力は米を炊いて食する日本人のみに備わった特性らしく、多民族には再現性はない。


 何か? ああ。あんたは箸で食わないだろ。

 席の端で大人しくしていてくださいよ。

 鉄の箸なんて野暮なもん出さないの。


 あっちで火を吐いている旦那は勿論。

 同じ日本人でもパン食に完全に移行した人は残念なことです。


 こんなこと、いまだ朝昼晩お米を食べ、先祖に『オブッパン』を供える美琴には関係のないお話ですな。関係ない話をするんじゃないよ。

 ほら、よその話に浮気しないの。


 そういうわけでして、二〇三五年。


 一夜にして地球人類は。


 否、日本人一億一千万人は大宇宙時代に突入したのでございます。


『猫の額の上に搭載可能なほど小型軽量化した炊飯器を猫の上に乗せ、ジャポニカ米を炊いて食べると、そのあまりの米の旨さに超恒星間移動能力を得ることができる』


 いやはや結構なお話ですな。


 それでは今宵のお話はここまでとします。

 皆様、足元が暗くなっております。

 お気をつけてお帰りください。


 なんせあたしはおあし(お金)が欲しい。

アメリカ:やべえ。あいつら未来に行っているよ。

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